【BL】キミと交わした桜色の約束

樺純

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14話

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テオンサイド


俺は買い物に行った先のスーパーで俺と同じ顔をしたアンドロイドを見つけ、この現実世界には俺と同じ顔をしたアンドロイドが義父さん以外にも所有している人間がいるという事実を知ってしまった。


そして、もしかしてと思った俺は今までの元カレ達に電話をした。


その元カレ達を問いただせば、その元カレ達も過去に俺と同じ顔をしたアンドロイドを所有していた事実が分かり、怒り狂った俺は悩み考え抜いた結果、俺の人生をぼろぼろにした義父さん…いや、purple社の社長に会いに行ったのだ。


社長室の中には黒目を右往左往させる義父さんがいる。


もう、俺に似たアンドロイドで満足しているのか…


それとも大人になった俺に真実を暴露されることを恐れているのか…


あの頃、俺に向けていたヤラシイ目つきは消えていた。


T「義父さん…自分のそばに俺そっくりなアンドロイドを置くだけじゃ我慢出来なくなっちゃった?なんで俺そっくりなアンドロイドを売るの?法律で決まってるよね?実在する人間はアンドロイドにしてはいけないって。」


俺がそう言うと義父さんの目は一瞬にしてあの日、初めて俺を犯した時の目になり思わず俺は手が震える。


でも…もう…


こんなことは終わらせてほしい。


そう思った俺は初めて義父さんを睨んだ。


すると、義父さんはニヤッと笑った。


「実際はクーリングオフ期間に回収しているから料金も発生してない。だからこれはなんの法律違反にもならないんだよ?」


そう言われた俺は思わず体が強張った。


T「何のためにそんな無意味なこと…」

「金になるんだよ。お前は本当に金になる。」


そう言って俺を馬鹿にするように笑いながら俺の頬を撫で、義父は話し出した。


俺の顔をしたアンドロイドを容姿希望のない相手に販売し、クーリングオフ期間内で回収するとその購入主はアンドロイドに依存し、突然失った悲しみから禁断症状のような孤独や虚しさを覚え耐えられずまた、アンドロイドを購入しにくると。


そして、今までの研究結果により俺の容姿を手に入れた購入主が1番の依存率が高く、その購入主は必ず前回の俺の顔をしたアンドロイドよりもさらに性能がよく、自分オリジナルのカスタムを希望するため高額なアンドロイドが売れるようになると義父は高笑いしながら話していた。


それを聞いた俺は全てを悟る。


今まで俺と出会い俺を口説いてきた元カレ達も俺と同じ顔をしたアンドロイドを過去に所有した経験があった。


しかし、彼らには性能の高いアンドロイドを購入する財力がなく、たまたま街で見かけたアンドロイドと同じ顔をした俺を見つけアンドロイドの代わりにそばに置こうとしただけだったんだと。


俺はその義父の汚い手を振り払うがギュッと手首を義父に掴まれた。


「俺以外の男達にも犯されて可哀想に…今はどこで誰にお前そっくりなアンドロイドは犯されてるんだろな。」

T「国に報告してやる。」

「勝手にしろ…お前の恥がバレるだけだろ。」

T「俺の恥がバレるってことはあんたの恥もバレるってことだけどな!!」

「そんなモノは金でなんとでもなるんだよ?大人になってもそんな事がまだ分からないのか?」


義父がそう言うと俺の手首を解放しニコッと笑い、俺はゾッと背筋を凍らせ社長室を飛び出した。


無理だった…


俺はあの男からの呪いに解き放たれることはないんだと思い知らされた。


もういいや…もういいよね…


母さんに会いたい…父さんに会ってみたい…


そう思った俺は夜道を彷徨うように歩いた。


いつの間にか迷い込んでしまった裏路地に初めて見た廃棄をみつけ見上げる。


ここから飛び降りたら…


母さんと父さんのとこに行けるのかな…


そう思いながら階段を登り屋上の扉を開くと、なんとそこには先客がいて俺は目を疑った。


ダメ…キミがそこから飛び降りたら…


俺が死ねなくなっちゃう。


そう思った俺は必死で駆け寄り、後ろからカバっと彼を抱きしめるようにして掴み飛び降りれないようにした。


T「ちょっと!!ストーップ!!!!」


体格のわりに細いウエストは俺の腕がぐるりと回ってしまうほどの細さで俺は色んな意味で驚いた。


「ちょ、ちょっと離してください!!」

T「離すわけないじゃん!!今、キミここから飛び降りようとしたよね!?絶対にそんな事させないから!!」

「はぁ!?俺が死のうが生きろうがあなたには関係ないでしょ!?」


俺が一生懸命止めているというのにこの男は勝手に俺の許しもなくここから飛び降りようとするからもう俺も必死。


T「あるよ!!キミがここで飛び降りたら俺がここで死ねなくなっちゃうじゃんか!!?」


俺がそう叫ぶとこの男はまさか、自分を助けるためだけに俺がここまで来たとでも思っていたのか動きをぴたっと止めて言った。


T「あなたも…死にたいんですか?」


そりゃそう…ってかその為にこんな怖いところの屋上までのぼってきたんだよ。


誰かを救うためにここまで来れるほど俺はお人好しではない。


飛び降りようとする人をちょうどいいタイミングで助けに来るのはドラマの中だけの話し。


俺だって死にたくてここに来たんだから。


T「キミに関係ないだろ…。とにかく俺が先にここから飛び降りようと決めたんだから!!俺の邪魔しないで!!」


俺はそう必死になって彼に言ったものの…


なぜか抱きしめているこの温もりが心地よくてどこか懐かしい匂いがした。


「あの…」

T「やだ!絶対俺が先に!!」

「そうじゃなくて…そっち…振り返ってもいいですか?」


俺はまさかの言葉に一瞬、戸惑いドキッとした。


T「え…あ…うん…ごめん…」


そして、ゆっくりと振り返ったその人はあの日、自分のアンドロイドと俺を間違えてスーパーで話しかけてきたイルに似たあの男性で俺は思わず固まった。


「オン……?」


俺の顔を見た瞬間に彼の口からアンドロイドの名前が出て俺はイラッとする。


俺はアンドロイドではなくちゃんと血の通った人間なのに。


今は…今だけはアンドロイドになんて一番、間違えられたくなかった。


自分と同じ顔を持つアンドロイドのせいでこんなにも傷つき、この世界では俺の知らない所で俺と同じ顔を持つアンドロイドを性の道具として使っている人間がいるのだから。


なのに、そのオンという呼び名が幼き頃に仲良くしていたイルが俺を呼んでいた呼び名と同じで、自分の中に懐かしさが込み上げてくるから余計に腹が立ちその怒りのやり所が分からない。


T「キミも…あの会社の被害者の1人?」


俺と同じ顔をしたアンドロイドに俺と同じあだ名を付けたキミはアンドロイドに依存し、強制的にアンドロイドを回収されて悲しんでるの?


アンドロイドはアンドロイドなのに…


アンドロイドは生身の人間じゃないのに…


キミはアンドロイドを失った悲しみで自分の大切な命を犠牲にするの?


そう思ったら益々、義父さんのやっている事が憎くてたまらなくて怒りが込み上げてくる。


T「じゃ、俺今から死んでくるから。またね。」


この世を去れば「また」なんてないのにそう言ってしまった自分が少しおかしかったが俺は迷いなくそこに立つと突然、後ろからギュッと抱きしめられて俺は固まる……


なぜならその体温に不覚にもドキッと胸を高鳴らせてしまったから。


T「なんだよこれ。離せよ。俺はお前のアンドロイドじゃねぇ~つ~の!!」


早く…早くの温もりから離れなきゃ…


こいつが求めてるのは俺じゃなく俺にそっくりなアンドロイドなんだから…


そう思って必死でもがくが彼は俺から離れようとはせず、さらに強く抱きしめ俺に温もりを与える。


勘弁してくれよ…


死のうと決めた途端に…


こんな心地いい温もり教えんなよ…


死にたくなくなっちゃうじゃん…


そう思ったら俺は泣きたくなって涙が溢れ出しそうになるのをグッと堪える。


「離しません。あなたも俺と同じ被害者なんでしょ?」


被害者といえば大きすぎる被害者だ。


しかし、彼から見れば俺はきっと加害者。


俺と全く同じ顔をしたアンドロイドのせいで自殺を考えるほど苦しんでるのだから。


T「馬鹿じゃない?俺は被害者じゃなくどちらかと言えば加害者。そんなんだから自分のアンドロイドと俺を間違えるんだよ!!気分悪いな~もう。」


俺がそう言うと彼は俺も同じアンドロイドを失った被害者だと思っていたのか、驚いたような何とも言えない顔をして俺を見つめていて何故か俺の胸が痛かった。


そんな目で俺を見るな…


その視線は俺にではなくアンドロイドに向けていた視線だろ…


そんな優しい目で…俺を見るなよ…


俺はそんな気持ちをかき消すように言った。


T「アンドロイドの使い方を今の人間たちは間違っている。アンドロイドはあんな使い方をするために生まれたんじゃない。俺はアンドロイドを利用して商売する奴もアンドロイドを面白半分で買う奴も自分の快楽のためにアンドロイドを買う奴も大っ嫌いだ!!」


そう泣き叫ぶように言うと俺は彼から逃げるように夢中で走った。


俺は…


俺は母さんと父さんの元に行こうと決めてあの場所に行ったはず…


なのに…


俺は一体、何をしてるんだ。


タクシーに乗り込み流れゆく景色を眺めると…


俺はなぜか心から生きたい…そう強く思ってしまった。


それは屋上にいた彼が、ただイルに似ている他の人ではなく、鼻のほくろや唇の下にあるほくろを見つけて間違いなくあの彼はイルだと確信してしまったから。


T「イル…俺のこと忘れちゃったんだね…」


そう呟くとタクシーの窓ガラスには幼き頃のイルの笑った顔が映ったような気がし、そんな自分に苦笑いをしがら俺はまた流れ行く景色に視線を戻した。


つづく
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