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71話
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アナside
マハロが難しい顔をして部屋を出て行ってからあからさまにユナのテンションが下がっていた。
マハロとはない。なんて強がり言ってるユナだけどマハロにはユナの本当の気持ちが伝わってるといいな。
あの人ならユナの事を理解して寄り添ってくれるような気がする。
私はなんの根拠もなくそんな風に思っていた。
ユナのお兄さんの店に着き、トウヤが慣れた雰囲気でお兄さんと挨拶を交わし奥の個室へ入って行く。
私は肩を落としているユナと一緒にトウヤの背中を追いかけるようについて行くと、個室の入り口でトウヤがいきなり立ち止まり、私はトウヤの背中に思いっきりぶつかった。
A「痛っ!ちょっとトウヤ急に止まんないでよ!」
私がトウヤの後頭部を見上げながら言うがトウヤはピクリとも動かない。
どうしたんだろ?そう考えているとトウヤはゆっくりと動きだした。
T「ハヤセくんおまたせ。ジョウキも一緒だったんだね…?」
トウヤの口からジョウキの名前が出て思わず私の胸がトクンっと跳ね上がる。
トウヤの背中が部屋の奥に進み、視野が広くなるとそこにはハヤセの前に座るジョウキの姿があった。
トウヤはジョウキの横を避けるようにハヤセの横に座った。
A「お…お疲れさま…」
ユナは私の手を引いて部屋に入りユナは迷いなくトウヤの横に座った。
どんなに平然を装ってもユナには私の心がきっとばれているみたいだった。
T「なんでユナが俺の横に座るんだよ。アナの横が良かった。」
トウヤが子どもみたいにそんな事をいうとハヤセとユナに挟まれているトウヤは2人に揶揄われる。
H「アナばっかりじゃなくてたまにはユナで我慢しろ!」
Y「そうだ!今日は私の横で我慢しなさい!私だってねそこそこモテるのよ?ねぇ?アナ?って!おい!ハヤセそれどういう意味よ~!」
ユナとハヤセはまるで漫才のようなやりとりをして笑っているが正直、昨日の出来事が頭に浮かんで横に座るジョウキの顔をまともに見れない私は上手く笑うことができなかった。
A「ユ…ユナは本当美人だからモテるよね~!!あははは…」
私はなんとか顔が引きずりながらも笑う。
T「アナは可愛いよ?」
トウヤの言葉を聞いて私は思わずヒッと息が止まりそうになった。
そしてなぜか隣に座るジョウキの顔色を伺ってしまう。
Y「わぁ~みせつけるね~!」
ユナがトウヤを肘でグイグイ突っつくと…ジョウキがおもむろに口を開いた。
J「俺はアナを見てると意地悪したくなっちゃうかな…?」
H「えぇ?アナに意地悪するの?そんなの俺が許さない!」
ハヤセがふざけて笑いながらジョウキにガンを飛ばす真似をする。
J「俺、昔っから好きな子にはつい、意地悪したくなっちゃうんだよね?」
そう言ってジョウキが私に優しく微笑んだ瞬間…部屋中の空気が凍りついた。
ゆっくりとトウヤの方に視線をやるとトウヤの眉間にはシワが寄ってジョウキをジッと睨んでる。
これは完全に私のせいですよね?
自惚れでもなんでもないですよね?
2人が私のせいで揉めちゃってるんですよね?
あんなに妄想ではジョウキとトウヤに奪い合われた~い!なんて言っていたのに実際その状況になるとただの地獄でしかない。
私はこの沈黙に耐える事が出来ず自ら口を開く。
A「あぁ~お腹すいた!お兄さんの美味しい料理まだかな~!!」
思っていたよりも大きな声が出てしまって自分自身の声にビックリしたがそのまま最後まで言い切った!!
あぁ~直ちにこの場から立ち去りたい~そんな事を思っているとドアをノックする音と同時に癒しの笑顔でお兄さんが料理を運んできた。
「アナちゃんお待たせ!待ちきれないぐらいお腹すいてたんだね?」
お兄様がハニカミながら私たちの前に料理を置いていく。
あぁ…なんだか今はお兄さんが仏のように見えます。
A「あははは~聞こえちゃいました?」
「部屋の外まで響いてたよ。ってか、みんなそんな暗い顔してどうしたの!?そんな顔してたら美味しい料理も不味くなっちゃうよ~ほらご飯は楽しく食べなきゃ!ね?」
そう言ってお兄さんは親指を立てて私にウインクを落として出て行った。
H「アナって…意外に結構モテるよね?」
ハヤセは不思議そうな顔をして私をマジマジと見ながらそう問いかける。
A「意外にってどういう意味よ!失礼だな!」
Y「もぉ~いいから!料理が冷めちゃう前に食べましょう!!ほら、トウヤもいつまでもそんな顔してないの!」
J「唐揚げいただき~!!」
ジョウキは何事もなかったかのようにとても美味しそうに唐揚げを頬張る。
H「アナはダイエットしなきゃだからMV撮影まで唐揚げは食べたらダメだよ~ほらこれ食べなよ~!」
A「私も唐揚げ食べたいよ…」
ハヤセは不敵な笑みを浮かべてそう言いながら私に草…いや、サラダをよそって差し出す。
Y「そう言えばさ?MV撮影の監督って誰がするの?」
ユナがモグモグと唐揚げを頬張りながら言ったが今の私は監督の話よりも唐揚げしか目に入らない。
H「監督は木村イオさんって人だよ?知ってる?」
私はその名前を聞いて思考回路が停止し一瞬、気が遠くなった。
やっとの思いでその名前を忘れかけていたのになぜ今、またあなたの名前を聞くことになってしまったんだろ?
つづく
マハロが難しい顔をして部屋を出て行ってからあからさまにユナのテンションが下がっていた。
マハロとはない。なんて強がり言ってるユナだけどマハロにはユナの本当の気持ちが伝わってるといいな。
あの人ならユナの事を理解して寄り添ってくれるような気がする。
私はなんの根拠もなくそんな風に思っていた。
ユナのお兄さんの店に着き、トウヤが慣れた雰囲気でお兄さんと挨拶を交わし奥の個室へ入って行く。
私は肩を落としているユナと一緒にトウヤの背中を追いかけるようについて行くと、個室の入り口でトウヤがいきなり立ち止まり、私はトウヤの背中に思いっきりぶつかった。
A「痛っ!ちょっとトウヤ急に止まんないでよ!」
私がトウヤの後頭部を見上げながら言うがトウヤはピクリとも動かない。
どうしたんだろ?そう考えているとトウヤはゆっくりと動きだした。
T「ハヤセくんおまたせ。ジョウキも一緒だったんだね…?」
トウヤの口からジョウキの名前が出て思わず私の胸がトクンっと跳ね上がる。
トウヤの背中が部屋の奥に進み、視野が広くなるとそこにはハヤセの前に座るジョウキの姿があった。
トウヤはジョウキの横を避けるようにハヤセの横に座った。
A「お…お疲れさま…」
ユナは私の手を引いて部屋に入りユナは迷いなくトウヤの横に座った。
どんなに平然を装ってもユナには私の心がきっとばれているみたいだった。
T「なんでユナが俺の横に座るんだよ。アナの横が良かった。」
トウヤが子どもみたいにそんな事をいうとハヤセとユナに挟まれているトウヤは2人に揶揄われる。
H「アナばっかりじゃなくてたまにはユナで我慢しろ!」
Y「そうだ!今日は私の横で我慢しなさい!私だってねそこそこモテるのよ?ねぇ?アナ?って!おい!ハヤセそれどういう意味よ~!」
ユナとハヤセはまるで漫才のようなやりとりをして笑っているが正直、昨日の出来事が頭に浮かんで横に座るジョウキの顔をまともに見れない私は上手く笑うことができなかった。
A「ユ…ユナは本当美人だからモテるよね~!!あははは…」
私はなんとか顔が引きずりながらも笑う。
T「アナは可愛いよ?」
トウヤの言葉を聞いて私は思わずヒッと息が止まりそうになった。
そしてなぜか隣に座るジョウキの顔色を伺ってしまう。
Y「わぁ~みせつけるね~!」
ユナがトウヤを肘でグイグイ突っつくと…ジョウキがおもむろに口を開いた。
J「俺はアナを見てると意地悪したくなっちゃうかな…?」
H「えぇ?アナに意地悪するの?そんなの俺が許さない!」
ハヤセがふざけて笑いながらジョウキにガンを飛ばす真似をする。
J「俺、昔っから好きな子にはつい、意地悪したくなっちゃうんだよね?」
そう言ってジョウキが私に優しく微笑んだ瞬間…部屋中の空気が凍りついた。
ゆっくりとトウヤの方に視線をやるとトウヤの眉間にはシワが寄ってジョウキをジッと睨んでる。
これは完全に私のせいですよね?
自惚れでもなんでもないですよね?
2人が私のせいで揉めちゃってるんですよね?
あんなに妄想ではジョウキとトウヤに奪い合われた~い!なんて言っていたのに実際その状況になるとただの地獄でしかない。
私はこの沈黙に耐える事が出来ず自ら口を開く。
A「あぁ~お腹すいた!お兄さんの美味しい料理まだかな~!!」
思っていたよりも大きな声が出てしまって自分自身の声にビックリしたがそのまま最後まで言い切った!!
あぁ~直ちにこの場から立ち去りたい~そんな事を思っているとドアをノックする音と同時に癒しの笑顔でお兄さんが料理を運んできた。
「アナちゃんお待たせ!待ちきれないぐらいお腹すいてたんだね?」
お兄様がハニカミながら私たちの前に料理を置いていく。
あぁ…なんだか今はお兄さんが仏のように見えます。
A「あははは~聞こえちゃいました?」
「部屋の外まで響いてたよ。ってか、みんなそんな暗い顔してどうしたの!?そんな顔してたら美味しい料理も不味くなっちゃうよ~ほらご飯は楽しく食べなきゃ!ね?」
そう言ってお兄さんは親指を立てて私にウインクを落として出て行った。
H「アナって…意外に結構モテるよね?」
ハヤセは不思議そうな顔をして私をマジマジと見ながらそう問いかける。
A「意外にってどういう意味よ!失礼だな!」
Y「もぉ~いいから!料理が冷めちゃう前に食べましょう!!ほら、トウヤもいつまでもそんな顔してないの!」
J「唐揚げいただき~!!」
ジョウキは何事もなかったかのようにとても美味しそうに唐揚げを頬張る。
H「アナはダイエットしなきゃだからMV撮影まで唐揚げは食べたらダメだよ~ほらこれ食べなよ~!」
A「私も唐揚げ食べたいよ…」
ハヤセは不敵な笑みを浮かべてそう言いながら私に草…いや、サラダをよそって差し出す。
Y「そう言えばさ?MV撮影の監督って誰がするの?」
ユナがモグモグと唐揚げを頬張りながら言ったが今の私は監督の話よりも唐揚げしか目に入らない。
H「監督は木村イオさんって人だよ?知ってる?」
私はその名前を聞いて思考回路が停止し一瞬、気が遠くなった。
やっとの思いでその名前を忘れかけていたのになぜ今、またあなたの名前を聞くことになってしまったんだろ?
つづく
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