愛を知らないキミへ

樺純

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第四十一話

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キヒヤサイド

アノンは少し不安そうな目で俺を見つめる。

A「…待って…会いに行くとか…その前に…なんでラノンは入院したの?」

アノンは少し戸惑いながら俺にそう問いかけた。

K「それはね…」

それはアノンが姿を消してすぐのことだった。

俺はラノンと決別し、すぐにユサさんの店を訪れてアノンの元に行こうとした。

しかし、そこにはもうアノンはいなくてアノンの行方が分からなくなった。

心配で不安だった時、ラノンが俺の前にまた現れた。

俺はてっきりアノンもいなくなりラノンは俺に執着する事はなくなるだろう…そう思っていたのに何故か今までよりも激しく俺に付き纏うようになった。

私だって幼馴染みでしょ…

なんでアノンだけ…

私の事も心配してよ…

まるでなにかに呪われているのかと思うほどラノンは俺に…いや、俺を通したアノンに執着していた。

俺はそんなラノンに付き纏われるのがストレスでうんざりしていた。

でも、強くラノンを跳ね除けることが出来なかったのはアノンと同じ顔で俺を見つめて縋ってくるから。

いつかしかラノンはいなくなった当時のアノンと同じ髪型にし、似たような服装をして、アノンのようなナチュラルなメイクをするようになった。

俺は幼い頃からアノンとラノンを見ても双子なのに全く似てない…そう思っていたのにラノンはいつしか、アノンと瓜二つになっていた。

俺はそんなラノンにアノンを重ねてみるようになり…

ラノンが泣くたびにアノンを泣かせてしまってるようで…

ラノンが取り乱すたびにアノンが取り乱しているようで…

俺の胸は痛み軋んで病んでいった。

しかし、そんな時に支えてくれたのは不思議なことに俺がずっと羨んで妬んでいたミネトとユサさんだった。

アノンがいつ戻ってもすぐに分かるように、俺はユサさんの店で働き続けていたが、ミネトとユサさんは変わり果てていく俺の姿を見て、アノンを傷つけ続けたはずの俺のことを心から心配してくれた。

このままじゃダメだ…そう思った俺はラノンを呼び出した。

K「ラノン…なんでラノンが俺にここまで執着するか俺には分からないけど…頼む。もう、こんな事やめよう?」

俺がそうラノンに言ってもラノンの耳には全く届かない。

ラノンは何かをブツブツと言いながら俺と視線すら合わなくなっていた。

K「なぁ…ラノン…」

L「私は1人…誰も私を愛してくれない…みんなアノンばっかり…いつまで私を苦しめるの…いい加減…解放してよ…アノン…」

ラノンはそう言って大粒の涙をポロポロとこぼし始め、俺はもう…それ以上ラノンになにも言えなかった。

それからもラノンは変わる事なく、むしろ執着心が酷くなるばかりでユサさんの店で働いている俺を店の前から監視するようになった。

さすがに店に迷惑をかけると思い、ユサさんにやめると伝えたがユサさんは気にする事ないと言って俺を雇い続けてくれた。

そんなユサさんを見て俺は思ったんだ。

アノンはこの人の目には見えにくい優しさと温かい心に惹かれたんだろなって。

それは俺には全く持ち合わせてない部分で俺自身が負けを認めた瞬間だった。

つづく
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