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37話
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キイチside
「俺だって同じ幼なじみなのにタカラだけみんなから愛されて可愛がられて…何より昔からミズキに大切にされて特別扱いされてるタカラが羨ましくて憎かったんだよ!だからタカラが1番可愛がっていたキイチをタカラから奪ってやろう…そう思ったんだ。」
そう話しているイオリくんは思い出したばかりの俺の記憶の中にいるイオリくんと同じ目をしていて、10年近く経った今でもタカラくんを憎んでいるのかもしれないと思った俺は微かに手が震える。
K「…だから俺を脅して付き合おうとしたと?」
「あぁそうだよ。俺は母さんからの期待で押し潰されてしまいそうなのにタカラだけみんなと遊んで楽しんで自分のやりたい事だけやって…そんな自由なタカラが大っ嫌いだった!あいつが苦しんで悲しめばなんでも良かったんだよ!!」
ヒステリックにそう泣き叫ぶとイオリくんは走り出し、その後ろ姿を見た俺はあの日…事故に遭った時の映像がフラッシュバックした。
そうだ…俺…
道路に飛び出したのはイオリくんだったのに、タカラくんが道路に飛び出した錯覚に襲われて必死でイオリくんを助けたんだった。
あの時に感じていた感情を鮮明に思い出すなか俺はまた、あの頃のようにイオリくんの背中を追いかけ…
イオリくんが道路に飛び出す直前で手首を引っ張り止めた。
K「また、自分の思い通りにならないからって…死のうとするの?もうやめなよそんな生き方…もう10年経ってんだよ……いい加減、大人になれって……」
俺がそう言ってイオリくんの腕から手を離すとジワッとイオリくんの目には涙が溢れていて、その泣き顔はタカラくんとは違い、俺の胸を締め付けることはなく、俺の心をさらに冷めさせて頭を現実的にさせた。
「偶然、ノイルくんと再会したとき言われたんだ…何があったかは知らないけどお前のせいで未だにキイチもタカラも苦しんでるよって………そろそろ2人を解放してあげてほしいって…もう十分過ぎるほど2人を苦しめただろって…俺だって苦しかったのに…みんなしてタカラの心配ばっかり…。」
K「だから、また俺たちを苦しめようと思って現れたの?」
「そうじゃない!!そうじゃなくて…ただ…俺だって普通に幼なじみとしてみんなと一緒に話してみたかった…キイチにごめんねって謝って…仲間に入れて欲しかった…でもタカラのあの冷たい目を見ると、あの頃と同じ苛立ちを思い出して…お前はまともに謝ることすら出来ないダメな人間だって言われてるみたいで耐えられなくて…何も言わずに帰ったんだ……」
K「…俺はタカラくんがそんな目で見た理由…間違ってないと思うけどね。実際…謝罪はしてないんだから。」
「……」
K「…俺たち…もう会わない方がいい…俺とイオリくんが一緒にいたら…周りも自分達も苦しむ。今度見かけてももう…話しかけないで欲しい。」
俺が冷たく突き放すようにそう言うと、イオリくんは泣き顔のままぎこちない笑みを浮かべた。
「分かったよ…もう会いに来ないから安心して…10年経って俺は変われなかったけど…2人の気持ちも10年経っても変わらなかったんだな…嫌なほどタカラと俺は似てるのに…俺の入る隙間なんていつもどこにもなかった。」
K「タカラくんは誰かを傷つけてまで自分が幸せになろうとはしない人だからね。むしろあの人は自分が損をしてでも人が幸せになる事を願ってる。そこがイオリくんとタカラくんの決定的な違いだよ。」
俺はイオリくんにそう言って立ち去ろうとすると、イオリくんが微かに震えた手で俺の腕を掴み、俺は立ち止まった。
「キイチ…あ…あの時…助けてくれてありがとう……辛い思いさせて…ごめん…」
イオリくんは俺に引き攣った声でそう言うとゆっくりと俺の腕から手を離した。
K「イオリくんが謝らないといけない相手…もう1人いると思うよ。」
俺はイオリくんにそれだけ伝えると足早にその場を立ち去った。
イオリくんと話をし全てを思い出した俺は、ずっと気になりながら生きてきた胸のつっかえが全て取れたような気分で、今日仕事が終わったらちゃんとタカラくんに話をしに行こうと心に決めた。
つづく
「俺だって同じ幼なじみなのにタカラだけみんなから愛されて可愛がられて…何より昔からミズキに大切にされて特別扱いされてるタカラが羨ましくて憎かったんだよ!だからタカラが1番可愛がっていたキイチをタカラから奪ってやろう…そう思ったんだ。」
そう話しているイオリくんは思い出したばかりの俺の記憶の中にいるイオリくんと同じ目をしていて、10年近く経った今でもタカラくんを憎んでいるのかもしれないと思った俺は微かに手が震える。
K「…だから俺を脅して付き合おうとしたと?」
「あぁそうだよ。俺は母さんからの期待で押し潰されてしまいそうなのにタカラだけみんなと遊んで楽しんで自分のやりたい事だけやって…そんな自由なタカラが大っ嫌いだった!あいつが苦しんで悲しめばなんでも良かったんだよ!!」
ヒステリックにそう泣き叫ぶとイオリくんは走り出し、その後ろ姿を見た俺はあの日…事故に遭った時の映像がフラッシュバックした。
そうだ…俺…
道路に飛び出したのはイオリくんだったのに、タカラくんが道路に飛び出した錯覚に襲われて必死でイオリくんを助けたんだった。
あの時に感じていた感情を鮮明に思い出すなか俺はまた、あの頃のようにイオリくんの背中を追いかけ…
イオリくんが道路に飛び出す直前で手首を引っ張り止めた。
K「また、自分の思い通りにならないからって…死のうとするの?もうやめなよそんな生き方…もう10年経ってんだよ……いい加減、大人になれって……」
俺がそう言ってイオリくんの腕から手を離すとジワッとイオリくんの目には涙が溢れていて、その泣き顔はタカラくんとは違い、俺の胸を締め付けることはなく、俺の心をさらに冷めさせて頭を現実的にさせた。
「偶然、ノイルくんと再会したとき言われたんだ…何があったかは知らないけどお前のせいで未だにキイチもタカラも苦しんでるよって………そろそろ2人を解放してあげてほしいって…もう十分過ぎるほど2人を苦しめただろって…俺だって苦しかったのに…みんなしてタカラの心配ばっかり…。」
K「だから、また俺たちを苦しめようと思って現れたの?」
「そうじゃない!!そうじゃなくて…ただ…俺だって普通に幼なじみとしてみんなと一緒に話してみたかった…キイチにごめんねって謝って…仲間に入れて欲しかった…でもタカラのあの冷たい目を見ると、あの頃と同じ苛立ちを思い出して…お前はまともに謝ることすら出来ないダメな人間だって言われてるみたいで耐えられなくて…何も言わずに帰ったんだ……」
K「…俺はタカラくんがそんな目で見た理由…間違ってないと思うけどね。実際…謝罪はしてないんだから。」
「……」
K「…俺たち…もう会わない方がいい…俺とイオリくんが一緒にいたら…周りも自分達も苦しむ。今度見かけてももう…話しかけないで欲しい。」
俺が冷たく突き放すようにそう言うと、イオリくんは泣き顔のままぎこちない笑みを浮かべた。
「分かったよ…もう会いに来ないから安心して…10年経って俺は変われなかったけど…2人の気持ちも10年経っても変わらなかったんだな…嫌なほどタカラと俺は似てるのに…俺の入る隙間なんていつもどこにもなかった。」
K「タカラくんは誰かを傷つけてまで自分が幸せになろうとはしない人だからね。むしろあの人は自分が損をしてでも人が幸せになる事を願ってる。そこがイオリくんとタカラくんの決定的な違いだよ。」
俺はイオリくんにそう言って立ち去ろうとすると、イオリくんが微かに震えた手で俺の腕を掴み、俺は立ち止まった。
「キイチ…あ…あの時…助けてくれてありがとう……辛い思いさせて…ごめん…」
イオリくんは俺に引き攣った声でそう言うとゆっくりと俺の腕から手を離した。
K「イオリくんが謝らないといけない相手…もう1人いると思うよ。」
俺はイオリくんにそれだけ伝えると足早にその場を立ち去った。
イオリくんと話をし全てを思い出した俺は、ずっと気になりながら生きてきた胸のつっかえが全て取れたような気分で、今日仕事が終わったらちゃんとタカラくんに話をしに行こうと心に決めた。
つづく
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