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第四十六話
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キヒヤサイド
ずっと思い続けていたこの気持ちにケジメを付けるため俺は子供の頃からアノンが行きたがっていた店にアノンを連れて行った。
俺の本音を聞いたアノンの綺麗な瞳にはゆらゆらと涙が揺れていて、窓から差し込む太陽の光に照らされてキラキラと光っている。
俺はそんな綺麗な女性へと成長したアノンから目が離せないまま口を開いた。
K「俺はアノンの心の中に誰がいるのか本当はもう気づいてるし、それが俺じゃない事も分かってる。」
俺がそう言うとアノンの視線は泳ぎぎゅっと小さな手で拳を作り口を開く。
A「キヒヤあのね…」
しかし、俺はそんなアノンの言葉に被せながら言った。
そうでもしないと、この手で抱きしめてしまいそうだったから。
K「アノンが幸せなら俺はそれでいいんだよ…アノンの横にいるのが例え俺じゃなくてユサくんだとしても…アノンが幸せなら俺はそれを祝福できる。今まで沢山傷つけて…ごめん…」
本当はアノンに全て打ち明けてしまいたかった。
アノンを無視したのも、アノンから距離を置いたのも全て大好きなアノンを守るためだったんだよって。
アノンを守るためなら俺はラノンと付き合ってるフリもできたし、それは全てアノンをラノンから守るためだったんだ…なんて言えればどれだけ楽だっただろう。
だけど、アノンのこと好きだからこそ…忘れられない女だからこそ…俺がユサくんの名前を出した時のアノンの目を見て俺は気づいたんだ。
アノンの心の中にはユサくんがいると…
俺は少しだけまだ、俺のことを想ってくれてるのではないかと自惚れていたのに昨日のアノンは帰り際、嬉しそうな顔をしてキヒヤ失恋したの?なんて言うもんだから俺に未練なんて1ミリも何だと現実を叩きつられた気分だった。
だから、俺はもうアノンをキッパリ諦めてこれから先もずっと見守ると心に決めたんだ。
A「キヒヤ…私こそごめん…ありがとう…」
アノンはそう言うと何故か涙を流し、タイミングよくと言うべきなのか悪くと言うべきなのか、アノンが涙を流していることに気づいたスタッフがテーブルに来たことにより、俺たちの雰囲気はまた、昔のように戻った。
店を出た後、ラノンの病院に向かうとアノンは少し緊張した様子で病室の入り口の所で顔を強張らせ立ちすくんでいた。
K「アノン?やっぱ…やめとく?」
アノンとラノンの間には昔から幼なじみの俺でもわからない独特な雰囲気があった。
俺は子供のころからそれに触れてはいけないような気がして怖かった。
A「ううん…大丈夫。」
アノンはそう言うとトントンと軽くノックをして扉を開けた。
つづく
ずっと思い続けていたこの気持ちにケジメを付けるため俺は子供の頃からアノンが行きたがっていた店にアノンを連れて行った。
俺の本音を聞いたアノンの綺麗な瞳にはゆらゆらと涙が揺れていて、窓から差し込む太陽の光に照らされてキラキラと光っている。
俺はそんな綺麗な女性へと成長したアノンから目が離せないまま口を開いた。
K「俺はアノンの心の中に誰がいるのか本当はもう気づいてるし、それが俺じゃない事も分かってる。」
俺がそう言うとアノンの視線は泳ぎぎゅっと小さな手で拳を作り口を開く。
A「キヒヤあのね…」
しかし、俺はそんなアノンの言葉に被せながら言った。
そうでもしないと、この手で抱きしめてしまいそうだったから。
K「アノンが幸せなら俺はそれでいいんだよ…アノンの横にいるのが例え俺じゃなくてユサくんだとしても…アノンが幸せなら俺はそれを祝福できる。今まで沢山傷つけて…ごめん…」
本当はアノンに全て打ち明けてしまいたかった。
アノンを無視したのも、アノンから距離を置いたのも全て大好きなアノンを守るためだったんだよって。
アノンを守るためなら俺はラノンと付き合ってるフリもできたし、それは全てアノンをラノンから守るためだったんだ…なんて言えればどれだけ楽だっただろう。
だけど、アノンのこと好きだからこそ…忘れられない女だからこそ…俺がユサくんの名前を出した時のアノンの目を見て俺は気づいたんだ。
アノンの心の中にはユサくんがいると…
俺は少しだけまだ、俺のことを想ってくれてるのではないかと自惚れていたのに昨日のアノンは帰り際、嬉しそうな顔をしてキヒヤ失恋したの?なんて言うもんだから俺に未練なんて1ミリも何だと現実を叩きつられた気分だった。
だから、俺はもうアノンをキッパリ諦めてこれから先もずっと見守ると心に決めたんだ。
A「キヒヤ…私こそごめん…ありがとう…」
アノンはそう言うと何故か涙を流し、タイミングよくと言うべきなのか悪くと言うべきなのか、アノンが涙を流していることに気づいたスタッフがテーブルに来たことにより、俺たちの雰囲気はまた、昔のように戻った。
店を出た後、ラノンの病院に向かうとアノンは少し緊張した様子で病室の入り口の所で顔を強張らせ立ちすくんでいた。
K「アノン?やっぱ…やめとく?」
アノンとラノンの間には昔から幼なじみの俺でもわからない独特な雰囲気があった。
俺は子供のころからそれに触れてはいけないような気がして怖かった。
A「ううん…大丈夫。」
アノンはそう言うとトントンと軽くノックをして扉を開けた。
つづく
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