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176話
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アナside
入院してからヒスイは忙しい合間を縫って毎日、病院に来てくれた。
あれから症状は少し落ち着いたが、どうやらそれは一時的なものらしい。
私はあの日からジョウキの名前を出さなくなった。
ジョウキの名前を出してしまったら…
会いたくて…今すぐジョウキに会いに行ってしまいそうだから。
リツはいつの間にか私の付き添い人となり、面会時間中はずっと私のそばにいてくれた。
A「リツ…お手伝いさんが来てくれるからリツはヒスイの秘書してていいんだよ?」
申し訳ない気持ちでいっぱいになった私はリツにそう言った。
「奥様がこちらに来られるまでアナお嬢様のお世話をするようヒスイ様から言われますので。今はこれが私の仕事です。ヒスイ様の秘書は第二秘書がしておりますのでご安心を…」
いつもリツはそう言いながら隣で本を読んでいた。
私は先生の話を聞けば聞くほど不安が募った。
手術の日が近づき、手術日の3日前に父と母は私のために休暇を取りイギリスにまで来てくれた。
A「ごめんね…私のせいで仕事を休ませちゃって…」
母「なに言ってるの…ママこそこっちに来るの遅くなっちゃってごめんね…」
ママはそう言って私の頭を小さい子供のようになでた。
父「ヒスイが選んだ病院だ…何も心配いらんからな…」
「父さん…当たり前だろ?」
A「うん…パパもヒスイもありがとう…」
父は微笑みながら何度も頷き、ヒスイは自慢気に片眉をあげていた。
久しぶりに過ごす家族4人の時間。
私の記憶が戻ってから初めて過ごすこの時間はなんだかくすぐったくて…とても不思議な気持ちになった。
また、こうやって4人で過ごして想い出話ができるよね…?
私の頭の片隅にそんなことがよぎっていた。
時間をみるともう少しで15時になろうとしていた。
A「ちょっと、もう15時じゃん!私はさっき食べたから大丈夫だけどみんなお腹減ったでしょ?私は大丈夫だから食べてきてよ!」
父「私はアナをひとり病室に置いて行くのが辛い…」
父はいつも冗談なのか本気なのか分からないトーンでそう言った。
すると、ぐぅ~っとママのお腹は本当に正直で大きな音を立てた。
A「ママのお腹と背中がくっつく前に早く食べてきて!w」
父「そうだな…ママの身体も大事だからな!すぐもどってくるからな!」
そう言ってパパ達は病室を出て行った。
1人になった部屋はやっぱりさみしい。
リツは今、わざわざこっちに来てくれたユナとゴナを空港にまで迎えに行ってくれていた。
私は何気なくいつもは見ないSNSを久しぶりに開いた。
そして、ある写真をみて驚愕する。
この写真…なんなのよ…
その写真はモデルのチナちゃんのアカウントにあった。
数年前、私のブランドを立ち上げたばかりの時に彼女をモデルとして使ったが、ワガママやドタキャンばかりが続いたので、半年間だけ契約しその後の契約は継続しなかった。
しかし、仕事上の大人の付き合いとしてお互いSNSはフォローしあっていた。
でも…それが…間違いだったのかもしれない。
私が見つけた写真には見覚えのあるクマのキーホルダーとチナちゃんが写っている写真が投稿されていた。
その写真をみただけで心臓がバクバクと早く動き出し…親指がかすかに震える。
そしてよく目を凝らしてみるとそのクマのお腹にはCの文字がみえていた。
これって…まさか…嘘でしょ!?
チナちゃんが付けていたハッシュタグにはイニシャルがJの恋人からプレゼントされたように書かれていた。
そして、他の写真をみて…全てを悟った。
暗闇の中、微かに写っているのは眠っているジョウキの横顔の写真だった。
しかもそれはチナちゃんの膝枕。
そっか…やっぱり私だけだったんだね…
あの時、ジョウキが言ったのは嘘でもなんでもなかった…
私の事を思って嘘を言ってくれたのはきっとユナの方だったんだ…
私が手術受けないって言っちゃったから…ユナは私のために優しい嘘をついたんだね。
そんなことを思うとあの日から泣かずにいた私の目に涙が溢れた。
…泣かなかないようにしてたのな…
…でもね?
なんでよりによってそのクマのキーホルダーを彼女にあげちゃったの…?
彼女にあげるぐらいなら…
捨ててくれた方がよかったよ…
私は枕元に置いてあるJの文字が入ったウサギのキーホルダーを握りしめた。
すると扉をノックする音が聞こえ私は慌てて涙を拭いた。
コンコン
A「は…は~い!」
私の返事のあとに開いた扉からは可愛い天使が私の元へと走ってきた。
G「アミ~!ゴナがきたよ~!!」
ゴナは嬉しそうにベッドにいる私に飛びつき顔をじっと見つめる。
A「…ゴナ…ありがとね!ユナも…」
私が笑顔見せてゴナにそう言うとゴナは悲しそうな目で呟いた。
G「アミ…ないてる…」
ゴナのその言葉で私は固まり、慌ててあたふたとしながら笑顔を見せて元気なそぶりを見せる。
A「え!?違う違う!2人が来てくれて嬉しいからよ~!!」
もうこれ以上2人を不安にさせたくない…私はうまく笑えてるよね。
G「ウソつき…アミのウソつき…!!」
どうやら私は上手く笑えていなかったのか、ゴナは今まで見たことのないような顔を怒っている。
A「ゴナ…ほんとに…大丈夫だから…」
G「いやだぁ!!アミかなしいのにウソつき…!!」
そう言ってゴナは泣きはじめた。
だから…私もつられて…気づいたらゴナみたいに声をあげて泣いていた。
Y「アミ…見ちゃったんだね?」
ユナはそう言って泣きじゃくる私とゴナをそっと抱きしめてくれた。
つづく
入院してからヒスイは忙しい合間を縫って毎日、病院に来てくれた。
あれから症状は少し落ち着いたが、どうやらそれは一時的なものらしい。
私はあの日からジョウキの名前を出さなくなった。
ジョウキの名前を出してしまったら…
会いたくて…今すぐジョウキに会いに行ってしまいそうだから。
リツはいつの間にか私の付き添い人となり、面会時間中はずっと私のそばにいてくれた。
A「リツ…お手伝いさんが来てくれるからリツはヒスイの秘書してていいんだよ?」
申し訳ない気持ちでいっぱいになった私はリツにそう言った。
「奥様がこちらに来られるまでアナお嬢様のお世話をするようヒスイ様から言われますので。今はこれが私の仕事です。ヒスイ様の秘書は第二秘書がしておりますのでご安心を…」
いつもリツはそう言いながら隣で本を読んでいた。
私は先生の話を聞けば聞くほど不安が募った。
手術の日が近づき、手術日の3日前に父と母は私のために休暇を取りイギリスにまで来てくれた。
A「ごめんね…私のせいで仕事を休ませちゃって…」
母「なに言ってるの…ママこそこっちに来るの遅くなっちゃってごめんね…」
ママはそう言って私の頭を小さい子供のようになでた。
父「ヒスイが選んだ病院だ…何も心配いらんからな…」
「父さん…当たり前だろ?」
A「うん…パパもヒスイもありがとう…」
父は微笑みながら何度も頷き、ヒスイは自慢気に片眉をあげていた。
久しぶりに過ごす家族4人の時間。
私の記憶が戻ってから初めて過ごすこの時間はなんだかくすぐったくて…とても不思議な気持ちになった。
また、こうやって4人で過ごして想い出話ができるよね…?
私の頭の片隅にそんなことがよぎっていた。
時間をみるともう少しで15時になろうとしていた。
A「ちょっと、もう15時じゃん!私はさっき食べたから大丈夫だけどみんなお腹減ったでしょ?私は大丈夫だから食べてきてよ!」
父「私はアナをひとり病室に置いて行くのが辛い…」
父はいつも冗談なのか本気なのか分からないトーンでそう言った。
すると、ぐぅ~っとママのお腹は本当に正直で大きな音を立てた。
A「ママのお腹と背中がくっつく前に早く食べてきて!w」
父「そうだな…ママの身体も大事だからな!すぐもどってくるからな!」
そう言ってパパ達は病室を出て行った。
1人になった部屋はやっぱりさみしい。
リツは今、わざわざこっちに来てくれたユナとゴナを空港にまで迎えに行ってくれていた。
私は何気なくいつもは見ないSNSを久しぶりに開いた。
そして、ある写真をみて驚愕する。
この写真…なんなのよ…
その写真はモデルのチナちゃんのアカウントにあった。
数年前、私のブランドを立ち上げたばかりの時に彼女をモデルとして使ったが、ワガママやドタキャンばかりが続いたので、半年間だけ契約しその後の契約は継続しなかった。
しかし、仕事上の大人の付き合いとしてお互いSNSはフォローしあっていた。
でも…それが…間違いだったのかもしれない。
私が見つけた写真には見覚えのあるクマのキーホルダーとチナちゃんが写っている写真が投稿されていた。
その写真をみただけで心臓がバクバクと早く動き出し…親指がかすかに震える。
そしてよく目を凝らしてみるとそのクマのお腹にはCの文字がみえていた。
これって…まさか…嘘でしょ!?
チナちゃんが付けていたハッシュタグにはイニシャルがJの恋人からプレゼントされたように書かれていた。
そして、他の写真をみて…全てを悟った。
暗闇の中、微かに写っているのは眠っているジョウキの横顔の写真だった。
しかもそれはチナちゃんの膝枕。
そっか…やっぱり私だけだったんだね…
あの時、ジョウキが言ったのは嘘でもなんでもなかった…
私の事を思って嘘を言ってくれたのはきっとユナの方だったんだ…
私が手術受けないって言っちゃったから…ユナは私のために優しい嘘をついたんだね。
そんなことを思うとあの日から泣かずにいた私の目に涙が溢れた。
…泣かなかないようにしてたのな…
…でもね?
なんでよりによってそのクマのキーホルダーを彼女にあげちゃったの…?
彼女にあげるぐらいなら…
捨ててくれた方がよかったよ…
私は枕元に置いてあるJの文字が入ったウサギのキーホルダーを握りしめた。
すると扉をノックする音が聞こえ私は慌てて涙を拭いた。
コンコン
A「は…は~い!」
私の返事のあとに開いた扉からは可愛い天使が私の元へと走ってきた。
G「アミ~!ゴナがきたよ~!!」
ゴナは嬉しそうにベッドにいる私に飛びつき顔をじっと見つめる。
A「…ゴナ…ありがとね!ユナも…」
私が笑顔見せてゴナにそう言うとゴナは悲しそうな目で呟いた。
G「アミ…ないてる…」
ゴナのその言葉で私は固まり、慌ててあたふたとしながら笑顔を見せて元気なそぶりを見せる。
A「え!?違う違う!2人が来てくれて嬉しいからよ~!!」
もうこれ以上2人を不安にさせたくない…私はうまく笑えてるよね。
G「ウソつき…アミのウソつき…!!」
どうやら私は上手く笑えていなかったのか、ゴナは今まで見たことのないような顔を怒っている。
A「ゴナ…ほんとに…大丈夫だから…」
G「いやだぁ!!アミかなしいのにウソつき…!!」
そう言ってゴナは泣きはじめた。
だから…私もつられて…気づいたらゴナみたいに声をあげて泣いていた。
Y「アミ…見ちゃったんだね?」
ユナはそう言って泣きじゃくる私とゴナをそっと抱きしめてくれた。
つづく
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