【BL】記憶のカケラ

樺純

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16話

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タカラside

いつも通り高校が終り、掃除をサボって門を走って出ると、俺はご機嫌に鼻歌をうたいながらスマホを出してキイチに連絡をした。

いつもなら秒で俺の着信にでるはずのキイチは何故か電話に出ず、不思議に思った俺は仕方なく着信を切りスマホをポケットにいれた。

キイチは何やってんだろ~つまんないな~と思いながら歩いていると、家の前でキイチの姿が見え駆け寄ろうとすると、キイチの横には何故かイオリがいて、ありえない組み合わせに驚いた俺は思わず立ち止まり2人の姿を見つめる。

確かに俺と双子であるイオリも幼なじみではあるが、今まで俺たちの中にイオリが入って来たこともなければ、キイチとイオリが2人で遊んでいたことすらないはず。

なのになんで…イオリとキイチが一緒にいるんだ?

すると、イオリはキイチの腕をギュッと掴み、キイチがイオリの方に顔を向けるとイオリは俺の見たことのないような笑顔をキイチに見せ、キイチにキスをした。

T「え……マジかよ……」

俺は立ちすくみ微かに手が震えていて今、目の前で起こっていることは夢なのか…現実なのか…よく分からなかった。

キイチの顔は俺からはよく見えない。

イオリは笑顔のまま家の中に入っていくとキイチはそのまま自分の家の方へと歩いて行った。

双子だと同じ人を好きになるとはよく聞いたことがあるが、それは異性が恋愛対象だった場合で……

いや待て…この気持ちは…

俺…キイチが好きってことなのか?

自分の中にあった恋心に気づいてしまった俺は微かに震える足で帰りたくもない家へと帰った。

すると、イオリが勝ち誇ったような顔をして俺に話しかけてきて、さっきの出来事が頭に浮かぶ俺は涙が溢れ出しそうになるのをグッと堪え、微かに震える手を自分の背中に隠す。

「最近もまだキイチと仲良いのか?」

T「関係ねぇだろ。」

「関係あるよ。」

T「はぁ?」

「俺、キイチと付き合うことになったんだ。お願いだからさ?俺の恋人に付き纏うのやめろよな?邪魔なんだよ。」

T「付き合うって…お…お前ら男同士…だろ?」

俺が少し吃りながらイオリにそう言うとイオリは俺の顔を見て鼻で笑っている。

「ふんwだったらなんだよ?男同士で付き合っちゃダメなのか?お前がよく言うよ…キイチが好きなクセに。」

イオリはそう言うと俺を馬鹿にするように笑いながら自分の部屋へと戻って行った。

キイチとイオリが…付き合った?

俺と同じ顔をしたイオリとキイチが付き合った?

俺は自分の恋心に気づいた瞬間に地獄に叩きつけられたような気分で目の前が真っ暗になった。

T「なんでイオリなんだよ…キイチ…」

俺はそのとき生まれて初めて告白もしていないのにキイチに失恋をした。

つづく
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