6 / 29
6話
しおりを挟む
ジョウside
小さな頃から勉強が出来ず、顔とスタイルだけは良いと言われ続けてきたこの俺が、夜の世界に入ったのは周りから見れば驚く事もない自然な流れだったと思う。
ただ、俺は自ら望んでこの世界に入ったわけじゃない。
自分の命と引き換えに入らなければならなかった…
ただそれだけの話。
数年前までの俺は毎日仕事もろくにせず友人の家を転々とし、金を借りては酒と博打に溺れて過ごす、いわばクズのような日々を送っていた。
そんなある年のクリスマスイヴ
俺は抜けきれぬ酒の酔いを覚ますかのように、夕方の道をフラフラ歩いていると横断歩道をおばあさんが歩いていて、渡り切る間近で何かに躓いて転んだ。
俺は咄嗟におばあさんに駆け寄り声をかけた。
J「ばあちゃん大丈夫?怪我してない?」
「悪いねぇ…足が悪くて…大丈夫だよ。」
おばあさんがそう言うので俺が手を貸しながら立ち上がると、そこには俺とおばあさんに睨みきかす男二人組がいた。
俺がおばあさんの手を握って歩道の方に行こうとするとその男達は俺の肩を掴んだ。
*「おい…これどうしてくれんだ?」
柄の悪い顔でそう示す先には高級車があり、そこにはおばあさんが転んだ拍子に杖で付けてしまったのだろうよく見ると小さなかすり傷があった。
J「あぁ…すいません。」
そう言って俺が立ち去ろうとすると男達が声を荒げる。
*「おい!!これどうしてくれんだって言ってんだよ!!」
J「はぁ…俺にどうって言われても…」
「私が弁償するから…この子は何も関係ないから…」
おばあさんが必死に俺を庇うようにそう言うと、男達はおばあさんを乱暴に押し除けてその弾みでおばあさんはまた転んだ。
*「ばあさんには用はないんだよ!!お前に聞いてんだよ!!生意気な顔しやがって!!あぁん?舐めてんのか?」
そんな言葉が俺の頭の中を通り抜けていくが、俺の目には痛そうな顔をして倒れて込んでいるおばあさんしか映らない。
俺はそんな男達を無視しておばあさんに寄り添うと、男達は俺の腕を無理やり掴み自分達の方へと振り向かせた。
*「無視してんじゃねぇよ!!」
その言葉と同時に頬に走る激痛。
奥歯を噛み締める前にめり込んだ頬のせいで歯が当たり血の味がジワッと広がる。
俺の胸ぐらを掴みまた、男が拳を振り上げるともう1人の男が言った。
*「あんま、顔殴んな。身体にしとけ。」
その言葉が俺の耳にも届き、グッと腹筋に力を入れたものの時すでに遅し…
何度も溝落ちを殴られ、俺はおばあさんが恐怖のあまり震えてる横へ倒れ込んだ。
J「ゴホッゴホッ…ンッ…ばあちゃん…早く逃げな…」
「何言っての…坊やを置いていけないよ…警察を…!!」
おばあさんが慌てて取り出した携帯を男達はいとも簡単に取り上げ、地面に叩きつけて革靴の踵で踏み潰した。
*「ばあさん殺されてぇのか?」
そう言っておばあさんに近寄り威圧感を与え、俺はよろめく身体でその男とおばあさんの間に入った。
J「ばあちゃんに荒っぽい事すんじゃねぇよ…ばあちゃんここは大丈夫だから早く逃げな…。」
俺の背中の後ろにいるおばあさんにそう言うと、おばあさんは杖をついて不安そうな顔をしながら俺たちから離れる。
*「ばあさんを逃したって事は…お前が責任取ってくれんだろうな?」
J「悪りぃけど俺、金ねぇから。」
*「無かったら作りゃ~いいんだよ!!」
そう言って俺はまた、思いっきり溝落ちを殴られるとそのまま地面にぶっ倒れた。
つづく
小さな頃から勉強が出来ず、顔とスタイルだけは良いと言われ続けてきたこの俺が、夜の世界に入ったのは周りから見れば驚く事もない自然な流れだったと思う。
ただ、俺は自ら望んでこの世界に入ったわけじゃない。
自分の命と引き換えに入らなければならなかった…
ただそれだけの話。
数年前までの俺は毎日仕事もろくにせず友人の家を転々とし、金を借りては酒と博打に溺れて過ごす、いわばクズのような日々を送っていた。
そんなある年のクリスマスイヴ
俺は抜けきれぬ酒の酔いを覚ますかのように、夕方の道をフラフラ歩いていると横断歩道をおばあさんが歩いていて、渡り切る間近で何かに躓いて転んだ。
俺は咄嗟におばあさんに駆け寄り声をかけた。
J「ばあちゃん大丈夫?怪我してない?」
「悪いねぇ…足が悪くて…大丈夫だよ。」
おばあさんがそう言うので俺が手を貸しながら立ち上がると、そこには俺とおばあさんに睨みきかす男二人組がいた。
俺がおばあさんの手を握って歩道の方に行こうとするとその男達は俺の肩を掴んだ。
*「おい…これどうしてくれんだ?」
柄の悪い顔でそう示す先には高級車があり、そこにはおばあさんが転んだ拍子に杖で付けてしまったのだろうよく見ると小さなかすり傷があった。
J「あぁ…すいません。」
そう言って俺が立ち去ろうとすると男達が声を荒げる。
*「おい!!これどうしてくれんだって言ってんだよ!!」
J「はぁ…俺にどうって言われても…」
「私が弁償するから…この子は何も関係ないから…」
おばあさんが必死に俺を庇うようにそう言うと、男達はおばあさんを乱暴に押し除けてその弾みでおばあさんはまた転んだ。
*「ばあさんには用はないんだよ!!お前に聞いてんだよ!!生意気な顔しやがって!!あぁん?舐めてんのか?」
そんな言葉が俺の頭の中を通り抜けていくが、俺の目には痛そうな顔をして倒れて込んでいるおばあさんしか映らない。
俺はそんな男達を無視しておばあさんに寄り添うと、男達は俺の腕を無理やり掴み自分達の方へと振り向かせた。
*「無視してんじゃねぇよ!!」
その言葉と同時に頬に走る激痛。
奥歯を噛み締める前にめり込んだ頬のせいで歯が当たり血の味がジワッと広がる。
俺の胸ぐらを掴みまた、男が拳を振り上げるともう1人の男が言った。
*「あんま、顔殴んな。身体にしとけ。」
その言葉が俺の耳にも届き、グッと腹筋に力を入れたものの時すでに遅し…
何度も溝落ちを殴られ、俺はおばあさんが恐怖のあまり震えてる横へ倒れ込んだ。
J「ゴホッゴホッ…ンッ…ばあちゃん…早く逃げな…」
「何言っての…坊やを置いていけないよ…警察を…!!」
おばあさんが慌てて取り出した携帯を男達はいとも簡単に取り上げ、地面に叩きつけて革靴の踵で踏み潰した。
*「ばあさん殺されてぇのか?」
そう言っておばあさんに近寄り威圧感を与え、俺はよろめく身体でその男とおばあさんの間に入った。
J「ばあちゃんに荒っぽい事すんじゃねぇよ…ばあちゃんここは大丈夫だから早く逃げな…。」
俺の背中の後ろにいるおばあさんにそう言うと、おばあさんは杖をついて不安そうな顔をしながら俺たちから離れる。
*「ばあさんを逃したって事は…お前が責任取ってくれんだろうな?」
J「悪りぃけど俺、金ねぇから。」
*「無かったら作りゃ~いいんだよ!!」
そう言って俺はまた、思いっきり溝落ちを殴られるとそのまま地面にぶっ倒れた。
つづく
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

今夜のご飯も一緒に食べよう~ある日突然やってきたヒゲの熊男はまさかのスパダリでした~
松本尚生
BL
瞬は失恋して職と住み処を失い、小さなワンルームから弁当屋のバイトに通っている。
ある日瞬が帰ると、「誠~~~!」と背後からヒゲの熊男が襲いかかる。「誠って誰!?」上がりこんだ熊は大量の食材を持っていた。瞬は困り果てながら調理する。瞬が「『誠さん』って恋人?」と尋ねると、彼はふふっと笑って瞬を抱きしめ――。
恋なんてコリゴリの瞬と、正体不明のスパダリ熊男=伸幸のお部屋グルメの顛末。
伸幸の持ちこむ謎の食材と、それらをテキパキとさばいていく瞬のかけ合いもお楽しみください。
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;

素直じゃない人
うりぼう
BL
平社員×会長の孫
社会人同士
年下攻め
ある日突然異動を命じられた昭仁。
異動先は社内でも特に厳しいと言われている会長の孫である千草の補佐。
厳しいだけならまだしも、千草には『男が好き』という噂があり、次の犠牲者の昭仁も好奇の目で見られるようになる。
しかし一緒に働いてみると噂とは違う千草に昭仁は戸惑うばかり。
そんなある日、うっかりあられもない姿を千草に見られてしまった事から二人の関係が始まり……
というMLものです。
えろは少なめ。


楽な片恋
藍川 東
BL
蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。
ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。
それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……
早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。
ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。
平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。
高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。
優一朗のひとことさえなければ…………

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト
春音優月
BL
真面目でおとなしい性格の藤村歩夢は、武士と呼ばれているクラスメイトの大谷虎太郎に密かに片想いしている。
クラスではほとんど会話も交わさないのに、なぜか毎晩歩夢の夢に出てくる虎太郎。しかも夢の中での虎太郎は、歩夢を守る騎士で恋人だった。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト。夢と現実が交錯する片想いの行方は――。
2024.02.23〜02.27
イラスト:かもねさま
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる