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24話
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テラside
タクシーの運転手に住所を見せると、運転手は不思議そうな顔をして私に「本当にここに行くのか?」と尋ねてきた。
しかし、私はヨナの事が心配で一刻も早くその場所に行きたい気持ちが募り、そんな運転手の反応を無視して早くその場所に行くよう急かした。
ついた場所はなんとも言えないひと気の少ない工場地帯。
タクシー運転手は心配そうな顔をしながら私を下ろし車を走らせて消えていった。
私はゆっくりと歩いていくと、目的地として地図上に示されている場所には1つの倉庫のような建物があった。
私は周りを見渡しながら恐る恐るその扉を開ける。
キーっと鈍い音が響き中を覗くと薄暗闇のなか…
壁にもたれてグッタリとしている血だらけのヨナが見えた。
私は走ってヨナの元へと駆け寄る。
T「ヨナ!!!!」
私の声を聞いて腫れたまぶたを開けて私を見るヨナは悲しそうに笑った。
Y「バカ…なんで来るのよ……」
私は涙を流しながらヨナに抱き締めた。
T「逃げよ…早く逃げよう!」
私がそう言ってヨナの腕を肩に回し立ち上がろうとした瞬間…
扉を蹴るようにして誰かが入ってきて、驚いた私は思わずヨナと一緒に尻餅をついた。
「逃すわけないだろ?」
その顔には見覚えがあり昨日、私を襲った男と同じ男だと言う事がすぐに分かった。
T「なんなの……私たちが何したって言うのよ…」
私がそう言うと男は私に近づき、目の前にしゃがんで私の顎に触ろうするので、私がそれを避けると強引にグッと顔を掴まれた。
「覇道組の若頭が夢中になるのが分かるよ……捕まえたらすぐに渡せって言われてたけど…すぐに渡すのは勿体ないな…」
男はそう言ってニヤッと不気味に笑うと私に顔を近づけてくる。
T「やめて!!!!」
私がそう叫びもがくと私の横にいたヨナがその男を突き飛ばし、血の混じった唾を吐いた。
Y「ムネオリに伝えて。テラが欲しいからってこんな手荒なマネしてもテラの心はもうアンタには戻らないってね…」
男はヨナの唾を荒っぽく拭き取ると私たちを睨みつけ立ち上がる。
「俺にしたらムネオリとこの女がどうなろうがどうでもいいんだよ。俺たちは覇道組の人間に金で雇われただけだからな?」
そう言って男はヨナを思いっきり蹴飛ばし、ヨナは床に倒れ込み後頭部を強打すると意識を失った。
T「ヨナ!!ヨナ!!」
私がヨナに駆け寄ろうとすると男に腕を掴まれ、そのまま床に押し倒された。
私は必死でもがくが男の力が強すぎて動く事が出来ない。
「あんまり俺を怒らせるなよ……な?ムネオリの女じゃなかったらこのまま食ってやったのに…まぁ金のためなら仕方ねぇか。」
男はそう言うと私の腕を引きずり上げるようにして立たせると、ヨナを置いて私を連れて行こうとする。
T「離して!!離してってば!!」
私は男に必死で抵抗しながら後ろにいるヨナを見つめる。
そんな私を強引に歩かせ連れて行かれそうになったその時…
突然扉が開き、男の足が止まった。
「誰の女に手で出してんだ…てめぇ………」
私はその声を聞いてハッとし視線をあげると…
そこには拳銃を構えたケイトが立っていた。
ケイトの後ろにはジニさんとハウさん…
さらにその後ろにはケイトの部下達がいた。
私を捕まえる男の手が微かに震え怯えているのが分かる。
K「死にたくなかったら今すぐその人を離せ……」
男の呼吸は早くなり、汗が滲み出てゴクリと唾を飲む音が私の所にまで聞こえてきた。
しかし、私が少しでも動こうとすると男は私が離れないように凄い力で掴み、私は動けない事をケイトに目で訴える。
K「何度も言わせるな。死にたくなかったらその人を………」
「うるせぇ!!こいつがいなきゃどうせ俺はムネオリに殺されるんだよ!!」
男はそう叫ぶと隠し持っていたナイフを私の首に突きつけ、その刃先が私の首元にグイッと刺さり痛みが走るとツーっと血が流れ落ちるのが分かった。
ケイトはそんな私の姿を見て眉間にシワを寄せると少し顔を歪め下唇を噛む。
K「傷モノにして覇道組の若頭に渡しても…お前は殺されるんじゃないのか?お前の生きる道はただ一つ…俺の言う通りその人を俺に引き渡す。ただそれだけだ。」
「うるせぇ!!黙れ!!」
K「5秒数える間に…その人を離すんだ……」
5…
男の手の震えが大きくなり、その度に私の首筋にナイフの刃先が食い込んで痛みが走る。
4…
3…
男の呼吸が途切れ途切れになり私は悟る。
この男はナイフを下ろさないのではなく、恐怖のあまりナイフを下ろす事が出来ないのだと…
2…
ケイトが落ち着いた声でそう言った瞬間……
パァンッ!!!!!!
耳を覆いたくなるような大きな音が聞こえて、私は思わずギュッと目を閉じた。
すると、痛いくらいに私を掴んでいた男の力が弱まり、目を開けると男は血だらけになりそのまま後ろに倒れた。
咄嗟に前を見ればみんなが構える拳銃の中…
煙が出ていたのはケイトの拳銃でも…
ジニさんの拳銃でもない…
ハウさんの拳銃からだった。
H「えへへ~ごめーん。私せっかちだから撃っちゃった。」
煙たつ拳銃にフーッと息をかけたハウさんは今さっき人を撃ったとは思えないほど陽気な声を出していて、私はそんなハウさんに恐怖心を覚えた。
つづく
タクシーの運転手に住所を見せると、運転手は不思議そうな顔をして私に「本当にここに行くのか?」と尋ねてきた。
しかし、私はヨナの事が心配で一刻も早くその場所に行きたい気持ちが募り、そんな運転手の反応を無視して早くその場所に行くよう急かした。
ついた場所はなんとも言えないひと気の少ない工場地帯。
タクシー運転手は心配そうな顔をしながら私を下ろし車を走らせて消えていった。
私はゆっくりと歩いていくと、目的地として地図上に示されている場所には1つの倉庫のような建物があった。
私は周りを見渡しながら恐る恐るその扉を開ける。
キーっと鈍い音が響き中を覗くと薄暗闇のなか…
壁にもたれてグッタリとしている血だらけのヨナが見えた。
私は走ってヨナの元へと駆け寄る。
T「ヨナ!!!!」
私の声を聞いて腫れたまぶたを開けて私を見るヨナは悲しそうに笑った。
Y「バカ…なんで来るのよ……」
私は涙を流しながらヨナに抱き締めた。
T「逃げよ…早く逃げよう!」
私がそう言ってヨナの腕を肩に回し立ち上がろうとした瞬間…
扉を蹴るようにして誰かが入ってきて、驚いた私は思わずヨナと一緒に尻餅をついた。
「逃すわけないだろ?」
その顔には見覚えがあり昨日、私を襲った男と同じ男だと言う事がすぐに分かった。
T「なんなの……私たちが何したって言うのよ…」
私がそう言うと男は私に近づき、目の前にしゃがんで私の顎に触ろうするので、私がそれを避けると強引にグッと顔を掴まれた。
「覇道組の若頭が夢中になるのが分かるよ……捕まえたらすぐに渡せって言われてたけど…すぐに渡すのは勿体ないな…」
男はそう言ってニヤッと不気味に笑うと私に顔を近づけてくる。
T「やめて!!!!」
私がそう叫びもがくと私の横にいたヨナがその男を突き飛ばし、血の混じった唾を吐いた。
Y「ムネオリに伝えて。テラが欲しいからってこんな手荒なマネしてもテラの心はもうアンタには戻らないってね…」
男はヨナの唾を荒っぽく拭き取ると私たちを睨みつけ立ち上がる。
「俺にしたらムネオリとこの女がどうなろうがどうでもいいんだよ。俺たちは覇道組の人間に金で雇われただけだからな?」
そう言って男はヨナを思いっきり蹴飛ばし、ヨナは床に倒れ込み後頭部を強打すると意識を失った。
T「ヨナ!!ヨナ!!」
私がヨナに駆け寄ろうとすると男に腕を掴まれ、そのまま床に押し倒された。
私は必死でもがくが男の力が強すぎて動く事が出来ない。
「あんまり俺を怒らせるなよ……な?ムネオリの女じゃなかったらこのまま食ってやったのに…まぁ金のためなら仕方ねぇか。」
男はそう言うと私の腕を引きずり上げるようにして立たせると、ヨナを置いて私を連れて行こうとする。
T「離して!!離してってば!!」
私は男に必死で抵抗しながら後ろにいるヨナを見つめる。
そんな私を強引に歩かせ連れて行かれそうになったその時…
突然扉が開き、男の足が止まった。
「誰の女に手で出してんだ…てめぇ………」
私はその声を聞いてハッとし視線をあげると…
そこには拳銃を構えたケイトが立っていた。
ケイトの後ろにはジニさんとハウさん…
さらにその後ろにはケイトの部下達がいた。
私を捕まえる男の手が微かに震え怯えているのが分かる。
K「死にたくなかったら今すぐその人を離せ……」
男の呼吸は早くなり、汗が滲み出てゴクリと唾を飲む音が私の所にまで聞こえてきた。
しかし、私が少しでも動こうとすると男は私が離れないように凄い力で掴み、私は動けない事をケイトに目で訴える。
K「何度も言わせるな。死にたくなかったらその人を………」
「うるせぇ!!こいつがいなきゃどうせ俺はムネオリに殺されるんだよ!!」
男はそう叫ぶと隠し持っていたナイフを私の首に突きつけ、その刃先が私の首元にグイッと刺さり痛みが走るとツーっと血が流れ落ちるのが分かった。
ケイトはそんな私の姿を見て眉間にシワを寄せると少し顔を歪め下唇を噛む。
K「傷モノにして覇道組の若頭に渡しても…お前は殺されるんじゃないのか?お前の生きる道はただ一つ…俺の言う通りその人を俺に引き渡す。ただそれだけだ。」
「うるせぇ!!黙れ!!」
K「5秒数える間に…その人を離すんだ……」
5…
男の手の震えが大きくなり、その度に私の首筋にナイフの刃先が食い込んで痛みが走る。
4…
3…
男の呼吸が途切れ途切れになり私は悟る。
この男はナイフを下ろさないのではなく、恐怖のあまりナイフを下ろす事が出来ないのだと…
2…
ケイトが落ち着いた声でそう言った瞬間……
パァンッ!!!!!!
耳を覆いたくなるような大きな音が聞こえて、私は思わずギュッと目を閉じた。
すると、痛いくらいに私を掴んでいた男の力が弱まり、目を開けると男は血だらけになりそのまま後ろに倒れた。
咄嗟に前を見ればみんなが構える拳銃の中…
煙が出ていたのはケイトの拳銃でも…
ジニさんの拳銃でもない…
ハウさんの拳銃からだった。
H「えへへ~ごめーん。私せっかちだから撃っちゃった。」
煙たつ拳銃にフーッと息をかけたハウさんは今さっき人を撃ったとは思えないほど陽気な声を出していて、私はそんなハウさんに恐怖心を覚えた。
つづく
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