4 / 29
4話
しおりを挟む
先に会計を済まし、締めの作業をするため店に出勤したユキトくんを見送り、俺は1人ぶらぶらとクリスマスムード漂う煌びやかな夜の街を歩く。
女装姿のまま。
本当にこの世界には俺と赤い糸で結ばれている人なんているのかな?
人並みにのまれそうになりながら、俺はクリスマス飾りの眩しい光で隠れてしまっている星を探しながらそんな事を思う。
サンタさん…今年は運命の人を俺にください。
そんな子供のような事をサンタさんに願っているとホストクラブの客引きに捕まって我に返った。
そうだった…俺はいま女の子の格好してんだった…
「お姉さんスタイルいいね?モデルさん?良かったらウチで少し飲んで行かない?カッコいい子揃ってるんだけど?」
客引きのボーイはそう言って俺のこの姿が偽りの姿だと気づく事なく、少し強引に俺をホストクラブへと連れていこうとする。
俺は思わず踏ん張って連れて行かれないようにするが、慣れない服装のせいで足元が危うい。
T「俺…いやアタシ!お酒飲めないの。」
そう言って噛みそうな女言葉を使って断ってみるがさすが客引き…そんな事ではへこたれないのかグイグイくる。
「大丈夫だよ?甘いカクテルもうちは用意してあるし!ね?お願い!一時間でいいから!」
T「え!いや、お!い~へ!?待て待て!!」
ボーイの勢いのまま腕を引っ張って連れて行かれそうになった俺の足が絡まり、ヨロっと転びそうになったその時…
誰かが俺の腰に手を回し、俺は地面ギリギリで転ばずに済んだ。
ギリギリセーフ…と心の中で呟き、客引きのボーイが助けてくれたのかと顔をあげると、ボーイは真っ青な顔をして俺の目の前に突っ立っていた。
あれ?と思った俺は自分の腰に回っているその腕をたどり視線を向けると、そこには眉ピと口ピ、おまけに耳にもこれでもか~とピアスのついた筋肉モリモリなベビーフェイスのチャラ度MAXなホストが立っていた。
「ひっ!!ジョウさんすいません。最近、ウチの店売り上げが下がってて…」
目の前にいるボーイは震え上がりながらジョウという男にそう言った。
J「だからって客引きはダメだよ?違法行為だからね?しかも、こんなか弱い彼女のことを強引に引っ張って…こんな綺麗な人が転んで怪我でもしたらどうするの?」
そう言ったジョウという男の甘くてギトギトした嘘くさい言葉に俺はゾゾゾ~と寒気がした。
しかし、そのジョウという男は何を思ったのか、俺の頬にへばりついたウィッグの毛先を耳にかけ、俺はジョウの女慣れしたその行為にキザすぎだろ…と呆れながら慌てて俺の腰に回るその手を振り払った。
すると、ジョウという男は不思議そうに俺の顔を見て首を傾げる。
J「お嬢さん…助けてあげたのにそれは酷いんじゃない?」
お嬢さんって今どきいう奴いるんだ…トレンディ俳優かよ…なんて冷めた目で見つめながら俺はジョウに言った。
T「助けて頂きありがとうございました!失礼します!」
そう言ってその場を立ち去ろうとすると、それを遮るように俺の前にジョウが立ちはだかる。
J「俺、この店でホストしてるんです。一応No.1なんだけど、良かったら今度遊びに来て?」
そう言ってウインクしながら俺の前に名刺を出してくるが、ジョウのそのホスト特有のキザな話し方とチャラさと、嘘くさい笑顔が俺には合わないらしく、全身に鳥肌が立ち寒気がしてゾゾゾ~どころの騒ぎではない。
T「ホストクラブとか興味ないんで大丈夫です。」
そう言って俺が歩き出そうとするとまた、そのジョウという男が目の前を遮り、さすがにこの俺でもイライラし始めた。
T「あの!そこ!どいてもらえますか( *`ω´)!?」
J「とりあえず、これだけ持って帰って。また、俺たちすぐ会えそうな気がする。」
ジョウはそう言って俺のポーチに無理矢理、名刺を突っ込むと、眉ピをピクッと動かして笑顔を見せ俺に手を振り、俺はそんなジョウを無視して歩き出した。
チャラ…
ウザ…
ダサ…
ジョウを見た初めての印象は最悪の三拍子が揃い、珍しく俺はその日イライラしたまま帰宅した。
つづく
女装姿のまま。
本当にこの世界には俺と赤い糸で結ばれている人なんているのかな?
人並みにのまれそうになりながら、俺はクリスマス飾りの眩しい光で隠れてしまっている星を探しながらそんな事を思う。
サンタさん…今年は運命の人を俺にください。
そんな子供のような事をサンタさんに願っているとホストクラブの客引きに捕まって我に返った。
そうだった…俺はいま女の子の格好してんだった…
「お姉さんスタイルいいね?モデルさん?良かったらウチで少し飲んで行かない?カッコいい子揃ってるんだけど?」
客引きのボーイはそう言って俺のこの姿が偽りの姿だと気づく事なく、少し強引に俺をホストクラブへと連れていこうとする。
俺は思わず踏ん張って連れて行かれないようにするが、慣れない服装のせいで足元が危うい。
T「俺…いやアタシ!お酒飲めないの。」
そう言って噛みそうな女言葉を使って断ってみるがさすが客引き…そんな事ではへこたれないのかグイグイくる。
「大丈夫だよ?甘いカクテルもうちは用意してあるし!ね?お願い!一時間でいいから!」
T「え!いや、お!い~へ!?待て待て!!」
ボーイの勢いのまま腕を引っ張って連れて行かれそうになった俺の足が絡まり、ヨロっと転びそうになったその時…
誰かが俺の腰に手を回し、俺は地面ギリギリで転ばずに済んだ。
ギリギリセーフ…と心の中で呟き、客引きのボーイが助けてくれたのかと顔をあげると、ボーイは真っ青な顔をして俺の目の前に突っ立っていた。
あれ?と思った俺は自分の腰に回っているその腕をたどり視線を向けると、そこには眉ピと口ピ、おまけに耳にもこれでもか~とピアスのついた筋肉モリモリなベビーフェイスのチャラ度MAXなホストが立っていた。
「ひっ!!ジョウさんすいません。最近、ウチの店売り上げが下がってて…」
目の前にいるボーイは震え上がりながらジョウという男にそう言った。
J「だからって客引きはダメだよ?違法行為だからね?しかも、こんなか弱い彼女のことを強引に引っ張って…こんな綺麗な人が転んで怪我でもしたらどうするの?」
そう言ったジョウという男の甘くてギトギトした嘘くさい言葉に俺はゾゾゾ~と寒気がした。
しかし、そのジョウという男は何を思ったのか、俺の頬にへばりついたウィッグの毛先を耳にかけ、俺はジョウの女慣れしたその行為にキザすぎだろ…と呆れながら慌てて俺の腰に回るその手を振り払った。
すると、ジョウという男は不思議そうに俺の顔を見て首を傾げる。
J「お嬢さん…助けてあげたのにそれは酷いんじゃない?」
お嬢さんって今どきいう奴いるんだ…トレンディ俳優かよ…なんて冷めた目で見つめながら俺はジョウに言った。
T「助けて頂きありがとうございました!失礼します!」
そう言ってその場を立ち去ろうとすると、それを遮るように俺の前にジョウが立ちはだかる。
J「俺、この店でホストしてるんです。一応No.1なんだけど、良かったら今度遊びに来て?」
そう言ってウインクしながら俺の前に名刺を出してくるが、ジョウのそのホスト特有のキザな話し方とチャラさと、嘘くさい笑顔が俺には合わないらしく、全身に鳥肌が立ち寒気がしてゾゾゾ~どころの騒ぎではない。
T「ホストクラブとか興味ないんで大丈夫です。」
そう言って俺が歩き出そうとするとまた、そのジョウという男が目の前を遮り、さすがにこの俺でもイライラし始めた。
T「あの!そこ!どいてもらえますか( *`ω´)!?」
J「とりあえず、これだけ持って帰って。また、俺たちすぐ会えそうな気がする。」
ジョウはそう言って俺のポーチに無理矢理、名刺を突っ込むと、眉ピをピクッと動かして笑顔を見せ俺に手を振り、俺はそんなジョウを無視して歩き出した。
チャラ…
ウザ…
ダサ…
ジョウを見た初めての印象は最悪の三拍子が揃い、珍しく俺はその日イライラしたまま帰宅した。
つづく
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;





素直じゃない人
うりぼう
BL
平社員×会長の孫
社会人同士
年下攻め
ある日突然異動を命じられた昭仁。
異動先は社内でも特に厳しいと言われている会長の孫である千草の補佐。
厳しいだけならまだしも、千草には『男が好き』という噂があり、次の犠牲者の昭仁も好奇の目で見られるようになる。
しかし一緒に働いてみると噂とは違う千草に昭仁は戸惑うばかり。
そんなある日、うっかりあられもない姿を千草に見られてしまった事から二人の関係が始まり……
というMLものです。
えろは少なめ。
お酒に酔って、うっかり幼馴染に告白したら
夏芽玉
BL
タイトルそのまんまのお話です。
テーマは『二行で結合』。三行目からずっとインしてます。
Twitterのお題で『お酒に酔ってうっかり告白しちゃった片想いくんの小説を書いて下さい』と出たので、勢いで書きました。
執着攻め(19大学生)×鈍感受け(20大学生)

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる