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僕たちの馴れ初め2
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エニシサイド
それからの僕は心にぽっかりと穴が空いたような感覚になり、ヒュウのトーク画面を開いては閉じてを繰り返し、東京でモデルという夢を叶えようとしているヒュウが遠くの存在になってしまったようで、連絡する勇気が僕には出なかった。
ヒュウに会えないだけでこんなに感じる喪失感はなんだろう…
寂しくて苦しくて…
自然と涙が溢れてしまい、ずっとヒュウのことだけを考えてしまう。
得体の知れない自分の気持ちに整理がつかず、もどかしい日が数ヶ月も続いた。
そして、兄貴の卒業式。
兄貴のめでたい日だというのに僕の頭の中は相変わらずヒュウのことばかり。
すると、兄貴がボソッと僕に言った。
「今日…ヒュウ…帰ってくるぞ。」
兄貴のその言葉を聞いて腑抜けていた僕は一瞬でピンっと背筋が伸び兄貴を見つめる。
E「まじ?」
「うん。この前、言えなくて後悔したこと…ちゃんと伝えろよ?じゃなきゃ本当に…後悔することになるぞ?じゃ、お兄様は卒業式に行ってきま…」
僕は兄貴の言葉をそこまで聞くと、卒業式に出席するため玄関に向かおうとしていた兄貴を追い越して玄関を飛び出した。
ヒュウが帰ってきてる…
会いたい…
今すぐ会いたい…
僕…出会った時からヒュウのことが好きだったんだ…
またヒュウに会えるかもしれないと思ったその時、僕は初めてヒュウへの恋心に気づいた。
息を切らし、夢中で走って高校に向かっていると会いたくて仕方なかった後ろ姿を見つけ、僕は呼び止めた。
E「ヒュウ!!」
僕の声が町中に響くとその後ろ姿はゆっくりと足を止め、振り返る。
ずっと見たかったヒュウの顔…
少し痩せていて、前に会った時より大人っぽくなっていて、僕の胸の奥をギュッと締め付ける。
ヒュウは僕を見つけると微笑む事も話しかける事もなく、ただ泣きそうな顔で僕を呆然と見つめていた。
僕は息を整えながらヒュウの元に近づいていく。
近づいて分かったこと。
それはヒュウの瞳に涙が揺らいでいたこと。
E「ヒュウ…会いたかった…」
僕がそう言ってもヒュウは何の反応もせず、目を潤わせている。
E「連絡できなくてごめん…」
僕がそう言うとヒュウは視線を下に落とし、首をゆっくり横に振った。
E「ヒュウがいなくなってはじめて僕…気づいたんだ。僕はヒュウのことが好きなんだって…ヒュウが東京に行く前日に会いに来てくれた時にはまだ、この気持ちが恋だなんて気づいてなかった。でも離れてはじめて気づいた…ヒュウが大好きだったんだって…ごめん…あの時言えなくて…」
ヒュウが東京に行ってからずっと悶々としていた。
自分が感じている好きという感情は友人としてなのかそれとも恋愛としてなのか。
しかし、ヒュウに会えない日が長くなればなるほどヒュウへの思いは募り、僕は気づいたんだ。
これは友人としてではない…僕はヒュウに恋をしてたんだって。
僕の告白を聞いたヒュウは眉毛をハの字にしてついに涙を流しはじめた。
今から華々しい世界に入ろうとしてる人にこんなこと言ってはいけない。
ましてや同じ男の僕にそんなこと言われても迷惑なだけだ。
ヒュウの泣き顔をみた僕の頭の中にはそんな言葉が浮かび、また、後悔に襲われる。
E「ヒュ…ヒュウ…ごめん…泣かせるつもりじゃなくて…その…迷惑だったよね…ごめん…」
相手のことを考える余裕がなく自分の感情を押し付けてしまった僕は本当に幼稚でバカだ。
そう、自己嫌悪に陥っていると涙を流したままのヒュウが顔を上げ、腕を伸ばして僕に抱きついてきた。
E「ヒュウ?」
H「迷惑なわけないよ…嬉しくて泣いてんの。」
E「え…?」
H「僕もエニシのことが好き…大好きだよ。」
そういうとヒュウはチュッと僕の唇にキスをした。
それが僕たちの馴れ初め。
それからヒュウは家族と一緒に東京に引っ越して、東京でモデルとして活躍している。
僕は高校生として本業の勉強を頑張り、連休になるとヒュウの元へと遊びに行った。
高校卒業後、僕は東京の大学に進学し、ヒュウの実家近くのマンションを借りた。
そして、僕は東京で就職をして僕の恋人となったヒュウと今まで仲良く過ごしている。
しかしこれはあくまでも僕目線のお話で…
どうやらヒュウ目線ではまた違ったお話になるらしい。
その話を僕は1000000回くらいヒュウから聞かされてもう、耳にタコどころではなく耳がタコになりそうな勢いだ。
つづく
それからの僕は心にぽっかりと穴が空いたような感覚になり、ヒュウのトーク画面を開いては閉じてを繰り返し、東京でモデルという夢を叶えようとしているヒュウが遠くの存在になってしまったようで、連絡する勇気が僕には出なかった。
ヒュウに会えないだけでこんなに感じる喪失感はなんだろう…
寂しくて苦しくて…
自然と涙が溢れてしまい、ずっとヒュウのことだけを考えてしまう。
得体の知れない自分の気持ちに整理がつかず、もどかしい日が数ヶ月も続いた。
そして、兄貴の卒業式。
兄貴のめでたい日だというのに僕の頭の中は相変わらずヒュウのことばかり。
すると、兄貴がボソッと僕に言った。
「今日…ヒュウ…帰ってくるぞ。」
兄貴のその言葉を聞いて腑抜けていた僕は一瞬でピンっと背筋が伸び兄貴を見つめる。
E「まじ?」
「うん。この前、言えなくて後悔したこと…ちゃんと伝えろよ?じゃなきゃ本当に…後悔することになるぞ?じゃ、お兄様は卒業式に行ってきま…」
僕は兄貴の言葉をそこまで聞くと、卒業式に出席するため玄関に向かおうとしていた兄貴を追い越して玄関を飛び出した。
ヒュウが帰ってきてる…
会いたい…
今すぐ会いたい…
僕…出会った時からヒュウのことが好きだったんだ…
またヒュウに会えるかもしれないと思ったその時、僕は初めてヒュウへの恋心に気づいた。
息を切らし、夢中で走って高校に向かっていると会いたくて仕方なかった後ろ姿を見つけ、僕は呼び止めた。
E「ヒュウ!!」
僕の声が町中に響くとその後ろ姿はゆっくりと足を止め、振り返る。
ずっと見たかったヒュウの顔…
少し痩せていて、前に会った時より大人っぽくなっていて、僕の胸の奥をギュッと締め付ける。
ヒュウは僕を見つけると微笑む事も話しかける事もなく、ただ泣きそうな顔で僕を呆然と見つめていた。
僕は息を整えながらヒュウの元に近づいていく。
近づいて分かったこと。
それはヒュウの瞳に涙が揺らいでいたこと。
E「ヒュウ…会いたかった…」
僕がそう言ってもヒュウは何の反応もせず、目を潤わせている。
E「連絡できなくてごめん…」
僕がそう言うとヒュウは視線を下に落とし、首をゆっくり横に振った。
E「ヒュウがいなくなってはじめて僕…気づいたんだ。僕はヒュウのことが好きなんだって…ヒュウが東京に行く前日に会いに来てくれた時にはまだ、この気持ちが恋だなんて気づいてなかった。でも離れてはじめて気づいた…ヒュウが大好きだったんだって…ごめん…あの時言えなくて…」
ヒュウが東京に行ってからずっと悶々としていた。
自分が感じている好きという感情は友人としてなのかそれとも恋愛としてなのか。
しかし、ヒュウに会えない日が長くなればなるほどヒュウへの思いは募り、僕は気づいたんだ。
これは友人としてではない…僕はヒュウに恋をしてたんだって。
僕の告白を聞いたヒュウは眉毛をハの字にしてついに涙を流しはじめた。
今から華々しい世界に入ろうとしてる人にこんなこと言ってはいけない。
ましてや同じ男の僕にそんなこと言われても迷惑なだけだ。
ヒュウの泣き顔をみた僕の頭の中にはそんな言葉が浮かび、また、後悔に襲われる。
E「ヒュ…ヒュウ…ごめん…泣かせるつもりじゃなくて…その…迷惑だったよね…ごめん…」
相手のことを考える余裕がなく自分の感情を押し付けてしまった僕は本当に幼稚でバカだ。
そう、自己嫌悪に陥っていると涙を流したままのヒュウが顔を上げ、腕を伸ばして僕に抱きついてきた。
E「ヒュウ?」
H「迷惑なわけないよ…嬉しくて泣いてんの。」
E「え…?」
H「僕もエニシのことが好き…大好きだよ。」
そういうとヒュウはチュッと僕の唇にキスをした。
それが僕たちの馴れ初め。
それからヒュウは家族と一緒に東京に引っ越して、東京でモデルとして活躍している。
僕は高校生として本業の勉強を頑張り、連休になるとヒュウの元へと遊びに行った。
高校卒業後、僕は東京の大学に進学し、ヒュウの実家近くのマンションを借りた。
そして、僕は東京で就職をして僕の恋人となったヒュウと今まで仲良く過ごしている。
しかしこれはあくまでも僕目線のお話で…
どうやらヒュウ目線ではまた違ったお話になるらしい。
その話を僕は1000000回くらいヒュウから聞かされてもう、耳にタコどころではなく耳がタコになりそうな勢いだ。
つづく
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