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僕たちの馴れ初め1
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エニシサイド
僕が僕の恋人に出会ったのは思春期真っ只中の高校1年生の時だ。
僕の家に2歳年上の兄貴の友人として今の僕の恋人…ヒュウが遊びに来た。
初めて会った時のヒュウの第一印象は、なんて綺麗な顔をしている人なんだろう…そんな感じだった。
しかし、思春期真っ只中の僕は笑顔で気さくに挨拶をしてくれたヒュウに目も合わせられず、足早に自分の部屋に入ってドキドキと高鳴る心臓を押さえたのを覚えている。
それからヒュウは時々、僕の家に遊びに来るようになった。
いつもなら兄貴が他の友人を連れて来た時はすぐに兄貴の部屋に入っていくのに何故かヒュウが遊びに来た時だけ、兄貴とヒュウはリビングでゲームしたりたわいも無い話をしたりしていた。
人見知りだった僕は兄貴とヒュウがリビングにいたら自分の部屋に行こうとするのだが、何故かいつも兄貴に呼び止められ一緒にゲームさせられたり、兄貴とヒュウが話をしてる横にいらされたりした。
はじめはそれがすごく負担でヒュウと目が合うだけで心臓が止まりそうだったし、話しかけられたりしたもんなら息の根が止まりそうでまともにヒュウと会話なんて出来なかった。
そんな日々が続いて、人見知りだった僕も少しずつヒュウの目を見ることが出来るようになったり、吃りながらでも話ができるようになり、兄貴と一緒に遊ぶために我が家に来たはずのヒュウは兄貴よりも僕と話している時間が長くなっていた。
兄貴はそんな僕たちを遠巻きに見て笑っていた。
兄貴の大学受験が近くなり、予備校に行く日が増え忙しくなった兄貴はヒュウと連む暇がなくなった。
ヒュウと仲良くなり同じ高校とはいえ、一年生と三年生の僕とヒュウ。
兄貴が連れて来なかったらヒュウともう、遊ぶ機会はないのかな…そう思っていた矢先、初めてヒュウは一人で僕の家にやってきた。
E「どうしたの?兄貴まだ予備校だけど…」
H「うん…今日はエニシに話があって来たんだ。」
E「僕に?」
H「うん…少し公園で話さない?」
そうして僕たちは寒くなりはじめた公園で二人並んでブランコに腰掛けた。
H「ごめんね。急に。」
E「ううん。どうした?」
H「うん…実はさ?僕…モデル事務所のオーディションに合格してさ。」
E「へぇ…おめでとう。」
H「うん……」
僕はその時はじめて、ヒュウがモデルを目指していた事を知ったし、何故か合格したはずなのにヒュウの顔は全く嬉しそうではなかった。
E「嬉しくないの?」
H「嬉しいよ…ずっと夢だったから…」
E「そっか…」
H「でも寂しい…卒業前にもう、東京に行かなきゃいけないから……」
ヒュウがそう言った瞬間、僕の思考は停止し頭の中が真っ白になった。
大人ならば、すぐに芸能の仕事といえば都会の東京に行ってするモノだと理解できるはずなのに、まだ子供だった僕は地元から通って出来るものだと思っていたのだ。
沈黙のまま言葉が見つからない僕の代わりにヒュウが口を開いた。
H「もう、エニシにも会えなくなっちゃうけど、学校!頑張るんだぞ?分かったな?じゃ!バイバイ」
ヒュウはそう言って僕の頭をぐしゃぐしゃっと撫で、微かに震える僕がヒュウの顔を見上げるとヒュウの目には微かに涙が滲んでいた。
ヒュウはぎこちない笑顔を見せると、僕に背中を向け歩いて行く。
追いかけなきゃ…呼び止めなきゃ…
頭ではそう思っているのに僕の口からは何も出て来ない。
ヒュウ…やだよ…
もう会えないなんてやだ…
そう思った僕は絞り出すようにして声を出した。
E「ヒュウ!!」
僕の声でヒュウの足が止まり、ゆっくりと振り返る。
E「仲良くなってくれてありがと……」
それが高校1年生の僕が辛うじて言えた最大限の言葉だった。
その言葉にヒュウは軽く頷くとまた、ゆっくりと歩き出し、ヒュウは次の日、東京へと旅立った。
つづく
僕が僕の恋人に出会ったのは思春期真っ只中の高校1年生の時だ。
僕の家に2歳年上の兄貴の友人として今の僕の恋人…ヒュウが遊びに来た。
初めて会った時のヒュウの第一印象は、なんて綺麗な顔をしている人なんだろう…そんな感じだった。
しかし、思春期真っ只中の僕は笑顔で気さくに挨拶をしてくれたヒュウに目も合わせられず、足早に自分の部屋に入ってドキドキと高鳴る心臓を押さえたのを覚えている。
それからヒュウは時々、僕の家に遊びに来るようになった。
いつもなら兄貴が他の友人を連れて来た時はすぐに兄貴の部屋に入っていくのに何故かヒュウが遊びに来た時だけ、兄貴とヒュウはリビングでゲームしたりたわいも無い話をしたりしていた。
人見知りだった僕は兄貴とヒュウがリビングにいたら自分の部屋に行こうとするのだが、何故かいつも兄貴に呼び止められ一緒にゲームさせられたり、兄貴とヒュウが話をしてる横にいらされたりした。
はじめはそれがすごく負担でヒュウと目が合うだけで心臓が止まりそうだったし、話しかけられたりしたもんなら息の根が止まりそうでまともにヒュウと会話なんて出来なかった。
そんな日々が続いて、人見知りだった僕も少しずつヒュウの目を見ることが出来るようになったり、吃りながらでも話ができるようになり、兄貴と一緒に遊ぶために我が家に来たはずのヒュウは兄貴よりも僕と話している時間が長くなっていた。
兄貴はそんな僕たちを遠巻きに見て笑っていた。
兄貴の大学受験が近くなり、予備校に行く日が増え忙しくなった兄貴はヒュウと連む暇がなくなった。
ヒュウと仲良くなり同じ高校とはいえ、一年生と三年生の僕とヒュウ。
兄貴が連れて来なかったらヒュウともう、遊ぶ機会はないのかな…そう思っていた矢先、初めてヒュウは一人で僕の家にやってきた。
E「どうしたの?兄貴まだ予備校だけど…」
H「うん…今日はエニシに話があって来たんだ。」
E「僕に?」
H「うん…少し公園で話さない?」
そうして僕たちは寒くなりはじめた公園で二人並んでブランコに腰掛けた。
H「ごめんね。急に。」
E「ううん。どうした?」
H「うん…実はさ?僕…モデル事務所のオーディションに合格してさ。」
E「へぇ…おめでとう。」
H「うん……」
僕はその時はじめて、ヒュウがモデルを目指していた事を知ったし、何故か合格したはずなのにヒュウの顔は全く嬉しそうではなかった。
E「嬉しくないの?」
H「嬉しいよ…ずっと夢だったから…」
E「そっか…」
H「でも寂しい…卒業前にもう、東京に行かなきゃいけないから……」
ヒュウがそう言った瞬間、僕の思考は停止し頭の中が真っ白になった。
大人ならば、すぐに芸能の仕事といえば都会の東京に行ってするモノだと理解できるはずなのに、まだ子供だった僕は地元から通って出来るものだと思っていたのだ。
沈黙のまま言葉が見つからない僕の代わりにヒュウが口を開いた。
H「もう、エニシにも会えなくなっちゃうけど、学校!頑張るんだぞ?分かったな?じゃ!バイバイ」
ヒュウはそう言って僕の頭をぐしゃぐしゃっと撫で、微かに震える僕がヒュウの顔を見上げるとヒュウの目には微かに涙が滲んでいた。
ヒュウはぎこちない笑顔を見せると、僕に背中を向け歩いて行く。
追いかけなきゃ…呼び止めなきゃ…
頭ではそう思っているのに僕の口からは何も出て来ない。
ヒュウ…やだよ…
もう会えないなんてやだ…
そう思った僕は絞り出すようにして声を出した。
E「ヒュウ!!」
僕の声でヒュウの足が止まり、ゆっくりと振り返る。
E「仲良くなってくれてありがと……」
それが高校1年生の僕が辛うじて言えた最大限の言葉だった。
その言葉にヒュウは軽く頷くとまた、ゆっくりと歩き出し、ヒュウは次の日、東京へと旅立った。
つづく
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