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第三十二話
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アノンサイド
私は取り乱しそうになる自分を抑えながら自分のマンションにもどった。
A「ただいま……」
「お帰り…はやかったね?仕事は?」
A「取り引き先の所に行ってそのまま家に帰ってきた。あ…シアが洗い物してくれたの?ありがとう。」
S「俺にはこれくらいしか出来ないから。」
そう言ってシアは杖をついて足を引きづりながら椅子に座った。
A「そんな事ないよ?ありがとう…たすかった。」
S「アノン…なんかあった?」
A「え?」
S「いや…目見てくれないから…」
A「何もないよ?シアは?リハビリどうだった?」
S「うん…順調だよ。もうすぐで杖なしで歩いて良いって先生に言われたし。」
A「無理しちゃダメだよ?」
S「ありがとう…アノン…本当にありがとう。」
A「やめてよ…急にどうしたの?」
S「だってさ…アノンが俺のそばにいてくれなかったからきっと俺は今頃…」
A「その話はもうやめよ…」
それは私がユサの元を出た5年前にまで遡る。
行き場の失くした私は大きなスーツケースを持って街を彷徨っていた。
ミネトとサラナから何度もスマホに連絡が来ていたのに私はそれを無視して1人、ユサを思いながら涙を流していた。
ネットカフェやビジネスホテルを転々とし、ちゃんとした職について大人な女になりユサを見返してやろうと思った。
アノンがいなきゃダメだってユサに言わせたかったから。
私がユサの元を離れて1ヶ月を過ぎたころだろうか?
偶然、街でシアと会ってしまった。
シアに恐怖を覚えていた私は咄嗟に逃げようとしたがシアに腕を掴まれ私は立ち止まった。
S「どうして逃げるの?酷いじゃん。」
A「お久しぶりです…」
気まずい空気のなか私がそう言うとシアはまた、私の顔をじっと見つめる。
S「本当に似てる…ラノンとは比べ物にならないくらい…ルルと似てるね…」
そう言いながら私の頬をシアが撫でた瞬間、私は拒絶反応が出てその手を振り払うとシアが眉間に皺を寄せ言った。
S「キヒヤもラノンもうちの店やめてね?ちょう人に困ってるんだ。噂ではアノン…もうユサの所にいないんだろ?今アノンはどこにいるのか…探したよ…アノンのこと。俺の所で働かない?」
そう話している間もシアは私が逃げ出さないようにギュッと腕を掴んだまま話している。
A「働きません。離して!!」
S「そんな口の利き方していいの?アノンの対応によってはユサの大切なあの店……潰してもいいんだよ?」
A「え……」
シアさんの口からユサの名前が出た途端に私は戸惑い頭の中がパニックになる。
S「今のうちの会社ではそれくらい簡単だって言ってんの。ユサが悲しんで苦労するのが嫌なら俺の言うこと…聞けるよね?」
A「それは脅迫…ですよね?私が警察に行けばどうなるか分かってて言ってるんですか?」
S「どうもならないよ?俺の父親は警察幹部に知り合いがいるからね。ユサの店がただぼろぼろになるだけ…」
シアはそう言って笑い、私はシアの言われるがままシアのお父様が経営する洋菓子会社に就職することになり、シアの婚約者として紹介された。
私はシアの父親の会社を知れば知るほど、シアの事を拒むと本当にユサのお店を無茶苦茶に出来てしまうほど、シアの会社は大きな権力があることを知ってしまったのだ。
会社の人たちは私の顔を見てきっと私がルルさんと瓜二つなことに驚いたと思う。
みんな私の顔をじっと見つめて戸惑っていたから。
S「今日からここがアノンの家だよ。」
そう言ってシアが私を連れてきたマンションは高級なタワーマンションで家財道具はもちろん、服や靴まで用意されていた。
S「アノンにピッタリな洋服…用意してもらったからね。」
クローゼットを開けたシアは自慢気な顔をしてそう言ったが、そこに並んだ服は私好みの服ではなかった。
A「私をルルさんの代わりにするつもり?」
そう言うとシアはクスクスっと声を出して笑った。
S「本当に言う事まで似てるね?ルルにもこうやって服をプレゼントしてあげたんだよ。俺の婚約者になった時にね。そしたらルルも私を着せ替え人形にするつもり?って言ってたよ。」
シアは何がそんなにおかしいのか私には分からない。
しかし、シアは涙を浮かべるほどゲラゲラとお腹を抱えて笑っていた。
A「ユサに奪われたみたいな言い方をしてた割に…ルルさんと愛し合ってなかったんですね。」
S「愛してたよ!!心の底からルルを愛してた!!なのにルルは…俺のことなんて男として見てなかった…ルルはユサしか見てなかったんだよ。」
シアはそう言うと私の腕を引っ張り、ベッドに押し倒した。
S「だからアノンはユサじゃなくて俺をみてよ…お願い…俺のことだけを愛してくれよ!!」
シアはそう言って私の唇を塞ごうとしたが、私は顔を背けて避けた。
A「私を自分の思い通りにしたいなら…海外でパティシエの勉強をさせて。」
私がそう言うとシアはゆっくりと私の手首を解放した。
私は起き上がりシアの目を見た。
A「私をパティシエの勉強をさせてくれて、今後シアがユサとはもう2度と関わらないって言うなら…あなたのモノになってもいいよ。結婚してあげる。でも、私がパティシエとして一人前になるまでは…私に指一本触れないで。どう?この契約。」
S「俺と契約交渉できる立場だとでも思ってんの?」
A「なら私は今すぐユサの元に戻る。あなたに店をボロボロにされて悲しんで落ちこんで泣いているユサの所に行って、ユサを抱きしめてキスをして体と心でユサを慰めるから。あなたの好きにすればいい。」
そう言って私がベッドから起き上がるとシアは今にも泣き出しそうな顔をして私の手首を掴んだ。
S「ルル行かないで…お願い…分かったから…ルルの言う通りにするから…」
そう泣きながらルルさんではない私に縋り付くシアはきっと精神的に病に侵されてしまい、ルルさんの面影に取り憑かれてしまっているのだろう。
私はそんなシアをうまく利用し、海外に留学しパティシエの勉強をした。
つづく
私は取り乱しそうになる自分を抑えながら自分のマンションにもどった。
A「ただいま……」
「お帰り…はやかったね?仕事は?」
A「取り引き先の所に行ってそのまま家に帰ってきた。あ…シアが洗い物してくれたの?ありがとう。」
S「俺にはこれくらいしか出来ないから。」
そう言ってシアは杖をついて足を引きづりながら椅子に座った。
A「そんな事ないよ?ありがとう…たすかった。」
S「アノン…なんかあった?」
A「え?」
S「いや…目見てくれないから…」
A「何もないよ?シアは?リハビリどうだった?」
S「うん…順調だよ。もうすぐで杖なしで歩いて良いって先生に言われたし。」
A「無理しちゃダメだよ?」
S「ありがとう…アノン…本当にありがとう。」
A「やめてよ…急にどうしたの?」
S「だってさ…アノンが俺のそばにいてくれなかったからきっと俺は今頃…」
A「その話はもうやめよ…」
それは私がユサの元を出た5年前にまで遡る。
行き場の失くした私は大きなスーツケースを持って街を彷徨っていた。
ミネトとサラナから何度もスマホに連絡が来ていたのに私はそれを無視して1人、ユサを思いながら涙を流していた。
ネットカフェやビジネスホテルを転々とし、ちゃんとした職について大人な女になりユサを見返してやろうと思った。
アノンがいなきゃダメだってユサに言わせたかったから。
私がユサの元を離れて1ヶ月を過ぎたころだろうか?
偶然、街でシアと会ってしまった。
シアに恐怖を覚えていた私は咄嗟に逃げようとしたがシアに腕を掴まれ私は立ち止まった。
S「どうして逃げるの?酷いじゃん。」
A「お久しぶりです…」
気まずい空気のなか私がそう言うとシアはまた、私の顔をじっと見つめる。
S「本当に似てる…ラノンとは比べ物にならないくらい…ルルと似てるね…」
そう言いながら私の頬をシアが撫でた瞬間、私は拒絶反応が出てその手を振り払うとシアが眉間に皺を寄せ言った。
S「キヒヤもラノンもうちの店やめてね?ちょう人に困ってるんだ。噂ではアノン…もうユサの所にいないんだろ?今アノンはどこにいるのか…探したよ…アノンのこと。俺の所で働かない?」
そう話している間もシアは私が逃げ出さないようにギュッと腕を掴んだまま話している。
A「働きません。離して!!」
S「そんな口の利き方していいの?アノンの対応によってはユサの大切なあの店……潰してもいいんだよ?」
A「え……」
シアさんの口からユサの名前が出た途端に私は戸惑い頭の中がパニックになる。
S「今のうちの会社ではそれくらい簡単だって言ってんの。ユサが悲しんで苦労するのが嫌なら俺の言うこと…聞けるよね?」
A「それは脅迫…ですよね?私が警察に行けばどうなるか分かってて言ってるんですか?」
S「どうもならないよ?俺の父親は警察幹部に知り合いがいるからね。ユサの店がただぼろぼろになるだけ…」
シアはそう言って笑い、私はシアの言われるがままシアのお父様が経営する洋菓子会社に就職することになり、シアの婚約者として紹介された。
私はシアの父親の会社を知れば知るほど、シアの事を拒むと本当にユサのお店を無茶苦茶に出来てしまうほど、シアの会社は大きな権力があることを知ってしまったのだ。
会社の人たちは私の顔を見てきっと私がルルさんと瓜二つなことに驚いたと思う。
みんな私の顔をじっと見つめて戸惑っていたから。
S「今日からここがアノンの家だよ。」
そう言ってシアが私を連れてきたマンションは高級なタワーマンションで家財道具はもちろん、服や靴まで用意されていた。
S「アノンにピッタリな洋服…用意してもらったからね。」
クローゼットを開けたシアは自慢気な顔をしてそう言ったが、そこに並んだ服は私好みの服ではなかった。
A「私をルルさんの代わりにするつもり?」
そう言うとシアはクスクスっと声を出して笑った。
S「本当に言う事まで似てるね?ルルにもこうやって服をプレゼントしてあげたんだよ。俺の婚約者になった時にね。そしたらルルも私を着せ替え人形にするつもり?って言ってたよ。」
シアは何がそんなにおかしいのか私には分からない。
しかし、シアは涙を浮かべるほどゲラゲラとお腹を抱えて笑っていた。
A「ユサに奪われたみたいな言い方をしてた割に…ルルさんと愛し合ってなかったんですね。」
S「愛してたよ!!心の底からルルを愛してた!!なのにルルは…俺のことなんて男として見てなかった…ルルはユサしか見てなかったんだよ。」
シアはそう言うと私の腕を引っ張り、ベッドに押し倒した。
S「だからアノンはユサじゃなくて俺をみてよ…お願い…俺のことだけを愛してくれよ!!」
シアはそう言って私の唇を塞ごうとしたが、私は顔を背けて避けた。
A「私を自分の思い通りにしたいなら…海外でパティシエの勉強をさせて。」
私がそう言うとシアはゆっくりと私の手首を解放した。
私は起き上がりシアの目を見た。
A「私をパティシエの勉強をさせてくれて、今後シアがユサとはもう2度と関わらないって言うなら…あなたのモノになってもいいよ。結婚してあげる。でも、私がパティシエとして一人前になるまでは…私に指一本触れないで。どう?この契約。」
S「俺と契約交渉できる立場だとでも思ってんの?」
A「なら私は今すぐユサの元に戻る。あなたに店をボロボロにされて悲しんで落ちこんで泣いているユサの所に行って、ユサを抱きしめてキスをして体と心でユサを慰めるから。あなたの好きにすればいい。」
そう言って私がベッドから起き上がるとシアは今にも泣き出しそうな顔をして私の手首を掴んだ。
S「ルル行かないで…お願い…分かったから…ルルの言う通りにするから…」
そう泣きながらルルさんではない私に縋り付くシアはきっと精神的に病に侵されてしまい、ルルさんの面影に取り憑かれてしまっているのだろう。
私はそんなシアをうまく利用し、海外に留学しパティシエの勉強をした。
つづく
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