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キイチside
タカラくんが来るのが遅くて、心配になった俺はパーティーの準備を終えると、ノイルくんにタカラくんを迎えに行くと言って店を飛び出した。
もうとっくの昔にミズキくんはヒノハちゃんを連れて店に来てるのに…
あの人は一体どこで何やってんのホント…
まさかナンパとかされてれないだろうな!?
そう思いながら歩いていると、俺の目の前に突然どこからともなく現れたのか、明るいアッシュ色の長い髪をした白シャツを着た見覚えのある後ろ姿の男性が歩いていた。
その姿は俺の夢の中にいつも現れるあの人物がそのまま大人になったかのような姿で思わず俺の視線が釘付けになる。
K「え…あの人…」
咄嗟に追いかけようと足を早めたものの横断歩道の信号が赤に変わり、俺は足止めをくらい目の前を車が通り過ぎていく。
俺は身体を左右に動かし背伸びをして向こう岸をのぞくものの…
車が過ぎ去ったそこにはもう、その人の姿はなかった。
俺は青信号に変わると思わず駆け出し周りを見渡しながらその人の後ろ姿を探した。
なぜだろ…
なぜ俺はあの後ろ姿がそんなに気になるんだろう…
あの事故のあとから毎晩みるようになったあの夢。
苦しくて…辛くて…切ない…
あの人の顔を見ればその夢の時に抱いてる感情の謎が分かるかもしれない。
そう思ったら俺は自分でも驚くほどに必死でその人の姿を探した。
すると…
ブッブーッ!!
大きなクラクションの音が背後から聞こえ、俺が振り返ると、そこにはタカラくんが立ち尽くしていてトラックがタカラくんの目の前まで迫っている。
やばい…なにやってんだよ!!
そう思った俺はタカラくんの方へと走り出し飛びつくようにギュッと抱きしめると、地面を転がるようにしてトラックの前から逃れた。
タカラくんはしばらくの間、呆然としていたが俺の手の怪我を見て我に返ったのか、自分のスーツからハンカチを取り出す。
T「ご…ごめん…俺……え…キイチ、怪我してるじゃん!!」
K「あぁ…大したことないから。ワイン割れなくて良かったね。」
そう言うとタカラくんは小さく頷き泣きそうな顔で俺の手にハンカチを巻いてくれた。
俺はそんなタカラくんの顔を見て思うんだ。
あぁ…やっぱ俺はこの人が大好きだな…って。
その複雑な感情を口にしてしまえば「幼馴染」というこの親しい関係が終わりを迎えてしまいそうで、臆病な俺は自分の気持ちを口にする事なくタカラくんに微笑む。
そして、俺たちは寄り添うように歩きRossoまで向かった。
つづく
タカラくんが来るのが遅くて、心配になった俺はパーティーの準備を終えると、ノイルくんにタカラくんを迎えに行くと言って店を飛び出した。
もうとっくの昔にミズキくんはヒノハちゃんを連れて店に来てるのに…
あの人は一体どこで何やってんのホント…
まさかナンパとかされてれないだろうな!?
そう思いながら歩いていると、俺の目の前に突然どこからともなく現れたのか、明るいアッシュ色の長い髪をした白シャツを着た見覚えのある後ろ姿の男性が歩いていた。
その姿は俺の夢の中にいつも現れるあの人物がそのまま大人になったかのような姿で思わず俺の視線が釘付けになる。
K「え…あの人…」
咄嗟に追いかけようと足を早めたものの横断歩道の信号が赤に変わり、俺は足止めをくらい目の前を車が通り過ぎていく。
俺は身体を左右に動かし背伸びをして向こう岸をのぞくものの…
車が過ぎ去ったそこにはもう、その人の姿はなかった。
俺は青信号に変わると思わず駆け出し周りを見渡しながらその人の後ろ姿を探した。
なぜだろ…
なぜ俺はあの後ろ姿がそんなに気になるんだろう…
あの事故のあとから毎晩みるようになったあの夢。
苦しくて…辛くて…切ない…
あの人の顔を見ればその夢の時に抱いてる感情の謎が分かるかもしれない。
そう思ったら俺は自分でも驚くほどに必死でその人の姿を探した。
すると…
ブッブーッ!!
大きなクラクションの音が背後から聞こえ、俺が振り返ると、そこにはタカラくんが立ち尽くしていてトラックがタカラくんの目の前まで迫っている。
やばい…なにやってんだよ!!
そう思った俺はタカラくんの方へと走り出し飛びつくようにギュッと抱きしめると、地面を転がるようにしてトラックの前から逃れた。
タカラくんはしばらくの間、呆然としていたが俺の手の怪我を見て我に返ったのか、自分のスーツからハンカチを取り出す。
T「ご…ごめん…俺……え…キイチ、怪我してるじゃん!!」
K「あぁ…大したことないから。ワイン割れなくて良かったね。」
そう言うとタカラくんは小さく頷き泣きそうな顔で俺の手にハンカチを巻いてくれた。
俺はそんなタカラくんの顔を見て思うんだ。
あぁ…やっぱ俺はこの人が大好きだな…って。
その複雑な感情を口にしてしまえば「幼馴染」というこの親しい関係が終わりを迎えてしまいそうで、臆病な俺は自分の気持ちを口にする事なくタカラくんに微笑む。
そして、俺たちは寄り添うように歩きRossoまで向かった。
つづく
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