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26話

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テオンサイド


カイルは俺がお願いしたあの日から、何日も何日もパソコンの前に座りっぱなしで、アンドロイドの資料に目を通すとpurple社のシステムをハッキングして全ての情報をリアルタイムでモニタリング出来るようにした。


俺はカイルとの計画のため店を休みたいとソウスケくんに事情を説明すると、ソウスケくんは快く俺に長期の休みをくれ、会社を取り戻せと笑顔で言ってくれた。


祖父にはまだなにも伝えていない。


俺が会社を取り戻すと祖父に話し喜ばせてしまい、もし万が一、失敗してしまったらきっと祖父へのダメージが大きいと考えたから。


だから…会社を取り戻す事が出来たときに伝えよう…そう俺は思った。


俺は家を出たとは言え、会長の血の繋がった唯一の孫。


現社長が退けば必然的に会社は俺のモノになる…はず。


しかし、現社長を退かせるための決定的な証拠が俺には必要で……


purple社のシステムをハッキングし、一部の事情を知ったカイルは必死になってこの数日間その証拠を探している。


T「カイル…何か見つかりそう?」


想いが通じ合ったあの日からカイルの家でpurple社の動きや情報を探すために、毎日の殆どの時間をカイルの家で過ごすようになっていた俺は、目を充血させながらパソコンに向かうカイルにそう問いかけた。


K「見つかるもなにも……これが表沙汰になったら社長が退く云々の前に…会社が倒産するんじゃないですか?おまけに現社長は脱税疑惑と裏金疑惑までありますけど…」


そう言ってカイルが俺に見せたのは国が定めた法律に違反したアンドロイドを製作した証拠がズラッとまとめられてある一覧と脱税疑惑と裏金の証拠だった。


それに目を通したカイルはやっぱりおかしいと思ったんです…と呟き話し出した。


K「実は…ジノくんのアンドロイドはユアさんにそっくりで、重大なシステムの欠陥が見つかったとして回収になったんです。どうやらそれも俺のアンドロイドも全てこのpurple社に仕組まれていた罠にハマったって事ですね……」

T「罠…?」


俺はカイルの手から資料を受け取り一覧に目を通す。


アンドロイド生産において国で定められた法律はいくつかある。


1つ目は現実に存在する人間をモデルとしたアンドロイドを製作しない事。

2つ目はアンドロイド製作希望者の脳波を操作する機能をアンドロイドに搭載しない事。

3つ目はアンドロイドに感情を芽生えさせるような機能を搭載しない事。


この3つが基本的にアンドロイドを製作する上で国に決められている法律だ。


おそらく、カイルはアンドロイド製作時に容姿の希望を出さなかった事により統計上、依存性が強い俺に似たアンドロイドを与えられ、アンドロイドの魅力に気づき依存しはじめた頃を見計らい脳波をアンドロイドによって操作され依存しきったタイミングでpurple社は重大な欠陥と偽り、突如アンドロイドを回収する事によってさらに高級なアンドロイドをカイルに購入させようとした会社の企みだろう。


実際、カイルの家にはpurple社から大量の高級アンドロイドの勧誘DMが届いていた。


カイルは運良く新たな高級モデルのアンドロイドを購入することはなかったが、アンドロイドを回収された人の多くは違った。


あの社長の思惑通り最初に購入したアンドロイドよりも遥かに高級なアンドロイドを購入し、カスタムしている事がパソコンのグラフでも表れていた。


ジノくんに関してはジノくんもカイルと同様、見た目の希望を出していないのにも関わらず、俺に似たアンドロイドをpurple社から渡されていなかった。


ジノくんの手元にいたアンドロイドはユアちゃんに似ていて、これは単純なミスなのだろうかと俺がその証拠となる資料を見ていると………


T「これでか…」


ジノくんの名前が書かれてあったのはアンケート記入時に特殊なセンサーにより脳波を読み取り、アンケートよりも遥かに正確なアンドロイドを製作し、購入したアンドロイドから常に脳波を操作される電磁波が飛んでるとても危険なアンドロイドだった。


脳波を読み取るということは自分でも気づかない潜在意識の中で求めているものを勝手に作り上げ与えるという事になる。

おまけにアンドロイドが脳波を操作できるとなれば、購入者が他の人間に好意を抱けばアンドロイド自ら購入者の脳波を操作し、その好意をアンドロイドに向けられたものだと変換することが可能となってしまうのだ。

この世の中にそんなアンドロイドが普及してしまえば人間たちはアンドロイドとの恋愛で満足してしまい、人間同士が恋愛に落ちる事がなくなってしまう。


それにより国は脳波を使ったアンドロイド製作は法律違反としていたのにpurple社では極秘でもう既にその製作を始めていたのだ。


脳波を使ったモデルを配布した一覧の中にジノくんの名前を見つけたカイルは唖然とする。


ジノくんがアンドロイドを取り上げられたのは間違いなくジノくんの脳波を読み取り忠実にアンドロイドを製作したが、そのアンドロイドに似た人間がこの世に実在すると言う事をまだ、出来たばかりのこのシステムが認識出来なかったからだろう。


アンドロイド事業によって表は大きなビルになった割には組織内はスカスカで今にも崩れ落ちそうな危険な組織となっていた。


K「テオンくん…どうする…?」


カイルと祖父の秘書と3人で練った計画では、purple社現社長の不正疑惑を知り合いの記者に暴露するつもりだったが、それどころじゃ済まない会社の悪質すぎる中身に、その計画は会社ごと危険に晒してしまうと俺は思った。


じいちゃんが汗水垂らして作った会社をあいつの悪事のせいで潰すわけにはいかない…そう思った俺はカイルに言った。


T「カイルこれ全部…USBにコピー出来る?」

K「もちろん。」

T「計画を変更する…記者に言ってあいつの事を表沙汰にしようと思ったけどそれじゃ会社ごとダメになってしまう…だから俺が直接…社長と話して決着をつけてくる。」


俺がそう言って立ち上がるとカイルが俺の手を掴み、秘書は慌てて俺たちに背中を向ける。


K「1人で…大丈夫ですか?」


大丈夫じゃない…本当は怖くて不安でいっぱいだ。


だけど、俺が行かないと誰かを助ける為に祖父が必死になって作ってきた事業で誰かを苦しめる事になってしまう。


T「大丈夫…俺は大丈夫…」


俺がそう言うと、カイルは義父と俺の関係を何か察しているのか苦しそうな笑みを浮かべながら言った。


K「俺が大丈夫そうにない…下で待ってるから…一緒に会社まで行ってもいい?」


そう言ったカイルの手は微かに震えていて、俺はその手をギュッと強くにぎる。


T「いいよ。」


俺がそう言うとカイルは俺のことをギュッと抱きしめ、背中を向けているとはいえ秘書がいるというのに俺の唇にチュウとキスを落とし…


俺たちは証拠を手にしてpurple社へと向かった。


つづく
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