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第十一話
しおりを挟む灼熱のような夏が過ぎ、夜風が少し涼しくなり始めた頃、私の誕生日がすぐそこに迫っていた。
私はユサと出逢ってからこの数年間、ユサと2人で過ごしていてもなんとも思わなかったのに、ユサに抱きしめられたあの日からユサと2人っきりになると、変に意識してしまい落ち着きのない日々が続いていた。
ユサはそんか私の気持ちの変化には気づく事はなく、ソワソワとする私を不思議そうな目でいつも見ていた。
Y「ここ。座れば?」
ミネトがいれば今までと変わりなくユサといられるのに2人になると何を話せばいいのか分からない。
私はユサに言われるがままぎこちない笑顔を見せて少し距離を空けてユサの横に座った。
するとユサは突然、私と距離を詰め至近距離で私の顔色を伺う。
Y「最近どした?変だぞ?またキヒヤに何かされたか?」
ユサは心配そうに私に問いかけるが、今の私はキヒヤのことよりもユサの事で頭がいっぱいになり始めていた。
A「キヒヤの事なんてどうでもいい…」
いや、きっとこれはまだ嘘。
キヒヤの事を完全に忘れたかといえばそうではない。
でも私があえてそう言ったのはユサに私の気持ちの変化に気づいてほしかったから。
私は勇気を出して隣に座るユサの太ももにスッと手を伸ばしそっと撫でると、ユサは顔色ひとつ変える事なく余裕ある表情で私の手の行方を見て言った。
Y「まだ未成年のくせに俺を誘ってるのか?」
また子供扱いのような言い方をするユサにイラっとする私は手を自分の元に戻し視線を逸らす。
A「あと数分で成人するし。」
時計の針は23時50分を指していて、私はあと10分で成人になる。
そう、ユサが心の整理をして待っていろと言った成人に私はついになる。
私がじっとユサを見つめるとユサも無言のまま私を見つめる。
A「成人になったらユサが抱いてくれるんでしょ?」
私がそう問いかけるとユサはクスッと笑う。
Y「そんなに俺に抱いてほしいのか?キヒヤにじゃなくて?あんなにキヒヤのこと…」
ユサの口からキヒヤの名前が出るたびに嫌な気持ちになる私は、ユサの口からキヒヤの名前なんて聞きたくなくてユサの言葉を遮るようにユサの唇を塞いだ。
心臓が張り裂けてしまいそうなほどドキドキとして緊張で手が微かに震える。
ユサは私がキスをしても全く反応してくれなくて、やっぱりあの時に言った私を抱くという言葉は冗談だったんだと気づいた私はユサから離れようとした。
すると突然、私の背中にユサの手がまわりグッと引き寄せられると、ユサの唇は私の唇と深く重なり合い、ユサの体温が私の舌から伝わってくる。
頭が真っ白になるような心地よさを初めて感じギュッとユサの服を掴むと、ユサは優しく丁寧に舌を絡めチュッと音を立てて息を乱しながら離れた。
私たちは肩で息をしながらお互いを見つめ合い、ユサはそっと私の頬を撫でると言った。
Y「今、成人になったから抱いてやる。」
ユサのその言葉を聞いて時計を見るとちょうど0時を過ぎ私は成人の誕生日を迎えていた。
つづく
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