【BL】記憶のカケラ

樺純

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12話

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キイチside

タカラくんに追い出された俺は意識が朦朧とするなか街を徘徊し、行き場のなくなった俺は仕方なくノイルくんの店に戻ると、ノイルくんとユウリちゃんがパーティーの片付けをしていた。

店の中に入ると俺の存在に気づいた2人が手を止める。

N「いきなりいなくなるから心配しただろ。タカラからもさっき連絡あったけど…どうしたその顔色…とりあえずここに座れ。」

店に入った俺の顔色を見たノイルくんは驚いた顔をして俺の元に駆け寄り腕を掴む。

K「ノイルくん…あの後ろ姿は…誰なんだろ…」

N「え?」

K「あのイオリって人は…一体何者?なんで俺だけが…あの人を知らないの?」

自分の記憶の中に僅かな空白がある事は誰も何も言わなかったが俺自身、気づいていた。

しかし、その記憶を思い出そうとするといつも胸が苦しくて、息の仕方さえ忘れてしまいそうなほど追い詰められて、俺はいつもその記憶から目を背けていた。

もしかして…あの夢の中のあの人も…

イオリというあの男も俺の抜け落ちてしまった記憶と何かしら関係あるのだろうか?

頭の中を整理するように何度思い出そうとしても出来なくて、混乱しているとユウリちゃんが心配そうな顔をして俺の前にホットミルクをそっと出した。

Y「キイチ、これ飲んで落ちつきな…それから話そう。」

ユウリちゃんはパニック状態になっている俺を落ち着かせるようにマグカップを持たせる。

Y「落ち着いて話そう…一つずつ…」

ユウリちゃんのその言葉に俺は頷くとホットミルクをひと口飲み、深呼吸をし息を整えると口を開いた。

K「二人にも昔…話した事あったよね…あの事故のあとからずっと同じ夢を見るって…」

N「あぁ聞いたよ…白いシャツを着た後ろ姿の男の子の話し…だろ?」

K「そう……もしかしたらその子はさっき来てたイオリさんかもしれないと俺は思って……」

俺がそう言いかけるとノイルくんは俺の言葉を遮るように言った。

N「その夢に出てくるのはイオリじゃないよ。」

K「え?な…なんでそんな事、ノイルくんが分かるの?」

N「お前が見てるのは夢でもなんでもない…昔、現実に起きた事だからだよ。キイチ、いい加減思い出せよ…その記憶のせいでお前もタカラもどれだけ苦しんでるか…俺はもう見てられないよ。」

ノイルくんのその言葉の意味が分からないのに、何故かドキッとするのは俺の知らない所で俺自身、思い当たる事があるからだろうか…?

いつもタカラくんとの関係に俺は迷いを感じていた。

幼なじみ以上の関係になりたいと思いながらも、何故かタカラくんの顔を見ると、愛おしい愛してるそう思うのと同時に、申し訳ないという気持ちの方が大きくて、その申し訳ないという感情がどこから生まれたのか俺自身も分からなかったから。

しかし、それは男なのに男を愛してしまった罪悪感だと俺は勝手に理由付けて考えるようにしていたが…

N「一生このままタカラと仲良しの幼なじみでいいのか?自分の大切な想いを失くしたまま生きていけるのか?あの時…お前が何を考え何に悩んでいたのか…お前自身は知りたくないのか?いい加減、目を背けずに思い出せ…もうお前はあの頃の弱い子供じゃない…辛かった記憶に蓋をするのはもうやめろ。」

ノイルくんがそう話すと俺の頭の中はクラクラとし、思わず目を閉じるといつものあの夢が浮かび上がった。

つづく
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