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30話

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カイルサイド

テオンくんとは付き合い始めてからすごく順調だったと思う。


想いが通じ合ったその日にキスもしたし、手を繋いでデートもしてるし、いつも一緒にいる時は基本くっついているから。


しかし、テオンくんは俺がキス以上のことをしようとするとなにかと誤魔化してはぐらかしていた。


だから、俺もまだ付き合って間もないのに早すぎたかな…なんて反省しながら過ごしていたが今、目の前で我慢させてごめんと謝るテオンくんの顔が胸を締めつける。


K「俺こそごめん…怒ってるんじゃなくて…」

T「するのが怖いんだ…」


テオンくんの口から出た言葉に俺はやってしまったと自身の言葉に後悔した。


K「トラウマ…ですか…?」


俺がそう問いかけるとジワジワとテオンくんの目には涙が溢れ出し、俺は思わず肩を抱き寄せる。


すると、テオンくんは俺の服をギュッと掴みながら言った。


K「みんな…今までの人は…俺を亡くした誰かの代わりや失ったアンドロイドの代わりに抱いてきた……だからカイルに抱かれたら俺は…また何かの代わりに…」


そこまで言いかけたテオンくんの言葉をそれ以上聞きたくなくて俺は遮るように問いかける。


K「俺もそいつらと同じ?」


テオンくんは俺から少し離れてギュッと唇を噛み俺はじっと見つめる。


K「テオンくんにとって俺は今まで付き合ってきたそいつらと同じかって聞いてんの。」

T「違う!違うけど!俺は…子供の時!自分の母親の代わりに義父に抱かれてきたんだよ!!カイルは…!!そんな俺でも抱けるの?普通ならキモいって…汚れてるって…思うだろう!?」


その言葉を聞いた時、なぜテオンくんがいつも少し悲しそうで寂しそうだったのか…分かったような気がした。


K「普通ってなんだよ…思わねぇよ…そんなの…アイツを殺したいとは思ってもテオンくんにそんなこと思うわけないだろ…?好きなんだって…マジで…俺が忘れさせてやるからさ…そんなこと言うなよ…頼むから…」


俺は以前から薄々気付いていた。


テオンくんと義父の関係。


それをあえて口にしなかったのは誰にも触れられたくない傷があると俺は思っていたし、まさかと思っている自分もいたから。


ただ、何かしらの傷は抱えている事を理解していた俺は、自分がそばにいる事でその傷が浅くなり癒してあげられればいいと思っていた。


しかし、もしかしたらテオンくんのなかでそれがしこりとなり、俺との関係への足枷せになっていたのかもしれない。


俺は泣きじゃくるテオンくんに手を伸ばし涙で濡れた頬を撫でる。


K「大丈夫だから…愛されることにそんな怯えないで…本当は誰よりも愛されることを望んでるはずだよ…テオンくんは…」


俺がそう言うとテオンくんは俺の胸に飛び込んできた。


俺はその涙をなだめるように背中を撫でてはトントンと叩く。


俺が幼い頃、母がしてくれたように。


すると、テオンくんは目を真っ赤に染め少し腫れた瞼のまま俺を見上げまると口を尖らす。


T「キスしてぇ…」


俺は言われるままテオンくんの唇にキスを落とすと、テオンくんはそのまま俺の首に手を回し、離れそうになった唇をまた塞ぎ俺の口の中に舌を忍び込ませた。


蕩けるような感触でゾクゾクとする俺はそのままテオンくんの行動に身を任せるようにキスを繰り返す。


テオンくんはそのまま俺の膝の上に跨ると、俺を見下げるように視線を落とし、俺の上に腰を下ろしキスをするたびにその腰をくねらせる。


さすがに我慢の限界がきた俺はテオンくんの腰を掴み動きを止め、キスを止めるとテオンくんは悲しそうに俺を見つめる。


T「ほらやっぱり…義父に抱かれた俺なんて抱けないんじゃん…」


俺の気持ちも知らずに勝手に俺の気持ちを読んだ気になって傷付くテオンくんに俺は大きなため息を落とした。


K「そうじゃなくて。好きな人が怖いって言って泣いてたのに、無理矢理ヤろうヤろうって言って抱けると思いますか?なのにいきなりそっちが誘ってくるなんて…俺のこと試しすぎ。ほら、早く降りて。じゃなきゃ本当に無理矢理しますよ。」


俺がそう言うとテオンくんはシュンとした顔をするから俺の良心が痛む。


少し言い過ぎたかな…なんて思いながら様子を伺っているとテオンくんは悲しそうな顔のまま何も言わず、自分のシャツのボタンを外し始める。


K「え!?ちょ…!は!?何やってんの!?話し聞いてた!?」

T「忘れさせてくれるんでしょ…?」

K「え?」

T「さっき俺に言ったじゃん…俺が忘れさせてやるからって…忘れさせてよ…カイルが俺の嫌な思い出…全部忘れさせて。」


潤んだ瞳でそう言ったテオンくん。


俺はその綺麗な瞳に吸い込まれるようで…


お互い導かれるように唇を塞いだ。


つづく
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