上 下
23 / 32

23話

しおりを挟む
カイルサイド


ずっと考えていた。


テオンくんがあまりにも悲しそうな顔をして俺を見つめたあの日から。


俺はオンを失った自分の寂しさをそっくりな顔したテオンくんで埋めようとしたのだろうか…?


この好きって気持ちも本当はオンに向けられたものであって…


テオンくんに向けられたものではないのだろうか…?と…


あんなに毎日通っていたテオンくんの店に行かず。


自分の気持ちとだけ向き合い、テオンくんとオンのことだけを考え自問自答し続けた。


玄関に飾る一緒に撮ったオンとの唯一の写真を見て溢れ出す罪悪感に包まれた俺は確信した。


K「オン…ごめんな…俺……あの人のことが好きなんだ…許してくれる?」


そう写真に話しかけると写真の中にいるオンがニコッと笑い頷いたような気がした。


そして、テオンくんの店に向かおうとした瞬間…俺は目の前が真っ暗になりグラグラと頭の中が回転してその場にしゃがみ込んだ。


ここ数日、まともな食事もせず考え込んでいたせいだろうか?


立ち上がろうとしても体が重く立ち上がることができず、俺は這うようにして部屋に戻りなんとかスマホを手に取り苦笑いをする。


K「俺…テオンくんの連絡先知らないじゃん。」


俺は仕方なくジノくんに連絡をしそのまま熱くなっていく身体をベッドに沈めた。


久しぶりに眠りについた俺は体が燃えるように熱くて苦しくてもがきながら夢の中を彷徨った。


「カイル…だ…大丈夫…?」


その声を聞いて俺の苦しみはすーっと消えていき、ゆっくりと瞳を開けるとそこには会いたくて仕方なかったテオンくんがゆらゆらと瞳を揺らしながら俺を見つめていた。


これは夢なのかな?それとも幻覚?


テオンくんのその顔が…愛しくて仕方ない。


オンの代わりに愛してしまったのかもしれないと思いながらも、俺はいつもテオンくんの心の中を覗こうと必死だった。


色んな表情を見せてくれるテオンくんが愛しくて…


ありのまま感情をぶつけてくれるテオンくんが大好きで…


思い通りの反応をしてくれないテオンくんがもどかしくて…


俺はテオンくんと出会ってからいつもテオンくんに夢中だった。


ゆっくりと手を伸ばしずっと触れたくて仕方なかったその頬に触れると温かくて、肌の上の産毛を感じ俺は心地よくて何度も撫でる。


驚いた顔をして俺を見つめるテオンくんは今…俺を思ってくれているだろうか?


そんな事を思いながら俺は口を開く


K「会いたかった…やっぱり…無理だった…忘れるなんて…無理だった……」


テオンくんを忘れるなんて初めから無理だって分かっていた。


出会った時から…


知れば知るほど惹かれて愛しくて…


俺の心の中にいたはずのオンよりもテオンという存在で埋め尽くされていた。


なのにテオンくんは俺から顔を背ける。


テオンくんの心の中にはまだ俺はいない?


立ち上がり俺の元から離れて行こうとするテオンくんの細い手首を掴んで引っ張り、その衝撃でテオンくんは俺の身体の上に倒れ込む。


テオンくんの身体はこんなにも温かくて柔らかくて心地いい…


しかし、俺の腕の中にいるテオンくんは俺の胸を叩き暴れて、思い通りにはならず俺から離れようとする。


T「離せよ…離せって…!!」

K「会いたかった…ずっと会いたかった…」

T「離せってば!!」

K「テオンくんにずっと会いたかった…やっぱ俺…テオンくんが忘れられないよ…俺あなたが好きみたい…」


テオンくんは俺の言葉を聞いて固まった。


K「テオンくんが誰かの代わりは嫌だって言ったあの日からずっと…考えてた…。俺はオンの代わりにテオンくんを愛してしまったのか…って…でも違うんだよ…オンとテオンくんは顔は似てるけど違う…今の俺が愛してるのは…俺の言うことをなんでも聞くオンじゃなく…いつも俺の思い通りにはなってくれないテオンくん…あなただよ……」


俺はそう言うとテオンくんの首筋に顔を埋めるようにしてギュッと抱きしめる。


もう、離したくない…離れたくないと心の中で何度も呟きながら。


すると、ぽた…ぽた…っと俺の肩が濡れるのに気付きゆっくりと顔を覗き込むとテオンくんはぽろぽろと涙を流し微かに震えていた。


そんなに俺のことが嫌い?


アンドロイドを手にしてしまった俺にはテオンくんを愛する資格なんてない?


そう無言のまま瞳でテオンくんに問いかけているとテオンくんはゆっくりと両手で俺の頬を包み込みそっと重なるだけのキスをした。


突然のことで驚いた俺はビクッと体が跳ねる…


しかし、このチャンスを逃せば一生後悔すると思った俺はそのままテオンくんの後頭部に手を回し引き寄せ、重なっただけの唇を啄むように重ね返す。


唇を重ねるたびに温かくて心地よくてその唇に夢中になり俺の手がすーっとテオンくんのシャツの下に伸びると…

俺たちの邪魔をする声が聞こえた。


つづく
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

当たって砕けていたら彼氏ができました

ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。 学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。 教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。 諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。 寺田絋 自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子 × 三倉莉緒 クールイケメン男子と思われているただの陰キャ そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。 お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。 お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。

公爵様のプロポーズが何で俺?!

雪那 由多
BL
近衛隊隊長のバスクアル・フォン・ベルトランにバラを差し出されて結婚前提のプロポーズされた俺フラン・フライレですが、何で初対面でプロポーズされなくてはいけないのか誰か是非教えてください! 話しを聞かないベルトラン公爵閣下と天涯孤独のフランによる回避不可のプロポーズを生暖かく距離を取って見守る職場の人達を巻き込みながら 「公爵なら公爵らしく妻を娶って子作りに励みなさい!」 「そんな物他所で産ませて連れてくる!  子作りが義務なら俺は愛しい妻を手に入れるんだ!」 「あんたどれだけ自分勝手なんだ!!!」 恋愛初心者で何とも低次元な主張をする公爵様に振りまわされるフランだが付き合えばそれなりに楽しいしそのうち意識もする……のだろうか?

おねしょ癖のせいで恋人のお泊まりを避け続けて不信感持たれて喧嘩しちゃう話

こじらせた処女
BL
 網谷凛(あみやりん)には付き合って半年の恋人がいるにもかかわらず、一度もお泊まりをしたことがない。それは彼自身の悩み、おねしょをしてしまうことだった。  ある日の会社帰り、急な大雨で網谷の乗る電車が止まり、帰れなくなってしまう。どうしようかと悩んでいたところに、彼氏である市川由希(いちかわゆき)に鉢合わせる。泊まって行くことを強く勧められてしまい…?

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

処理中です...