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13話
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カイルサイド
俺は重い体でフラフラと夜の街を彷徨うかのように1人家をでた。
何の目的もなく闇の中を歩いてはただため息を落とす俺…
そんなどん底のような俺の目についたのは廃墟になったビル…
いつ見つけたのかも分からない。
オンを失ってから通りかかるたびにそのビルがずっと目について頭から離れなかった。
誰もいない暗いビルの中を俺はひとり歩いて階段を登っていく。
オンを失ってから目的も持たず生きていた俺がここに来たのは何が目的か…
薄々自分でもそれに気付いてる。
屋上に出れば恨めしいほど綺麗な月が輝いていて…
自然と涙がまた溢れ出した。
会いたい…オンに会いたい…
それだけが頭の中をぐるぐると回り、ビルの端に立ち両手を広げて空を見上げる。
あと一歩踏み出せば俺はオンの所へと逝けるのだろうか?
それともアンドロイドと人間では逝く場所が違う?
そんな事を考えながら煌々と照らし出す月にオンを重ね合わせるように見つめる。
K「オン…キミに見せてあげたかった…あの綺麗な桜を……約束守れなくてごめん…」
そう呟き俺は自分の右足を支える場のない空間に彷徨わせる。
K「オン…キミを忘れないよ。」
そう呟き右足に体重をかけようとしたその時!!
「ちょっと!!ストーップ!!!!」
この場に不釣り合いなほど大きくて騒がしい声と共に俺は背後から何者かに抱きしめられた。
K「ちょ、ちょっと離してください!!」
見知らぬ人の腕が自分の腰に回り、後ろから必死になって俺を下ろそうとするその腕を俺は引き剥がそうともがく。
しかし、その腕は全く離れようとはせず俺は困惑した。
「離すわけないじゃん!!今、キミここから飛び降りようとしたよね!?絶対にそんな事させないから!!」
正義のヒーロー気取りなのか面倒な人に見つかってしまったと俺は正直思った。
K「はぁ!?俺が死のうが生きろうがあなたには関係ないでしょ!?」
俺は勢いよくそう言うとバランスを崩し、後ろから誰かに抱きしめられたままビルの下を見下ろす形になり思わず一歩後退りをした。
「あるよ!!キミがここで飛び降りたら俺がここで死ねなくなっちゃうじゃんか!!?」
死ぬ…?
俺はまさかの言葉を聞いて思わず固まった。
この人は俺を助けるためにここに来たのではなく…
俺と同じ目的でここに来たんだと分かったから。
俺は振り返ることもなく呆然としビルの下を見下ろしたままその人に問いかけた。
K「あなたも…死にたいんですか?」
「キミに関係ないだろ…とにかく俺が先にここから飛び降りようと決めたんだから!!俺の邪魔しないで!!」
その人は後ろからギュッと俺を抱きしめたままそう言うが、不思議と俺は顔も知らない誰かの体温で心が少し癒されてしまった。
その温もりは決してアンドロイドであるオンからは感じることの出来なかった同じ人間の温もりだったから。
何も知らない人のその温もりだけで心が満たされてしまった薄情な自分に下唇を噛む。
K「あの…」
「やだ!絶対俺が先に!!」
K「そうじゃなくて…そっち…振り返ってもいいですか?」
「え…あ…うん…ごめん…」
すると、その人は腕の力を緩め俺はゆっくりと振り返り、その人の顔を見て思わずビルから落っこちそうになった。
え…
ウソ…だろ…?
K「オン……?」
そう、そこにはオンと全く同じ顔をした人が頬を膨らませて立っていて、オンと違ったのはその人の顔には表情があり温もりがあることだった。
あれ…この人まさかあのスーパーで会った…
あの人?
そう考えていると、その人も俺の顔をみて驚いた顔をし、咄嗟に俺の手を掴んでくれたおかげで俺は辛うじてビルから落っこちずに済んだ。
「キミは…スーパーの…?」
K「そう…です…」
「もしかしてキミも…あの会社のpurple社の被害者の1人?」
オンと全く同じ顔をしたその人は俺を見つめながらそう言った。
被害者の1人ということはこの人も俺と同じ被害者なのだろうか?
俺と同じ痛みを持った人間?そう思った俺はその人の前に立つと、その人は小さなため息を落とし握っていた俺の手を離した。
「じゃ、俺今から死んでくるから。またね。」
今から自殺するとは思えないほど明るく軽い感じでそう言ったその人は、今まで俺が立っていた場所に立とうとするから、今度は俺がその人を後ろから抱きしめて止めた。
「なんだよこれ。離せよ。俺はお前のアンドロイドじゃねぇ~つ~の!!」
そう言ってその人は俺の腕を無理矢理剥がそうとするが俺はそれを許さない。
K「離しません。あなたも俺と同じ被害者なんでしょ?」
俺がそう問いかけるとその人はピタッと動きが止まり振り返ると俺を見て鼻で笑った。
「馬鹿じゃない?俺は被害者じゃなくどちらかと言えば加害者。そんなんだから自分のアンドロイドと俺を間違えるんだよ!!気分悪いな~もう。」
被害者じゃなく…か…加害者?
まさかの言葉に俺が力を緩めると、その人は今だと言わんばかりに俺の腕を剥がし勢いよく言った。
「アンドロイドの使い方を今の人間たちは間違えてる。アンドロイドはあんな使い方をするために生まれたんじゃない。俺はアンドロイドを利用して商売する奴もアンドロイドを興味本位で買う奴も自分の快楽のためにアンドロイドを買う奴も大っ嫌いだ!!」
そう言うとその人はビルの屋上から走って逃げるように出て行った。
俺は呆然としながらその人の話を聞いていたが、扉が荒々しく閉まる音で我に返ると慌ててその背中を追いかけた。
走って階段を降り廃虚のビルを出るとちょうどその人はタクシーに乗り込み走り去ってしまった。
もしかしたら…
自身を加害者だと表現したあの人はオンが回収されてしまった原因やpurple社について何か知ってるかもしれない。
俺はそう思いながらもただ立ち尽くしそのタクシーを見つめる事しか出来なかった。
つづく
俺は重い体でフラフラと夜の街を彷徨うかのように1人家をでた。
何の目的もなく闇の中を歩いてはただため息を落とす俺…
そんなどん底のような俺の目についたのは廃墟になったビル…
いつ見つけたのかも分からない。
オンを失ってから通りかかるたびにそのビルがずっと目について頭から離れなかった。
誰もいない暗いビルの中を俺はひとり歩いて階段を登っていく。
オンを失ってから目的も持たず生きていた俺がここに来たのは何が目的か…
薄々自分でもそれに気付いてる。
屋上に出れば恨めしいほど綺麗な月が輝いていて…
自然と涙がまた溢れ出した。
会いたい…オンに会いたい…
それだけが頭の中をぐるぐると回り、ビルの端に立ち両手を広げて空を見上げる。
あと一歩踏み出せば俺はオンの所へと逝けるのだろうか?
それともアンドロイドと人間では逝く場所が違う?
そんな事を考えながら煌々と照らし出す月にオンを重ね合わせるように見つめる。
K「オン…キミに見せてあげたかった…あの綺麗な桜を……約束守れなくてごめん…」
そう呟き俺は自分の右足を支える場のない空間に彷徨わせる。
K「オン…キミを忘れないよ。」
そう呟き右足に体重をかけようとしたその時!!
「ちょっと!!ストーップ!!!!」
この場に不釣り合いなほど大きくて騒がしい声と共に俺は背後から何者かに抱きしめられた。
K「ちょ、ちょっと離してください!!」
見知らぬ人の腕が自分の腰に回り、後ろから必死になって俺を下ろそうとするその腕を俺は引き剥がそうともがく。
しかし、その腕は全く離れようとはせず俺は困惑した。
「離すわけないじゃん!!今、キミここから飛び降りようとしたよね!?絶対にそんな事させないから!!」
正義のヒーロー気取りなのか面倒な人に見つかってしまったと俺は正直思った。
K「はぁ!?俺が死のうが生きろうがあなたには関係ないでしょ!?」
俺は勢いよくそう言うとバランスを崩し、後ろから誰かに抱きしめられたままビルの下を見下ろす形になり思わず一歩後退りをした。
「あるよ!!キミがここで飛び降りたら俺がここで死ねなくなっちゃうじゃんか!!?」
死ぬ…?
俺はまさかの言葉を聞いて思わず固まった。
この人は俺を助けるためにここに来たのではなく…
俺と同じ目的でここに来たんだと分かったから。
俺は振り返ることもなく呆然としビルの下を見下ろしたままその人に問いかけた。
K「あなたも…死にたいんですか?」
「キミに関係ないだろ…とにかく俺が先にここから飛び降りようと決めたんだから!!俺の邪魔しないで!!」
その人は後ろからギュッと俺を抱きしめたままそう言うが、不思議と俺は顔も知らない誰かの体温で心が少し癒されてしまった。
その温もりは決してアンドロイドであるオンからは感じることの出来なかった同じ人間の温もりだったから。
何も知らない人のその温もりだけで心が満たされてしまった薄情な自分に下唇を噛む。
K「あの…」
「やだ!絶対俺が先に!!」
K「そうじゃなくて…そっち…振り返ってもいいですか?」
「え…あ…うん…ごめん…」
すると、その人は腕の力を緩め俺はゆっくりと振り返り、その人の顔を見て思わずビルから落っこちそうになった。
え…
ウソ…だろ…?
K「オン……?」
そう、そこにはオンと全く同じ顔をした人が頬を膨らませて立っていて、オンと違ったのはその人の顔には表情があり温もりがあることだった。
あれ…この人まさかあのスーパーで会った…
あの人?
そう考えていると、その人も俺の顔をみて驚いた顔をし、咄嗟に俺の手を掴んでくれたおかげで俺は辛うじてビルから落っこちずに済んだ。
「キミは…スーパーの…?」
K「そう…です…」
「もしかしてキミも…あの会社のpurple社の被害者の1人?」
オンと全く同じ顔をしたその人は俺を見つめながらそう言った。
被害者の1人ということはこの人も俺と同じ被害者なのだろうか?
俺と同じ痛みを持った人間?そう思った俺はその人の前に立つと、その人は小さなため息を落とし握っていた俺の手を離した。
「じゃ、俺今から死んでくるから。またね。」
今から自殺するとは思えないほど明るく軽い感じでそう言ったその人は、今まで俺が立っていた場所に立とうとするから、今度は俺がその人を後ろから抱きしめて止めた。
「なんだよこれ。離せよ。俺はお前のアンドロイドじゃねぇ~つ~の!!」
そう言ってその人は俺の腕を無理矢理剥がそうとするが俺はそれを許さない。
K「離しません。あなたも俺と同じ被害者なんでしょ?」
俺がそう問いかけるとその人はピタッと動きが止まり振り返ると俺を見て鼻で笑った。
「馬鹿じゃない?俺は被害者じゃなくどちらかと言えば加害者。そんなんだから自分のアンドロイドと俺を間違えるんだよ!!気分悪いな~もう。」
被害者じゃなく…か…加害者?
まさかの言葉に俺が力を緩めると、その人は今だと言わんばかりに俺の腕を剥がし勢いよく言った。
「アンドロイドの使い方を今の人間たちは間違えてる。アンドロイドはあんな使い方をするために生まれたんじゃない。俺はアンドロイドを利用して商売する奴もアンドロイドを興味本位で買う奴も自分の快楽のためにアンドロイドを買う奴も大っ嫌いだ!!」
そう言うとその人はビルの屋上から走って逃げるように出て行った。
俺は呆然としながらその人の話を聞いていたが、扉が荒々しく閉まる音で我に返ると慌ててその背中を追いかけた。
走って階段を降り廃虚のビルを出るとちょうどその人はタクシーに乗り込み走り去ってしまった。
もしかしたら…
自身を加害者だと表現したあの人はオンが回収されてしまった原因やpurple社について何か知ってるかもしれない。
俺はそう思いながらもただ立ち尽くしそのタクシーを見つめる事しか出来なかった。
つづく
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