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15話

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カイルサイド


オンと同じ顔をしたあの人…


あの人はなぜ…


あの屋上で死のうとしていたのだろう…


そんなことを思うと俺の胸の奥はザクッと痛み身を縮こめながらまた、街を彷徨う。


人間の心とは薄情なものであんなにもオンのことで悲しんでいたはずの俺の心は今…


名前も知らないオンにそっくりなあの人のことでいっぱいとなり頭から離れない。


既にあの人に会いたいとすら思ってしまう俺を見てオンはなんて言うかな…?


ひとり寂しく歩いているとタイミングが良いのか悪いのか…ジノくんから連絡があった。


ちょうどよかった。


それが本音かもしれない。


今は浴びるように酒を飲みたかったから。


ジノくんの家の近くにあるフライドチキン屋に初めて行った俺は着くなり空きっ腹にビールを胃袋に流し込む。


J「カイル…大丈夫?」

K「大丈夫…な訳ないじゃないですか…もう俺どうしたらいいんだろ…」


そう言いながら俺はまた、ビールを飲む。


そして、俺は涙ながらにジノくんについさっき起きた全ての事を話し、話し終える頃には酔いが回ってベロベロに酔っ払っていた。


J「で?お前はどうしたいわけ?オンを忘れられないから泣いてるのか…出会ってしまったその人がもう恋しくて泣いてるのか…一体どっちなの?お前の話聞いてもさっぱり分からん。」


俺の話をアテに酒を楽しむジノくんはそう言って追加で頼んだチキンを店員に急かす。


K「俺も分かんないんですよ……でも……これだけは分かる…あの人とオンは…めちゃくちゃ似てるのに全く違うってこと…」


俺は酔いが回ってきたのか視線が定まらず、前にいるジノくんではなくテーブルに置いてあるビール瓶を見て会話をする。


J「あ…あのさ…?そ…その人って顔はオンにそっくりなんだよな…?」

K「そうなんですよ…本当に顔はそっくりで…」

J「もしかして黒髪だったり?」

K「そうなんですよ…ツヤツヤの黒髪で…」

J「身長はお前と同じくらいで骨格はしっかりとしてるのに痩せ型?」

K「そうなんです…おまけにお尻が…」

J「プリッとしてる?」


ジノくんの言葉で俺が顔をあげると目の前に見覚えのある手が現れた。


「お待たせしました。スパイシーチキンです。」


その声を聞いて一瞬で俺の酔いが冷めていった。


気がつけば見覚えのあるブレスレットが付いた手首を俺はギュッと掴んでいて、顔をあげるとそこにはオンにそっくりなあの人がいた。


K「俺に気づいてました…よね…?」


そう言いながらじっと見つめると俺から視線をそらし横を向いてチキンを出していた。


もう…あなたは俺となんて会いたくなかったのかな…?


そう思いながらそっとその手首を解放するとあの人は頭を軽く下げてキッチンのほうへと戻って行った。


J「あれは…似てるわ…」

K「でしょ…?でも違うんですよ…アンドロイドのオンとは…」

J「そう…だろな…だってめちゃくちゃ人間じゃん……」


俺はそれから一生懸命に働く名前も知らないオンにそっくりなあの人を見つめながらテーブルにあるチキンを食べた。


そして、誰もいなくなった店内。


キッチンの中でチラチラと俺たちのテーブルを見ながら洗い物をするオンにそっくりなあの人。


俺はそんなあの人をじーっと見つめる。


「お客さん…閉店時間ですので…」


すると、とんでもなくデカい大男が優しい笑顔で俺たちのテーブルにそう告げにきた。


しかしその目を見て俺はすぐに分かる…その目の奥が笑っていたないことに。


J「あ、じゃ会計お願いします。」

「ありがとうございます。」


先に立ち上がりレジに向かったジノくんと大男。


俺はその隙を見計らい洗い物をしているあの人のもとに駆け寄る。


K「あの……」

「…………」


目の前で呼びかけているのにあの人は俺の呼びかけに反応することなく洗い物を続けている。


K「…あの……あの!!」

「もうなに…聞こえてるよ。用があるなら勝手に言えば良いじゃん。」


目を合わせる事なくそう告げられる俺。


K「名前教え……」


そう言いかけてチラッとエプロンを見るとそこには「テオン」と書いてあり俺は名前を知ることができた。


K「テオンさん…俺と連絡先交換して。」


俺のその言葉と同時にグラスの割れる音が聞こえ、慌てた俺が厨房を覗こうとするとテオンさんは顔を上げ俺をじっと見つめる。


K「テオンさん!?怪我してない!?テオンさん!?」

T「し…してないから…」

「お客さんもう店閉めるから…」

J「カイル、いい加減にしろよ。」


テオンさんが本当に怪我をしてないか心配でその場を離れられずにいると、店の入り口からそう言われ、俺は諦め掛けたが注文を書き取る紙とペンがカウンターの上にあるのを見つけ、俺は慌ててそこに自分の連絡先を書き留めた。


K「俺の連絡先ここに書いてるから。テオンさん…絶対に連絡して。」


俺の言葉にチラッとその紙を見たテオンさんに軽く手を振ると、俺は入り口で待つジノくんの元へと向かた。


そして、家に帰ってからずっと俺はテオンさんからの連絡を待ち続けた。


がしかし…


テオンさんから連絡が来る事はなかった。


つづく
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