嘘からはじまった恋

樺純

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メイタサイド

期間限定の不倫愛

サツキさんが俺に本気じゃない事くらい…

ただの遊びだって事くらい…

左手薬指に光る指輪を見つけた時から分かっていたのに、俺の心はサツキさんの言葉に深く傷ついた。

S「私が小豆島にいる間だけ楽しめばいいじゃん?不倫…ごっこ…」

やめてくれ…

その綺麗な唇でそんな事…言わないで…

そう心では叫ぶのにもう、俺はあなたに堕ちてしまった。

M「はぁ…マジで最低な女…」

口とは逆に腕の中にいるサツキさんを離すことなく口付けたのは、限られた時間でも触れていたいから。

1週間後には知らない誰かの元へ帰るあなたをこんなにも欲しいと願ってしまう俺は心が醜く腐ってしまっているのかな?

俺は1週間後

あなたを手放す事ができるのだろうか…?

そして、俺達はそれからの1週間

ひと時も離れずに過ごした。

ある日の俺たちはふたり並んで俺の生まれ育った街を手を繋いで歩いた。

M「ここが俺の通った小学校…」

S「メイタはどんな子供だったの?」

M「うーん。人見知りで暗かったかな?」

S「そっか。」

俺の幼い頃の思い出話をしながら歩く街並みはいつもの見飽きた風景のはずなのに、隣にサツキさんがいるというだけで俺の目には眩しかった。

お気に入りのカメラを持って向かった先はキラキラと太陽に照らされて光る小豆島の海。

S「はぁ~綺麗~」

サツキさんはそう言って目をキラキラと輝かせている。

M「サツキさんそこに立って。」

サツキさんは海を見つめながら風を感じていて、俺はそんなサツキさんをカメラ越しに見つめシャッターを押していく。

S「メイタ~」

少し離れた所で笑いながら風と戯れ振り返るサツキさん。

あまりにも無邪気なその笑顔に俺の胸は離したくないと悲鳴をあげる。

M「空を見上げてみて?」

真っ青な空に高く昇る太陽を指差すとサツキさんは眩しそうに目を細めて太陽を見上げた。

なんて綺麗な人なんだろ…

なんでもっと早く出会えなかったのだろ…

いや、違う…なんで俺は…

あなたと出会ってしまったんだろ?

そうぐるぐると頭の中で色んな感情が渦巻くのに顔では笑顔を作り色んなサツキさんの表情をカメラの中に納めていく。

S「はぁ~東京に帰りたくないな~」

砂浜に座りながらそう呟いたサツキさんに思わず俺はカメラを下ろし、サツキさんを後ろから抱きしめた。

M「帰らないでよ…俺のそばにいてよ…ふたりでここで暮らそう?」

俺の言葉にサツキさんは優しく微笑み振り返って俺の頬を優しく包み込んだ。

S「だ~め。夢を叶えるんでしょ?楽しみにしてるよ?私がメイタのファン第一号だからね?」

俺はそのサツキさん言葉をグッと噛み締めるようにサツキさん綺麗な唇を塞いだ。

そして、ある日はふたりでスーパーに買い物へ出かけ庭でバーベキューをした。

不器用なサツキさんは料理は全く出来なくて、ほとんど俺が焼いてはサツキさんの口の中に肉を放り込んでいく。

S「美味しい~幸せ~」

M「なら、ずっとこっちに住めばいいのに。」

俺がそう言うと決まってサツキさんは俺の口を黙らせるようにキスをして誤魔化す。

M「キスで誤魔化すな。」

S「あと何回…メイタとキス出来るかな?」

この人は俺の気も知らずにそんな事を切ない顔して言うからもう、俺はそれ以上何も言えなくなってしまうんだ。

ただ、ソファに座って一緒に見た映画も…

夢中になって喧嘩しながらしたゲームも…

寄り添いながら聴いた音楽も…

取り合いしながら使った洗面所も…

たった1週間なのに俺の心の中にサツキさんとの思い出が刻まれていく。

そして、俺たちは夜になればお互いの体力が限界になるまで毎晩…身体を激しく重ねた。

お互いの熱気と呼吸で頭がおかしくなってしまうんじゃないかと思うほど、俺はサツキさんのことを夢中で抱いた。

サツキさんは何も口にせず、そんな俺をただ受け入れ、切ない目で俺を見つめるから涙が溢れ出そうになるのを堪えて、サツキさんを抱き続けたんだ。

まるで、俺という存在をサツキさんが忘れないように。

サツキさんの身体が俺を忘れないように……。

行為の後

虚な目をしたサツキさんの乱れた髪を直し、余韻に浸りながら俺は言った。

M「もう…明日だね…」

S「うん…」

サツキさんはシーツを身体に纏い、俺の腕に頭を乗せベッドで寝転んだままふたりで月明かりを見上げた。

M「何時にこっちを出るの?」

S「10時には…」

M「早いね…港まで送るから…」

S「ううん…そういうのやめて…ここで出会った私たちはここでお別れするの…」

サツキさんのその言葉に俺の胸はえぐれ、涙が溢れるのがバレないように俺はサツキさんをギュッと抱き寄せた。

M「サツキさんは…寂しくないの?」

S「幸せだったよ…この1週間ありがとう。沢山愛してくれて…」

俺はサツキさんのその言葉を聞いて涙で声を出すことすら出来ず、無言のままそっと瞳を閉じた。


つづく
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