【BL】記憶のカケラ

樺純

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14話

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タカラside

あの時

まだ幼かった俺があと一歩の勇気を持てていたら…

俺はこんなにも苦しまなかったのだろうか?

この世で1番会いたくない人となってしまった双子の兄、イオリ。

イオリ…

お前はなんでまた俺たちの前に現れたの?

もう俺たちは一緒にいない方がいい。

そんな運命の星の下に生まれた双子なのに……

俺たちが一緒にいると誰かが傷つき誰が苦しむ。

お前はまた被害者を増やしたくて俺たちの前に現れた?

今度の目的はなに?

双子の兄の顔を見てそんな感情が生まれることが情なくて俺は頭を荒っぽく掻いた。

26年前

29日生まれたイオリと30日に生まれた俺。

そう、俺とイオリは日にちを跨いだ二卵性の双子として生まれた。

赤ん坊の頃は分け隔てなく愛されただろう…しかし俺たちはいつしか比べられて育つようになった。

俺がぬいぐるみを欲しがれば、人形を欲しがっていたはずのイオリは俺と同じぬいぐるみを欲しがり、俺が紫色の服を選べば、その俺の服を横取りしてイオリは嬉しそうにそれを着た。

イオリは日にちを跨いで俺より少し早く生まれたせいか、いつも俺よりも少し上の立場でいようとし、俺の欲しがるものを俺よりも先に欲しがり、何をするにもマイペースな俺に比べてイオリはやる事全てが俺よりも早かった。

そんな俺たち双子に露骨に格差がうまれたのは小学生になった頃。

イオリは全ての分野を卒なくこなし、頭の回転が早く人懐っこくて明るく気立のいい事から長男として両親はもちろん、親戚一同の期待を一心に受けていた。

その度に俺は言われたんだ。

二卵性とはいえなんで双子なのにこんなにも違うのだろうかと…

そんな窮屈な小学校生活の中、俺が唯一楽しく過ごせたのは近所に住む幼なじみの存在があったから。

3歳年上のノイルくんとユウリちゃんは俺にいつも優しくしてくれて、2歳年上のヒノハちゃんとリヒトくんは俺をいつも甘やかしてくれて、勉強が苦手な俺に勉強を教えてくれた。

同級生であり親友のミズキはいつも俺の悩みを聞いてくれて、2つ歳下であるキイチはいつも俺にべったりでいつも一緒にふざけ合って笑い合って過ごしていた。

それが俺の唯一の楽しみだったし、小学校を卒業していく幼なじみがいても、いつも俺たちは公園で集まって年齢など関係なく遊んでいた。

そんな小学校生活を卒業し、俺が入学した中学はごく普通な中学だった。

中学入学前の俺といえばイオリが私立の有名校を受験することが決まっていて、やっとイオリから解放されると喜んでいたが…

受験に失敗したイオリは俺と同じ中学に通うこととなり、俺の喜びはぬか喜びとなってしまった。

今考えるとその頃からイオリの心は軋み始めていたのかもしれない。

ろくに会話もなく、幼い頃から不仲な双子の兄弟なのにも関わらず、入学式の帰宅後すぐにイオリから話しかけてきた。

「なぁ…その長い髪さ?どうにかなんない?」

俺はそんなイオリを無視して冷蔵庫を開けるとドーナツを頬張りながら牛乳を飲む。

「無視かよ?聞いてんの?」

T「関係ねぇだろ。」

「お前が髪長いせいで、同じような髪型で似てる似てるって言われて気分悪いんだよ。短く切れよ!」

T「そっちが坊主にでもしろよ。」

「はぁ!?なんだよその態度!?」

T「俺は切りたくなったら切る。お前に言われて切りたくない。」

当時の俺の髪型は美容室に行くのが面倒で、自然に伸びてしまった結果ショートボブのような髪型になっていて、イオリも幼い頃からずっと長めの髪型だった為、知らない人が見れば二卵性だというのに俺たちは毎回、瓜二つの双子だと言われた。

二卵性でも成長スピードまで全く同じで、俺がイオリの服を着れば入れ替わった事が分からないほど俺とイオリは似ていて…特にその後ろ姿はそっくりだった。

イオリは出来損ないの俺と似ていると言われるのが屈辱的なのか、そう言われるたびに顔が歪んでいたけど、俺は二卵性とはいえ同じ親の遺伝子を持つ双子なんだからそりゃ顔は似てるだろと思っていたが……

俺はのちにその事で苦しむ事となる。

つづく
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