愛を知らないキミへ

樺純

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第十話

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私はシャワーを浴び終えると、着替えて店へと降りた。

A「ごめん。」

私がそう言うとユサはチラッと私の顔を見て言った。

Y「ミネトから聞いた。男の事でオレンジジュースを人にかけるって…10代の女がすることかよ。」

A「さぁ?あいつの頭がおかしいんじゃない?」

Y「オレンジジュースかけられるほど双子の姉に嫌われて恨まれるってことだろ?お前…気をつけろよ。」

ユサは少し飽きれた顔をしながらカウンターに座ってミネトの淹れたコーヒーを飲んでいる。

M「ってかさ?言いたくなかったんだけど…こんな事あったからやっぱり話しておいたほうがいいと思う…」

言いたい事ははっきりと言うタイプのミネトが珍しく口籠りながらそう話し出し、私とユサは思わず顔を見合わせる。

A「なに…?」

Y「アノンに関係することか?」

私とユサがそう問いかけるとミネトはふーっと息を吐いて言った。

M「ラノンってさ…たぶん…俺のこと好きだったんだと思うんだよね…」

ミネトは私とユサの顔を交互に見つめながら少しおどおどとしそう告白をした。

それを聞いた私とユサは驚き思わず固まる。

AY「はぁ!!!?」

A「どういうこと!!?ラノンにはキヒヤがいるじゃん。」

私が前のめりでそう聞くとミネトは拭いていたグラスを置いてカウンターから出て来た。

M「いや、昔の話だよ?小学生の頃、塾に通ってて…ラノンも俺と同じに塾に通ってたから俺…アノンと出会う前から実はラノンと知り合いだったんだよ。」

確かにラノンは小学校4年の時から親に塾に通わされていた。

私とは違い勉強でも期待されていたラノンだけが塾に通わせてもらい、私はそんなラノンが羨ましかったのを覚えている。

A「うそ…全然知らなかった…」

M「俺がアノンにはあえて言わなかったからね。それから中学入学する直前に突然、ラノンが家に来てラノンに告白されたんだよ…」

ミネトは過去のことだからと淡々と話しているが、そんな事があっただなんて全く知らなかった私は驚かなでしかなかった。

A「はぁ!?初耳なんだけど!?」

M「だって初めて言ったもん。でも中3の春にはラノンとキヒヤが付き合ってるって噂になってマジか!?って思ったら隣で誰かさんが今にも死にそうな顔してるからユサくんのお店に連れてきたってわけ。」

ミネトはそう言って自慢気に私に笑顔をみせるが、小学生の頃にミネトのことが好きだったラノンが今ではキヒヤと付き合ってるはずなのに、わざわざ店に私とキヒヤの事をチクリに来る程ミネトに執着していて少し怖かった。

Y「ミネトのせいで俺は今までコイツの面倒を見させられてるんだな。」

ユサはラノンとミネト、そしてキヒヤの関係を考えている私の横でコーヒーを飲みながら私の頭を人差し指で小突いた。

M「またまたそんな言い方して~ユサくんも素直じゃないんだから~」

A「ラノン…もしかして…ミネトのことまだ好きなのかも…」

私がそう言うとミネトは目をまん丸にして驚いている。

M「はぁ!?それはないだろ!?キヒヤと付き合ってるのに?」

A「それはそうだけど…私が高校辞める直前…私とミネトのことが学校中で付き合ってるじゃないかって噂になったの覚えてる?」

M「あぁ~あったね?その噂聞いて2人でありえないわ~って爆笑したよな?」

ユサはそんな事あっただなんて俺は聞いてないと1人でブツブツと言って拗ねていたが、私はそんなユサを無視してミネトに話を続けた。

A「その日にラノンに聞かれたのよ。ミネトと付き合ってるのかって…私はずっと口を利かなかったラノンが珍しく話してきたと思ったらそんなことだったから、腹が立ってその質問に答えなかったんだけど…そしたら次の日…学校で誹謗中傷の張り紙や落書きをされて…」

Y「もしかしてラノンがやったって分かっててなんも言わなかったのか?」

ユサは私の話を聞いて怒ったような顔をして私にそう言った。

A「うん…言っても仕方ないし。だから…ラノンは私とミネトが仲良くしてるのが気に入らないんだよ…自分の初恋がミネトだから。もしかしたら本当に私とミネトが付き合ってるって思ってさっきも、ミネトにわざと私とキヒヤがキスした事を言いに来たのかも…」

ラノンならありえる。

小さい頃から私が欲しいといったモノを全て取り上げ、私が好きなモノや私が好きな事も全て自分が先に始めたかのような顔をして、私が真似をしたかのように装うそんな子供だったから。

きっと、ラノンは自分の初恋であるミネトと私が仲良くする事が気に入らなくて、おまけに昨日はキヒヤまで私の元に来てキスしてる所をラノンが知ってしまったから、我慢の限界で私の所に嫌がらせをしに来だんだ。私はそう不思議と納得出来た。

Y「まぁ、それが本当だったら…なかなかヤバイやつだな?」

ユサにはラノンの事を殆ど話した事がなかったのでラノンの事を知ったユサは少し引いていた。

M「…アノンには身内のことこんな風に言って申し訳ないけど俺ムリなんだ…塾の帰りも付き纏われてさ…目が怖いもん。アノンと双子なのに似てない。」

別々に暮らすようになった今では確かにもう、似ていないかもしれない。

しかし、子供の頃や少なくともミネトと出会った時は親戚でも間違うほどよく似ていたのに、ラノンに嫌な思いをさせられたにも関わらず私に優しくしてくれてミネトに私は感謝しかなかった。

A「ミネトはさ?なんでラノンに嫌な思いさせられたのに私に優しくしてくれたの?」

私がそうミネトに問いかけると何故かユサの方が落ち着きのない顔をしてミネトの顔を見ていた。

M「実はさ…アノンは俺の大切な人にそっくりだから…だから放っておけなかった。寂しそうなアノンを救ってあげたかったんだ。」

そう言ったミネトの目には涙が微かに浮かんでいて私はもうそれ以上、ミネトに詳しく聞く事ができなかった。

つづく
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