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30話
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タカラside
嘘…嘘だ…
そう、キイチはイオリを庇い俺の目の前でトラックに跳ね飛ばされた。
震える足で道路にむかうとキイチのおかげでイオリは怪我ひとつしていなくて…
キイチは頭から血を流していて、イオリはその光景に怯えて正気を失って取り乱していた。
T「キイチ……?キイチ!!」
K「…タカラ…くん…」
T「…話さなくていいから…大丈夫だから…」
K「…タカラくん…俺ね…タカラくんのことがやっぱりす………」
微かに意識のあったキイチはゆっくりと俺に微笑むとそのまま瞼を閉じた。
キイチが病院に運ばれている間は正直、生きた心地がしなかった。
隣で正気を失い取り乱しているイオリに冷たい視線を向け、なんでこんな奴のためにキイチがこんな目に遭わないといけないんだ…そういう気持ちしか俺には生まれなかった。
キイチは病院に到着してすぐ手術室に入り、パニックになっているイオリは鎮静剤を処方されることになり病室へと連れて行かれた。
俺は手術室の前に座りただ、祈るような気持ちで待っているとキイチのご両親、そしてうちの両親が病院に来た。
俺は必死で涙を堪えて事情を説明していると母ちゃんはみんなの目の前で俺を思いっきり殴った。
何度も何度も…
母「イオリとキイチをこんな目に遭わせるなんてあんたは何考えてるの!」
母ちゃんは本当に俺の説明を聞いていたのだろうかと疑いたくなるほど俺のことを責め立て…父ちゃんが俺を庇うようにして止めてくれた。
ウチの両親はイオリの元に行き、俺はキイチのご両親と一緒にキイチの手術が終わるのを待った。
数時間後
キイチは痛々しい姿のまま手術室から出てきた。
ご両親がお医者様から受けた説明によると手術は成功し、目覚めれば問題はないと。
しかし、手術の後遺症は目覚めてみてからでないとわからないと説明されたらしい。
「タカラくん…今日はもう遅いから帰りなさい。お父さんも待ってるわよ。」
キイチの横でじっと目覚めるのを待つ俺に向かって、キイチのお母さんが心配そうにそう言うので、病室の入り口を見ると父ちゃんが俺をなんとも言えない目で見ていた。
T「また…明日来ます……俺のせいなんで…」
「何言ってるの…タカラくんのせいじゃないからね。お家に帰ってしっかり休みなさい。」
そうして俺は父ちゃんと一緒に病院を出た。
家に帰るタクシーの中で俺はただ窓の外をじーっと見つめていた。
なんでこんな事になってしまったのだろう?
なんでキイチがこんな目に遭わなきゃいけないのだろう?
俺があの場所に行ったのが間違いだった?
いや、違う…
俺とイオリが双子として産まれてきたことがそもそもの間違いだった。
そんな事を流れゆく景色を眺めながら考えていると、自分の心が苦しくて寂しくて惨めで涙が溢れ出した。
すると、父ちゃんが俺の微かに震える手を握りながら唐突に言った。
「タカラ…母ちゃんとイオリと一緒に暮らすの…辛いか?」
俺はその問いかけに返事をせず涙を流したままじーっと外を見つめたままでいた。
「父ちゃんは母ちゃんと暮らすの辛いんだ…離婚しようと思う…母ちゃんはきっとイオリを離さないだろう…お前は…どうする?」
両親の夫婦仲が悪い事は幼い頃から知っていた。
だからいつかは離婚するんだろうな…と思っていたから父ちゃんにそう言われたからと言ってなんの驚きもなかったし、こんな状況で俺の心配をする事なく俺を責めた母ちゃんや憎くて堪らないイオリと離れる事が出来るならそうしたいと単純に思った。
T「…母ちゃんやイオリと離れて父ちゃんと暮らしたい…けど…」
「けど?」
T「キイチのそばからは離れたくない。」
「分かった…」
それが唯一、俺が出した両親への条件だった。
つづく
嘘…嘘だ…
そう、キイチはイオリを庇い俺の目の前でトラックに跳ね飛ばされた。
震える足で道路にむかうとキイチのおかげでイオリは怪我ひとつしていなくて…
キイチは頭から血を流していて、イオリはその光景に怯えて正気を失って取り乱していた。
T「キイチ……?キイチ!!」
K「…タカラ…くん…」
T「…話さなくていいから…大丈夫だから…」
K「…タカラくん…俺ね…タカラくんのことがやっぱりす………」
微かに意識のあったキイチはゆっくりと俺に微笑むとそのまま瞼を閉じた。
キイチが病院に運ばれている間は正直、生きた心地がしなかった。
隣で正気を失い取り乱しているイオリに冷たい視線を向け、なんでこんな奴のためにキイチがこんな目に遭わないといけないんだ…そういう気持ちしか俺には生まれなかった。
キイチは病院に到着してすぐ手術室に入り、パニックになっているイオリは鎮静剤を処方されることになり病室へと連れて行かれた。
俺は手術室の前に座りただ、祈るような気持ちで待っているとキイチのご両親、そしてうちの両親が病院に来た。
俺は必死で涙を堪えて事情を説明していると母ちゃんはみんなの目の前で俺を思いっきり殴った。
何度も何度も…
母「イオリとキイチをこんな目に遭わせるなんてあんたは何考えてるの!」
母ちゃんは本当に俺の説明を聞いていたのだろうかと疑いたくなるほど俺のことを責め立て…父ちゃんが俺を庇うようにして止めてくれた。
ウチの両親はイオリの元に行き、俺はキイチのご両親と一緒にキイチの手術が終わるのを待った。
数時間後
キイチは痛々しい姿のまま手術室から出てきた。
ご両親がお医者様から受けた説明によると手術は成功し、目覚めれば問題はないと。
しかし、手術の後遺症は目覚めてみてからでないとわからないと説明されたらしい。
「タカラくん…今日はもう遅いから帰りなさい。お父さんも待ってるわよ。」
キイチの横でじっと目覚めるのを待つ俺に向かって、キイチのお母さんが心配そうにそう言うので、病室の入り口を見ると父ちゃんが俺をなんとも言えない目で見ていた。
T「また…明日来ます……俺のせいなんで…」
「何言ってるの…タカラくんのせいじゃないからね。お家に帰ってしっかり休みなさい。」
そうして俺は父ちゃんと一緒に病院を出た。
家に帰るタクシーの中で俺はただ窓の外をじーっと見つめていた。
なんでこんな事になってしまったのだろう?
なんでキイチがこんな目に遭わなきゃいけないのだろう?
俺があの場所に行ったのが間違いだった?
いや、違う…
俺とイオリが双子として産まれてきたことがそもそもの間違いだった。
そんな事を流れゆく景色を眺めながら考えていると、自分の心が苦しくて寂しくて惨めで涙が溢れ出した。
すると、父ちゃんが俺の微かに震える手を握りながら唐突に言った。
「タカラ…母ちゃんとイオリと一緒に暮らすの…辛いか?」
俺はその問いかけに返事をせず涙を流したままじーっと外を見つめたままでいた。
「父ちゃんは母ちゃんと暮らすの辛いんだ…離婚しようと思う…母ちゃんはきっとイオリを離さないだろう…お前は…どうする?」
両親の夫婦仲が悪い事は幼い頃から知っていた。
だからいつかは離婚するんだろうな…と思っていたから父ちゃんにそう言われたからと言ってなんの驚きもなかったし、こんな状況で俺の心配をする事なく俺を責めた母ちゃんや憎くて堪らないイオリと離れる事が出来るならそうしたいと単純に思った。
T「…母ちゃんやイオリと離れて父ちゃんと暮らしたい…けど…」
「けど?」
T「キイチのそばからは離れたくない。」
「分かった…」
それが唯一、俺が出した両親への条件だった。
つづく
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