愛を知らないキミへ

樺純

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第二十五話

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キヒヤサイド

次の日

俺はまた高校をサボり朝から夕方までベッドで寝転がっていた。

何気なくスマホをみると30分ほど前にラノンからメールが入っていた。

L「もう私生きてる意味ないね…今までありがとう…さようなら…」

そう入っていた。

え…これって…嘘だよな?

俺は慌てて飛び起き半信半疑のままラノンの家へと向った。

インターホンを押すと青ざめた顔のおばさんが出てきた。

K「おばさん…?」

「ラノンが…」

放心状態のおばさんを置いて中に入るとラノンが自分の部屋で手首を切って倒れていた。

K「ラノン何やってんだよ!」

俺がラノンを抱きかかえながらそう言うと血色のない唇で言った。

L「全部アノンのせいだよ…」

そう言ってラノンはゆっくりと目を閉じた。

俺は手首をタオルで押さえラノンはそのまま病院へと運ばれた。

診察の結果

傷は浅く元々、貧血気味だったラノンは出血により貧血を起こしただけだった。

そして、ラノンは力ない目で俺を見て言った。

L「ねぇ…キヒヤ…私と付き合わってくれないと…次は本当にシんじゃうよ… アノンのせいで…」

俺はその目を見て身体が震え…無意識に返事をしてしまっていた。

K「分かった…」

それからラノンは事あるごとにその言葉を使って俺を思い通りに操るようになった。

部活も辞めされられ…バイト先もラノンが選んだ同じバイト先で働くようになった。

自分の気にくわないことがあると鋭い目をして言葉には出さずとも俺にそう目で訴えかけてきた。

そして…そんな関係が続いて数ヶ月たった時…

ラノンは不満そうな顔をして俺に言った。

L「キヒヤはさ?男と女が付き合うってどういうことか知ってるの?」

俺はその言葉の意味をすぐに理解できた。

俺たちは付き合っているとは言え、俺は指一本ラノンに触れなかったから。

いつも触れてくるのはラノンからで、俺はそれを拒むことはせずただ本人のしたいようにさせていたが、ラノンはいつも女としてのプライドが許さなかったのか、少し俺の身体に触れるだけでそれ以上のことはしてこなかった。

しかし…もう…俺の心は限界だった…

K「好き同士の男女なら分かるけど…俺たちは違うだろ?」

そう言うと眉間にシワを寄せてラノンは怒りに震える。

L「何が言いたいの?」

K「もう…限界だよ…ごめん…」

ラノンは無言のまま俺の部屋から出て行った。

そして、バイト先のシアさんにも辞めると伝えた。

K「すいません。突然辞めるなんて言って…」

S「いいけど急にどうしたの?」

K「実はラノンと付き合ってたんですがもう別れたんです…なので…」

S「そうだったんだ…ラノンと付き合ってたんだね。」

何故かシアさんさ俺がラノンと付き合っていたという事を伝えると顔色が変わった。

K「はい…」

S「そりゃ気まずいもんな?でもさ、送別会も兼ねてみんなで行く遊園地には来いよ?みんな楽しみにしてるんだからな?」

K「はい…」

そうして行った遊園地。

見覚えある後ろ姿を見つけた俺は動けなかった。

しかし、ミネトと付き合っているはずのアノンはユサという経営者の男と親しそうにしていて、ミネトは他の女と仲良く話している。

そんな光景を俺は不思議に思いながらゆっくり近づいていく。

そして俺はなんとか余裕なフリをして声をかけた。

K「久しぶりだな。」

その声に反応して振り返るアノンは少し大人っぽくなっていてさらに俺の心臓を早めた。

アノンに話しかけて俺の顔をみてもアノンは一切、顔色を返すに平然としていた。

アノンと話しているとシアさんが後ろからやってきて、人に興味を持たないシアさんが珍しくアノンに興味を示す。

シアさんはラノンに惚れてるのかな…?なんて内心バイト中に思ったりした事もあったが、ラノンと同じ顔のアノンに対する興味の持ち方をみたら少しの違和感を感じた。

すると、ユサさんが現れてシアさんの顔が一瞬、引き攣った。

ユサさんは表情を変える事なくアノンの手を引いてその場から消えて行った。

そして、サラナもそのあとすぐにやってきたミネトに連れて行かれ、俺はシアさんに問いかけた。

K「あのユサさんって人と知り合いなんですか?」

S「あぁ…深~い深~い知り合い。」

K「どういう?」

S「俺の婚約者を殺した人殺し…だよ?」

そう言ったシアさんの顔は俺の背筋が凍るほど狂気に満ちていた。

K「え……?」

S「なーんてね!ほら、みんなも待ってるからあっちに戻るよ!」

そう言ってシアさんは笑いながらみんなの所へと戻ったが正直俺は全然笑えなかった。

他の仲間たちはどこに行こうかとパンフレットを見ながら相談していると、ラノンが俺の横に近づいてきた。

L「私と別れてすぐ…アノンと仲良くなるんだね…」

K「そんなんじゃねぇから…たまたまいたから話しただけだし…」

L「私とアノンってさ…見分けがつかないぐらい似てるって言われてたでしょ…?なのになんでアノンなの?私とアノンの違いって…何?」

K「やめろよ…ここでそんな話…」

L「アノンが消えればいいんだ。」

K「は?」
L「アノンが消えれば…みんなは私を愛してくれるでしょ?」
K「お前……」

H「ほら行くよ~!!」

ヒサト先輩がそう言って俺たちを呼ぶが、さっきまでそばにいたはずのシアさんはその場になくなっていた。

L「私、トイレ行きたいので先行っててください。」

ラノンはそう言ってフラフラと歩き出し…少し離れてからヒサト先輩が俺に言った。

H「さっきラノンが言ってたよ…アノンが憎いって…あの姉妹…大丈夫なの?」 

ヒサト先輩のその言葉を聞いて俺は嫌な予感がした。

K「俺…ちょっとラノンのとこ行ってきます。」

慌ててラノンの後を追いかけると、ラノンが誰かに呼び止められているのに気づき、近づくとラノンの声が聞こえてきた。

L「アノンいなくなったんですか?」

え…アノンがいなくなった…?

俺は動揺を隠せず、胸騒ぎがする。

Y「すいません…間違えました。」

振り返るとそこにいたのはユサさんだった。

K「アノンいなくなったんですか!?」

Y「俺たちで探すんで…」

L「そのままいなくなったらいいのに…」

そのラノンの顔をみて俺は思った…こいつは本気でそう思ってるんだろうな…って。

Y「は?あんたの妹だろ?あいつ…」

L「だからなんだっていうんですか?ただ、同じ親から生まれただけなのに。」

Y「あいつが家を出たがってた理由がよく分かったよ。」

K「俺も探します!!」

Y「いいから。あんたはこの女といろよ。」

K「いや、俺も探し…」

Y「お前のせいでアノンがどれだけ苦しんでると思ってんだよ!!!?いい加減…アノンのこと解放してやれよ…」

ユサさんはその言葉を残して走り去って行き、俺はユサさんの目を見て気付いた。

ユサさんはアノンを女としてみていると。

L「解放してほしいのは私の方だよ…ねぇ…なんで?なんでみんなアノンのことばっかりなの!?ねぇ!?なんで、みんなそんなにアノンじゃなきゃダメなの!?ほんと…心の底から消えて欲しい…」

ラノンはそう言い残し俺の前から走り去って行った。

俺はラノンの後を追うこともせずヒサト先輩達の元へ戻った。

K「すいません…アノンがいなくなったみたいで…俺一緒に探してきます!」

H「え!?俺も一緒に探すよ!!」

K「すいません…」

H「ラノンは…?」

K「たぶんトイレの方だと思うんですが…」

H「わかった…俺がラノンを探しに行くからお前はアノンちゃんを探しな…」

K「すいません…」

そして、俺はアノンを探しに走り回った。


つづく
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