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21話

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テオンサイド


全て忘れようした。


なのに毎日、店に来ては俺の顔をキラキラした目で見つめる彼にどんどん惹かれてしまう。


そんな目で見るな…


俺に構うな…


頼むから俺に話しかけないでくれ…


どうせお前だって思い通りになるアンドロイドと俺が違うと分かったら俺から離れていくくせに…


今のお前にとっての俺は失ったアンドロイドの代わりなんだろ?


心の中でそう壁を作っていてもカイルは毎日店に来て俺に話しかけてどんどん俺の心の中に入ってきた。


気付けば俺の方がカイルの見せるその優しい笑顔に夢中で…


ダメ…


これ以上はダメなんだと思えば思うほど俺はカイルを好きになっていった。


あれだけ冷たい態度を取り壁を作っておいて俺は一体何してんだろ…?


そんな事を思いながらため息を落とす毎日。


そんな日々を過ごしていた俺はふと思う。


T「あ…そうか…明日定休日だ…カイル…知ってんのかな…?」


いつもは交代で休みを取っている為、店を閉める事はないが数ヶ月に一度、全員が休み店を閉める定休日を作っている。


もし、店に来て誰もいなかったらさすがに可哀想だな…そう思った俺は買い物のついでに店に顔を出すとなんともまぁ偶然、恐怖のGと遭遇してしまった。


虫が大っ嫌いな俺はあわあわして今にも泣き出しそうになりもう、パニック。


すると、いつも通りの時間にやって来たカイルの腕に…気付けば…俺はしがみ付いて…


カイルの腕は物凄く逞しくて何故か俺の胸の奥がギュッと苦しくなった。


ねぇ…カイル…


お前は本当に俺が好き?


アンドロイドの代わりじゃなくて俺のことが好きなの?


俺は…カイルのこと信じてもいい?


そう思った俺は不器用ながらもカイルを誘った。


なのにカイルは鈍感なのか、ただのバカなのか、俺のお誘いに気づくことなく帰ろうとするんだ。


強引に連れ出し、いつのまにか繋がれた手に久しぶりの人肌を感じ、俺はまたカイルが大切に思っているのであろうあのアンドロイドに嫉妬する。


T「俺ってそんなにアンドロイドと似てる?」

K「それはもうめっちゃ………」


アンドロイドの話題が出ただけでキラキラと目を輝かせるカイルの瞳を見て思う。


俺のあだ名もオンだよって…


キミが子供の頃、幼さからテオンくんと呼ぶことが出来なくて俺をオンくんって呼んでたんだよって…


T「そのオンっていうアンドロイドのこと本当に好きだったんだね……」

K「今のはそういう事じゃなくて…今度…ゆっくりとその話したい……」

T「あのさ…もしアンドロイドを失ったその寂しさで出来た心の隙間を俺で埋めようと思ってるなら…もう2度と店には来ないで。」


俺はこの言葉でカイルの気持ちを試したのかもしれない。


本当に俺が好きなのか…


それともアンドロイドの代わりだと思っているのか…


俺のその言葉を聞いたカイルは顔色を変えてそのまま逃げるように俺を置いて帰って行った。


そして、毎日来ていたはずのカイルはその日を境にして俺の店に来ることはなくなった。


それがカイルの出した答えなんだと思う。


やっぱりな…そう思う反面、俺はお客さんが来るたびにカイルが来たのかもと思っては、慌てて入り口を見ては肩を落とす。


俺がどんなに待っても、カイルはあの日から俺の前に姿を見せなくなった。


T「やっぱり俺は…アンドロイドの代わりだったんだな…」


俺は営業後の薄暗い店内でそうひとり呟く。


寂しい…苦しい…つらい…


誰かの代わり…


アンドロイドの代わりは何度経験しても虚しさが襲い涙が止まらなかったのと同時に…


いつの間にか自分がこんなにもカイルのことを好きになっていたんだと気付かされた。

俺が店の戸締りをして家に帰ろうと歩いていると、俺はコンビニから飛び出してきた人とぶつかり尻餅をつくようにして転んだ。


T「痛ッ…」

「あっごめん…大丈夫?あれ…もしかして…」


その人は俺に見覚えがあるのか少し驚いたような声を出す。


俺も顔を上げてその人を見るとどこかその顔に見覚えがあり、記憶の中を辿っていくとカイルと一緒に俺の店へ来た人だった。


T「もしかして…カイルと一緒にウチの店に来てくれた…?」

J「そうそう、覚えてくれてたんだね?ジノだよ。実はカイル、今、大変でさ?」


そうジノさんの口から出た言葉に俺は驚き慌てて立ち上がった。


カイルに一体何があったのか?


なぜカイルが今、大変な思いをしているのか?


俺は動悸がするほど心配になり、微かに恐怖すら覚える俺はもう、カイルへの想いを自分で認めるしかなかった。


T「カイル…なんかあったんですか…?…ここ数日ウチに来てなくて…」

J「うん…知恵熱を出して寝込んじゃってね?面倒見てくれるアンドロイドもいないから俺がお見舞いに行くところなんだ。」


ジノさんはそう言ってコンビニの袋をニコッと笑いながら俺に見せた。


知恵熱か…


ジノさんの様子からカイルはそんなに重病ではないと分かり俺は少し安心した。


すると、黙って考え込んでいる俺の顔を覗き込むようにジノさんが言った。


J「確かテオンくんだっけ?」

T「あ…はい…」

J「テオンくんも一緒にお見舞い行かない?あいつ喜ぶよ?」


ジノさんにそう言われてドキッとする反面、カイルは俺よりもアンドロイドを大切に思っているから俺の元に来なくなったのに、どんな顔して会えばいいのか分からず俺は下を向く。


T「どうだろ…もう俺のこと飽きたから店に来ないのに……」

J「そんな訳ないよ。さぁ、行くよ。」


なのにジノさんはカイルからなにも聞いていないのか、少し強引に俺の腕を掴み横に止めてあったバイクまで連れて行って、俺にヘルメットをかぶせた。


そして、バイクにまたがるとジノさんは俺に後ろに乗るよう親指で背中を指す。


俺はそんなジノさんを断りきれず…


というのはきっと言い訳で、本当は体調を悪くしているカイルが心配で、遠慮気味にジノさんの肩に手を置いてバイクにまがると、ジノさんは俺の両腕を掴み前に引っ張った。


J「落ちたらカイルに俺がドヤされるからちゃんと掴まってね?あと、俺のことジノて呼んでいいよ~!」


そんな陽気な声とは裏腹にジノくんはバイクのアクセルをブンブンと吹かし、颯爽とバイクを走らせ俺は思わず、ギュッと身体を縮こまらせてジノくんにしがみ付いた。

つづく
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