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3話
しおりを挟む息を整えるようにして俺が脱ぎ散らかしたTシャツを手に取ると、タオさんはヨガマットに淫らに寝そべったまま俺の腕を掴む。
T「後悔…してる?」
J「え?」
T「どこの誰かも分からない男を抱いたこと…」
その目はどこか寂しそうで、俺の胸の奥が締め付けられ俺はその唇にチュッと軽いキスを落とした。
J「後悔するくらいなら…初めから抱きませんよ…」
俺の言葉にニコッと笑うとタオさんは太陽に目を細める。
T「ねぇ…」
J「ん?」
T「こんな真昼間から外でするもんじゃないね。眩しくて目がくらむ。」
タオさんは頬を真っ赤に火照らせて少し苦笑いしていた。
J「俺は癒されましたけど?大自然の中…こんな綺麗な人を抱けたんだから…」
T「ヒーリングした?」
J「最高なヒーリングでしたよ…」
俺はタオさんのまぶたにキスをするとタオさんは嬉しそうに微笑んだ。
そして、俺たちは激しい営みによりかいた汗を流す為にバスルームへと向かい一緒に泡風呂へと入った。
J「ここ凄い屋敷ですけど1人で住んでるんですか?」
T「ううん。ここは別荘だからたまに心が疲れたらここに来てヒーリングするんだ。今日はどんなヒーリングよりも癒されたけど。」
俺の足の間にいるタオさんは俺の胸にもたれ掛かりチラッと俺の方を振り返って微笑む。
J「へぇ~お金持ちなんですね?」
T「一応ね?こう見えて若社長だし。」
J「はぁ!?しゃ…社長!?」
T「うん!株式会社V✴︎nusって知らない?あそこ俺の会社!」
タオさんは泡で無邪気にお髭~とか言って笑いながらそんな話をするが、俺は全く頭に入ってこず思考回路がショートした。
T「ん?ジュンキ?どーしたの!ねぇ!ねぇってば!」
タオさんは俺の方を向き俺の肩を揺らして顔を覗くがまさか…
俺が就職試験を受けた先の社長がタオさんだったなんて!!!?
J「そ…それ…マジっすか?」
T「ん?うん。マジだけど?なんでぇ~?」
タオさんはそんな俺のことなんて構わず、首に手を回してチュウチュッチュウ~と唇に吸い付いてくる。
俺は慌ててタオさんの腰を持ち距離を取ると、タオさんは眉を下げて悲しそうな目をした。
T「やっぱり男の俺を抱いたこと後悔…してるんでしょ…だからもうキスもしたくないんだろ…」
タオさんはそう言って俺から離れて縮こまるから俺は慌てて否定した。
J「そうじゃなくて!!そういう意味じゃなくて!!」
T「もういいよ。嫌なら嫌ってはっきり言えば良かったじゃんか!なんで俺のこと抱いたりなんかした……」
俺の話を聞こうとせず、一方的に話すタオさんの言葉を止めるため俺は少し強引にタオさんに口付けをした。
ゆっくりと離れるとタオさんは顔を真っ赤に染め俺から視線を逸らす。
J「そうじゃなくて…つい先日…タオさんの会社に入社試験…受けに行ったばっかりだったから…そこの社長って聞いてびっくりして…ごめん…」
そう言うとタオさんは大きな目をさらに大きく見開き手を口で覆った。
J「どっちにしても落ちてると思うけど…」
T「そんなの分かんないじゃん!!」
タオさんはそう言って俺の胸の中に飛び込んできた。
T「諦めちゃダメ!!」
タオさんがそう叫んだ半年後…
「えぇそれでは~株式会社V✴︎nusの社長である木村タオ社長に本日、入社した新入社員たちへお祝いの言葉を頂戴いたします。」
俺は無事、株式会社V✴︎nusに入社した。
タオさんはコネじゃないからね!本当に絶対にコネなんかじゃないから!と俺に抱かれ喘ぎながら何度も言っていたけど、これは間違いなくコネだとは思う。
でも、あのたった一回でタオさんの心身共に骨抜きし、夢中にさせた自分を褒めてやりたい。
まぁ、それ以上に俺自身がタオさんに夢中で骨抜きにされてしまったのだけれども…
そして、俺の配属はもちろん…
J「本日から社長の秘書見習いとなります田所ジュンキです。よろしくお願いします。」
T「よろしく。期待してるよ。」
なんて俺たちは社長室でよそよそしい挨拶をかわし握手をする。
タオさんは周りに気づかれないように握手したまま人差し指で俺の手のひらを撫でて微笑み、俺もそのサインに応えるように指先でタオさんの手のひらを撫でる。
誰も知らない俺たちの秘密の関係。
そして、そんな俺たちがまた都会から離れた妖精の森でヒーリング計画を立てているのは…
誰も知らない俺たちだけの秘密のヒーリングバカンス。
終わり
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