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1週間後
「見てみろよ…あの子めちゃくちゃ可愛い…モデルかな?」
「そうだろ?身長も高いし…にしても綺麗な顔してるな?ナンパしちゃおっかな?」
「でも、男持ちじゃん。」
「ちぇ…つまんねぇの。」
そんなヒソヒソとした声を聞いても嬉しくもない俺は、上にあがってくる短いタイトスカートの裾を引っ張り、クルクルとした長いウィッグの毛先を食べながらマスカラたっぷりのまつ毛をパチクリさせてヨタヨタと歩く。
T「ちょ…ちょっとユキトくん歩くの早い!!こっちは慣れない服で歩きにくいんだよ!」
Y「あ、悪りぃ悪りぃ。手でも繋ぐか?」
T「は!?ふざけんな!!」
Y「ガニ股になるとパンツ見えるぞ?」
ユキトくんにそう言われて慌てて俺は内股に戻りヨタヨタと歩く。
結局、俺はあの日からユキトくんとカヲルちゃんに説得され続け、ユキトくんが俺にバイトとして女装し女と偽り、2時間だけ付き合ってくれたら2万やる!という美味しい提案により、金欠な俺はそのバイトを引き受けカヲルちゃんの特殊メイクによりただ今、女の子の姿でユキトくんの横を歩いている。
胸に入れられた大量のパットのズレを直し、歩くたびに上ってくるタイトなミニのスカートを必死でおろす。
カヲルちゃんがいつも俺の隣でおじさんからお姉様になっていく様子を間近で見ていた俺だが、自分の化粧をされた顔を見てなかなか可愛いと思ってしまった自分もいた。
しかし、さすがに男どもが俺に向けるヤラシイ視線には寒気がして吐き気がする。
カヲルちゃんがいつも履いているピンヒールはさすがに歩ける自信がないので、ご丁重にお断りしてローヒールのパンプスを履いたが…日頃、こんな幅の狭い靴を履く事のない俺の足には靴擦れが出来て激痛だ。
T「ねぇ…ユキトくん。まだ?」
Y「もう見えてる。あの店だ。あと…そろそろ手でも繋がないとな。」
ユキトくんはなぜか嬉しそうに頬を上げて振り返り、俺に向かってそう言うから俺は当てつけのようにぶりっ子した顔をして言ってあげた。
T「ユキトくぅ~ん♡早く行くよぉ~♡」
そうして手を繋いで喫茶店の中に入ると、そこには俺の想像していた雰囲気とは違う、大人しそうで真面目そうな女性が座っていた。
ユキトくんは無言のままその女の前に座り、俺のことをエスコートする様に横に座らせる。
それと同時に目の前にいる女はキィッと俺を睨み付け俺はその迫力にゾッとした。
Y「わざわざ時間作ってくれてありがとう。この子が俺の彼女のトモちゃんだよ。だから、もう…俺に付き纏うのはよしてほしい。」
いつもよりさらに感情を読み取れない顔をしているユキトくんはそう言うが、女は俺から目を逸らすことなくジッとただ俺を睨みつけている。
Y「警察なんかに相談して大事にしたくないんだ。分かって欲しい。」
「本当にこの子のことが好きなの?」
Y「あぁ…そうだよ。」
「こんな派手な子がタイプなの?」
派手…確かにカヲルちゃんから借りたこのワンピースは地味とはいえない。
しかし、これでもカヲルちゃんの服の中ではまだ地味な方なのにな~と思いながら前にいる彼女の服装を見ると、なるほどこれでも世間一般では派手なんだな…と俺は妙に納得した。
Y「派手な子がタイプなんじゃなくて…俺はトモが好きなんだ。」
歯の浮くようなセリフをユキトくんが言うといきなり俺の肩を抱いて自分の方に引き寄せた。
俺はされるがままでどうすればいいのか分からず、肩を窄めて黒目をキョロキョロと動かす。
すると、女性の顔は怒りに震えていて、鬼のような顔に俺がギョッとしていると、目の前にある水の入ったグラスを持ち勢いよく俺の顔面にぶっ掛けた。
「最低!私の方が好きだったのに!」
女はそう叫ぶと水の雫が顔から伝い落ちている俺とユキトくんを置いて勢いよく店から飛び出して行った。
ポタ…ポタ…とあご先から落ちる雫を感じながらゆっくりユキトくんの方を見ると、ユキトくんは申し訳なさそうな顔をして笑っている。
T「何で俺がこんな目に…?」
Y「お詫びとして2万5千円にしておくよ。晩飯も奢る。」
ユキトくんはそう言いながら横にあった紙ナフキンで俺の水浸しとなった顔を拭いていて、俺は金と食い物に釣られ、つい出そうになった暴言をグッと飲み込んだ。
つづく
「見てみろよ…あの子めちゃくちゃ可愛い…モデルかな?」
「そうだろ?身長も高いし…にしても綺麗な顔してるな?ナンパしちゃおっかな?」
「でも、男持ちじゃん。」
「ちぇ…つまんねぇの。」
そんなヒソヒソとした声を聞いても嬉しくもない俺は、上にあがってくる短いタイトスカートの裾を引っ張り、クルクルとした長いウィッグの毛先を食べながらマスカラたっぷりのまつ毛をパチクリさせてヨタヨタと歩く。
T「ちょ…ちょっとユキトくん歩くの早い!!こっちは慣れない服で歩きにくいんだよ!」
Y「あ、悪りぃ悪りぃ。手でも繋ぐか?」
T「は!?ふざけんな!!」
Y「ガニ股になるとパンツ見えるぞ?」
ユキトくんにそう言われて慌てて俺は内股に戻りヨタヨタと歩く。
結局、俺はあの日からユキトくんとカヲルちゃんに説得され続け、ユキトくんが俺にバイトとして女装し女と偽り、2時間だけ付き合ってくれたら2万やる!という美味しい提案により、金欠な俺はそのバイトを引き受けカヲルちゃんの特殊メイクによりただ今、女の子の姿でユキトくんの横を歩いている。
胸に入れられた大量のパットのズレを直し、歩くたびに上ってくるタイトなミニのスカートを必死でおろす。
カヲルちゃんがいつも俺の隣でおじさんからお姉様になっていく様子を間近で見ていた俺だが、自分の化粧をされた顔を見てなかなか可愛いと思ってしまった自分もいた。
しかし、さすがに男どもが俺に向けるヤラシイ視線には寒気がして吐き気がする。
カヲルちゃんがいつも履いているピンヒールはさすがに歩ける自信がないので、ご丁重にお断りしてローヒールのパンプスを履いたが…日頃、こんな幅の狭い靴を履く事のない俺の足には靴擦れが出来て激痛だ。
T「ねぇ…ユキトくん。まだ?」
Y「もう見えてる。あの店だ。あと…そろそろ手でも繋がないとな。」
ユキトくんはなぜか嬉しそうに頬を上げて振り返り、俺に向かってそう言うから俺は当てつけのようにぶりっ子した顔をして言ってあげた。
T「ユキトくぅ~ん♡早く行くよぉ~♡」
そうして手を繋いで喫茶店の中に入ると、そこには俺の想像していた雰囲気とは違う、大人しそうで真面目そうな女性が座っていた。
ユキトくんは無言のままその女の前に座り、俺のことをエスコートする様に横に座らせる。
それと同時に目の前にいる女はキィッと俺を睨み付け俺はその迫力にゾッとした。
Y「わざわざ時間作ってくれてありがとう。この子が俺の彼女のトモちゃんだよ。だから、もう…俺に付き纏うのはよしてほしい。」
いつもよりさらに感情を読み取れない顔をしているユキトくんはそう言うが、女は俺から目を逸らすことなくジッとただ俺を睨みつけている。
Y「警察なんかに相談して大事にしたくないんだ。分かって欲しい。」
「本当にこの子のことが好きなの?」
Y「あぁ…そうだよ。」
「こんな派手な子がタイプなの?」
派手…確かにカヲルちゃんから借りたこのワンピースは地味とはいえない。
しかし、これでもカヲルちゃんの服の中ではまだ地味な方なのにな~と思いながら前にいる彼女の服装を見ると、なるほどこれでも世間一般では派手なんだな…と俺は妙に納得した。
Y「派手な子がタイプなんじゃなくて…俺はトモが好きなんだ。」
歯の浮くようなセリフをユキトくんが言うといきなり俺の肩を抱いて自分の方に引き寄せた。
俺はされるがままでどうすればいいのか分からず、肩を窄めて黒目をキョロキョロと動かす。
すると、女性の顔は怒りに震えていて、鬼のような顔に俺がギョッとしていると、目の前にある水の入ったグラスを持ち勢いよく俺の顔面にぶっ掛けた。
「最低!私の方が好きだったのに!」
女はそう叫ぶと水の雫が顔から伝い落ちている俺とユキトくんを置いて勢いよく店から飛び出して行った。
ポタ…ポタ…とあご先から落ちる雫を感じながらゆっくりユキトくんの方を見ると、ユキトくんは申し訳なさそうな顔をして笑っている。
T「何で俺がこんな目に…?」
Y「お詫びとして2万5千円にしておくよ。晩飯も奢る。」
ユキトくんはそう言いながら横にあった紙ナフキンで俺の水浸しとなった顔を拭いていて、俺は金と食い物に釣られ、つい出そうになった暴言をグッと飲み込んだ。
つづく
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