9 / 32
9話
しおりを挟む
テオンサイド
寂しくてつまらない人生でも人間とは不思議なものでお腹はすくし喉も乾く。
俺はたまたま通りかかったスーパーに入り、空腹を満たすためおにぎりとゆで卵、そしておやつとしてどっちのチョコを買おうか悩んでいると…
ある男性に「オン」そう呼びかけられ心臓が止まるほど驚いた。
何故ならそのあだ名は幼かったイルが俺の名前であるテオンという名前をうまく発音することが出来ず、イルだけが俺を「オン」と呼んでいた特別なあだ名だったから。
おまけにその男性にはイルの面影があり、イルが大人になったらこんな感じなのかも…いや、待て…もしかして…?
そう思った瞬間…
彼の横には俺にそっくりなアンドロイドが立っていて俺はゾッとした。
言葉を失った俺はそのアンドロイドを見つめるとアンドロイドは俺を見て怯えたように俺を拒絶する言葉を放つ。
そして、俺と瓜二つの顔をしたアンドロイドの首元にはpurple社製品と分かるバーコードがあり、あの会社の製品であるアンドロイドだと言う事すぐに分かった。
アンドロイドだというのに話し方まで生身の人間のようで不気味だ…それが自分と同じ顔なら尚更。
そんな事を思っているとアンドロイドはイルに似た男に腕を引かれて俺の前から消えていった。
国が決めた法律では確か実在する人間がいるアンドロイドは即廃棄処分となるのだから、アンドロイドが俺を見て怯え拒絶するのは当然だろう。
だがしかし、あのアンドロイドには自身と同じ顔をした人間が存在するということを認識する能力や感情、恐怖や人間知識までプログラミングされているようだった。
まさか…それも全てアイツの仕業?
俺はそんな嫌な予感がよぎり、あのアンドロイドと出会ってから考えれば考えるほど闇のような大きな不安が俺を襲い、俺は眠れぬ夜を何日も過ごした。
スーパーで自分と同じ顔をしたアンドロイドを見つけてしまったあの日から俺は何日も悩み考え抜いた結果……
覚悟を決めてあの場所へと向かおうと決めた。
何年ぶりだろうか…この場所を訪れるのは…
子供の頃は大好きで憧れでもあり、いつか大人になったら俺もここで働きたい…そう思っていた場所。
なのに今では近寄ることさえ苦痛となりその社名を耳にするだけで嫌気がさしていた。
それもこれも全て奴のせい…
そう、そんな俺が訪れたのは全世界にアンドロイドを発売している世界的大企業のpurple社。
俺が中に入れば社員たちが俺の顔を見るだけで顔色を変えて慌てて次々と俺に頭を下げていく。
俺はそんな社員たちに頭を下げることなく一目散に会社の受付へと向かった。
俺の顔を見た受付嬢たちは初めて生身の俺を見たからか微かに震えていた。
T「社長…いる?」
そう確認すれば受付嬢は緊張から掠れた声で返事をし、俺が合図をすると受付嬢はセキュリティーを解除して、俺はそこから中へと入りエレベーターで最上階へと上がる。
久しぶりに訪れたそのフロアは相当アンドロイド業務で儲けているのか、会社の至る所に高そうな絵画や花が飾らせてあった。
T「ほんと…相変わらずクズだな…あのおっさん……」
そう呟き俺は社長室の扉を開けた。
俺の顔を見るなり驚いた顔をし言葉を失ったかのように呆然とするその人。
じっと俺がその人を見ているとやっとその人は口を開いた。
「テオン…」
T「久しぶりだね…義父さん。」
そう言って嘘の笑みを浮かべれば、それを真に受けて俺を抱きしめようとするその手を俺は振り払った。
T「俺そっくりなアンドロイドで荒稼ぎしてすごい儲けてるみたいだね……今でも俺と同じ顔したアンドロイド抱いてるの?あの頃の俺の代わりに?」
俺がそう言うと義父さんの顔色は変わり俺の頬を殴った。
図星かよ……
そう心の中で俺はつぶやいた。
つづく
寂しくてつまらない人生でも人間とは不思議なものでお腹はすくし喉も乾く。
俺はたまたま通りかかったスーパーに入り、空腹を満たすためおにぎりとゆで卵、そしておやつとしてどっちのチョコを買おうか悩んでいると…
ある男性に「オン」そう呼びかけられ心臓が止まるほど驚いた。
何故ならそのあだ名は幼かったイルが俺の名前であるテオンという名前をうまく発音することが出来ず、イルだけが俺を「オン」と呼んでいた特別なあだ名だったから。
おまけにその男性にはイルの面影があり、イルが大人になったらこんな感じなのかも…いや、待て…もしかして…?
そう思った瞬間…
彼の横には俺にそっくりなアンドロイドが立っていて俺はゾッとした。
言葉を失った俺はそのアンドロイドを見つめるとアンドロイドは俺を見て怯えたように俺を拒絶する言葉を放つ。
そして、俺と瓜二つの顔をしたアンドロイドの首元にはpurple社製品と分かるバーコードがあり、あの会社の製品であるアンドロイドだと言う事すぐに分かった。
アンドロイドだというのに話し方まで生身の人間のようで不気味だ…それが自分と同じ顔なら尚更。
そんな事を思っているとアンドロイドはイルに似た男に腕を引かれて俺の前から消えていった。
国が決めた法律では確か実在する人間がいるアンドロイドは即廃棄処分となるのだから、アンドロイドが俺を見て怯え拒絶するのは当然だろう。
だがしかし、あのアンドロイドには自身と同じ顔をした人間が存在するということを認識する能力や感情、恐怖や人間知識までプログラミングされているようだった。
まさか…それも全てアイツの仕業?
俺はそんな嫌な予感がよぎり、あのアンドロイドと出会ってから考えれば考えるほど闇のような大きな不安が俺を襲い、俺は眠れぬ夜を何日も過ごした。
スーパーで自分と同じ顔をしたアンドロイドを見つけてしまったあの日から俺は何日も悩み考え抜いた結果……
覚悟を決めてあの場所へと向かおうと決めた。
何年ぶりだろうか…この場所を訪れるのは…
子供の頃は大好きで憧れでもあり、いつか大人になったら俺もここで働きたい…そう思っていた場所。
なのに今では近寄ることさえ苦痛となりその社名を耳にするだけで嫌気がさしていた。
それもこれも全て奴のせい…
そう、そんな俺が訪れたのは全世界にアンドロイドを発売している世界的大企業のpurple社。
俺が中に入れば社員たちが俺の顔を見るだけで顔色を変えて慌てて次々と俺に頭を下げていく。
俺はそんな社員たちに頭を下げることなく一目散に会社の受付へと向かった。
俺の顔を見た受付嬢たちは初めて生身の俺を見たからか微かに震えていた。
T「社長…いる?」
そう確認すれば受付嬢は緊張から掠れた声で返事をし、俺が合図をすると受付嬢はセキュリティーを解除して、俺はそこから中へと入りエレベーターで最上階へと上がる。
久しぶりに訪れたそのフロアは相当アンドロイド業務で儲けているのか、会社の至る所に高そうな絵画や花が飾らせてあった。
T「ほんと…相変わらずクズだな…あのおっさん……」
そう呟き俺は社長室の扉を開けた。
俺の顔を見るなり驚いた顔をし言葉を失ったかのように呆然とするその人。
じっと俺がその人を見ているとやっとその人は口を開いた。
「テオン…」
T「久しぶりだね…義父さん。」
そう言って嘘の笑みを浮かべれば、それを真に受けて俺を抱きしめようとするその手を俺は振り払った。
T「俺そっくりなアンドロイドで荒稼ぎしてすごい儲けてるみたいだね……今でも俺と同じ顔したアンドロイド抱いてるの?あの頃の俺の代わりに?」
俺がそう言うと義父さんの顔色は変わり俺の頬を殴った。
図星かよ……
そう心の中で俺はつぶやいた。
つづく
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

【BL】記憶のカケラ
樺純
BL
あらすじ
とある事故により記憶の一部を失ってしまったキイチ。キイチはその事故以来、海辺である男性の後ろ姿を追いかける夢を毎日見るようになり、その男性の顔が見えそうになるといつもその夢から覚めるため、その相手が誰なのか気になりはじめる。
そんなキイチはいつからか惹かれている幼なじみのタカラの家に転がり込み、居候生活を送っているがタカラと幼なじみという関係を壊すのが怖くて告白出来ずにいた。そんな時、毎日見る夢に出てくるあの後ろ姿を街中で見つける。キイチはその人と会えば何故、あの夢を毎日見るのかその理由が分かるかもしれないとその後ろ姿に夢中になるが、結果としてそのキイチのその行動がタカラの心を締め付け過去の傷痕を抉る事となる。
キイチが忘れてしまった記憶とは?
タカラの抱える過去の傷痕とは?
散らばった記憶のカケラが1つになった時…真実が明かされる。
キイチ(男)
中二の時に事故に遭い記憶の一部を失う。幼なじみであり片想いの相手であるタカラの家に居候している。同じ男であることや幼なじみという関係を壊すのが怖く、タカラに告白出来ずにいるがタカラには過保護で尽くしている。
タカラ(男)
過去の出来事が忘れられないままキイチを自分の家に居候させている。タカラの心には過去の出来事により出来てしまった傷痕があり、その傷痕を癒すことができないまま自分の想いに蓋をしキイチと暮らしている。
ノイル(男)
キイチとタカラの幼なじみ。幼なじみ、男女7人組の年長者として2人を落ち着いた目で見守っている。キイチの働くカフェのオーナーでもあり、良き助言者でもあり、ノイルの行動により2人に大きな変化が訪れるキッカケとなる。
ミズキ(男)
幼なじみ7人組の1人でもありタカラの親友でもある。タカラと同じ職場に勤めていて会社ではタカラの執事くんと呼ばれるほどタカラに甘いが、恋人であるヒノハが1番大切なのでここぞと言う時は恋人を優先する。
ユウリ(女)
幼なじみ7人組の1人。ノイルの経営するカフェで一緒に働いていてノイルの彼女。
ヒノハ(女)
幼なじみ7人組の1人。ミズキの彼女。ミズキのことが大好きで冗談半分でタカラにライバル心を抱いてるというネタで場を和ませる。
リヒト(男)
幼なじみ7人組の1人。冷静な目で幼なじみ達が恋人になっていく様子を見守ってきた。
謎の男性
街でキイチが見かけた毎日夢に出てくる後ろ姿にそっくりな男。
新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜
若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。
妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。
ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。
しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。
父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。
父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。
ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。
野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて…
そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。
童話の「美女と野獣」パロのBLです
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。

ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる