【BL】Christmas tree〜僕たちの偽りの顔〜

樺純

文字の大きさ
上 下
15 / 29

15話

しおりを挟む
ジョウside

相手の手を取り自分の腕に絡ませるなんてよくある行為なのに、なぜかその相手がトモさんだと俺は微かに震えてめちゃくちゃ緊張した。

煌びやか歩き慣れた街。

なのに不思議とトモさんが一緒に横を歩いてくれるだけで景色が違って見える。

俺と腕を組むトモさんの紫のサンタの手袋についたリボンが解けるのが見え俺は思った。

トモさんと赤い糸で結ばれているのが俺だったらいいのにな…って。

そんな事を思いながら立ち止まり、トモさんの手袋のリボンを結んであげると、行き交う人たちは見惚れるように俺たちに注目し見つめていた。

またゆっくりと歩き出し、緊張からトモさんとひと言も話せずにいると、腕を組んで歩いているトモさんが不思議そうに俺の顔を突然のぞき込んだ。


J「!?」

T「今なんか違うこと考えてたでしょ?別に良いけど。一応、今は同伴してるお客なはずなんですけど~」


トモさんは俺の恋心に気づいていてわざとなのだろうか?

それとも無意識なのだろうか?

俺の横で上目遣いをし少し拗ねて口を尖らせているが、俺には余裕なんてなくてドキドキと心臓がうるさい。

しかし、トモさんのその顔があまりにも可愛くて、俺が誤魔化すようにニコッと微笑むと、風になびいたトモさんの長い髪が唇のリップにくっ付き、俺がそっとその毛先を取ってあげて耳にかけてあげるとトモさんは嫌がる素振りを見せる事なく、ありがとうと言って微笑んでくれた。

こんなにもトモさんに緊張しているのに俺がそんな行動を迷うことなく出来たのはきっと、長年ホストとして働いてきた行動がこの体に染み付いているからだろう。


J「もうすぐ着くけど…その姿…店の奴らに見せるの嫌だな。」


あまりにも紫色のロングサンタの服装が似合いすぎていて、肩が丸見えなのが心配な俺の本音がついポロっと出てしまうとトモさんは口を尖らせて眉をあげる。


T「そんなに心配?」

J「心配っていうか…誰にも見せたくなくて…」

T「なら行くのやめる。」


トモさんは突然、そう言い出し立ち止まると俺と組んでいた腕もほどき、クルッと後ろを向いて歩き出すので焦った俺は慌ててトモさんを止めた。


J「待って待って!そういう意味じゃなくて!!」


愛情表現のひとつとして言ったはずの言葉なのに、予想外の反応をするトモさんに焦っているとトモさんは急に立ち止まり、俺の方を向いてニカッと笑った。


T「なーんてね。嘘だよ~」


そう俺を揶揄うようにして笑ったトモさんにホッと俺は胸を撫で下ろし、俺の顔に笑顔が戻るとトモさんも笑いながら元の道を歩き出した。

そして、俺は思う。

こんなにも俺の思い通りにならず俺を夢中にさせる人…

初めて出会ったかもしれないと。

つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~

松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。 ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。 恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。 伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

素直じゃない人

うりぼう
BL
平社員×会長の孫 社会人同士 年下攻め ある日突然異動を命じられた昭仁。 異動先は社内でも特に厳しいと言われている会長の孫である千草の補佐。 厳しいだけならまだしも、千草には『男が好き』という噂があり、次の犠牲者の昭仁も好奇の目で見られるようになる。 しかし一緒に働いてみると噂とは違う千草に昭仁は戸惑うばかり。 そんなある日、うっかりあられもない姿を千草に見られてしまった事から二人の関係が始まり…… というMLものです。 えろは少なめ。

逃げるが勝ち

うりぼう
BL
美形強面×眼鏡地味 ひょんなことがきっかけで知り合った二人。 全力で追いかける強面春日と全力で逃げる地味眼鏡秋吉の攻防。

楽な片恋

藍川 東
BL
 蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。  ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。  それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……  早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。  ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。  平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。  高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。  優一朗のひとことさえなければ…………

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト

春音優月
BL
真面目でおとなしい性格の藤村歩夢は、武士と呼ばれているクラスメイトの大谷虎太郎に密かに片想いしている。 クラスではほとんど会話も交わさないのに、なぜか毎晩歩夢の夢に出てくる虎太郎。しかも夢の中での虎太郎は、歩夢を守る騎士で恋人だった。 夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト。夢と現実が交錯する片想いの行方は――。 2024.02.23〜02.27 イラスト:かもねさま

処理中です...