【BL】記憶のカケラ

樺純

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最終話

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タカラside

それからしばらく経った頃には、初めて俺を抱いて泣いていたキイチはもう俺の目の前にはいなかった。

仕事から帰ってきては毎日毎日せっせと営み、しばしの眠りにつくとまた明け方にはせっせと営み気持ち良さそうな声を俺の上で響かせていた。

俺は眠くて半分寝ちゃうことも多いけキイチが盛り上がってきたらそりゃ、俺の身体も必然的に気持ちよくなるわけで…気づけば喘ぎすぎてハスキーヴォイスに磨きがかかった。

そしていつもの幼なじみ7人で集まった時は俺とキイチの初体験の話で持ちきりで、俺が一から百まで説明し現状のキイチとの事情まで説明すると、キイチは俺を溺愛するミズキにボコボコに殴られていた。

しかし、なんだかんだでみんな嬉しそうに俺たちの事を祝福してくれて俺とキイチも本当に幸せだ。

それからさらに数日後

突然、見慣れぬ番号から電話がかかってきて出てみるとその相手はイオリからだった。

父ちゃんから俺の番号を聞いて連絡してきたみたいで、泣きながらごめんと何度も謝罪された。

キイチからもイオリとの話を聞かされていた俺は、確かに小さな頃から親のプレッシャーを1人で抱え、俺はそんなイオリを気遣ってやる事も構ってやる事なく自分の好きなように過ごしてきた。

それに少し後ろめたさを感じた俺は初めて双子の兄弟としてイオリに言った。

T「俺に申し訳ないって思うなら…イオリ…お前も幸せになれ。今度、母ちゃんと父ちゃんと4人で飯でも行こう……」

そう話すと俺は電話を切り、キイチは少し離れた所で微笑みながら俺のことを見守っていた。

K「タカラくん……ちゃんと話せて良かったね…」

T「イオリがいつ謝ってくるか待ちくたびれた。」

俺がわざと照れ隠しでそう言うとキイチは俺の肩を抱く。

K「俺さ…また最近同じ夢みるんだ…」

キイチがそう話し始め、俺はそんなキイチが心配になり身体ごとキイチを見つめる。

T「またあの夢?白シャツ着た俺を追いかける?」

そう問いかけるとキイチは笑いながら首を横に振った。

K「ううん。違う違う。夢の中の俺はまだ5歳くらいでね?砂場でお城を作って遊んでたら、ランドセル背負ったタカラくんが帰ってきていきなり俺の唇にチュッてキスしてくる夢。ここ最近、その夢ばっか毎日見てる。」

幸せそうに真剣にそう話すキイチがおかしくて俺がケラケラ笑っているとキイチは不思議そうな顔をしている。

K「人が真剣に話してるのに~。」

T「んふふふwごめんごめん!!だってそれ!夢じゃなくて本当にしたもん!5歳のキイチに7歳の俺がチュッてキスしたの!夢じゃなくて現実だよ。」

K「えぇぇぇええぇぇ!!!?」

俺との遠い記憶をキイチはまた一つ夢の中で見つけ、俺は嬉しくて笑うがキイチは驚いている。

記憶とは普通に生きていて忘れていく記憶と忘れられない記憶、そして忘れてはいけない記憶と忘れないといけない記憶がある。

キイチは忘れてはいけない記憶を事故によって忘れてしまったけど夢の力で思い出した。

いつか…

俺が年老いて大切な記憶がなくなってしまった時…

夢でもそんな大切な記憶を見れる日が来るのだろうか?

いや、きっと俺が忘れてしまってもキイチがその大切な思い出を記憶してくれているだろう…

忘れても思い出したあの大切な記憶のカケラのように…


おわり
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