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9話
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テオンサイド
寂しくてつまらない人生でも人間とは不思議なものでお腹はすくし喉も乾く。
俺はたまたま通りかかったスーパーに入り、空腹を満たすためおにぎりとゆで卵、そしておやつとしてどっちのチョコを買おうか悩んでいると…
ある男性に「オン」そう呼びかけられ心臓が止まるほど驚いた。
何故ならそのあだ名は幼かったイルが俺の名前であるテオンという名前をうまく発音することが出来ず、イルだけが俺を「オン」と呼んでいた特別なあだ名だったから。
おまけにその男性にはイルの面影があり、イルが大人になったらこんな感じなのかも…いや、待て…もしかして…?
そう思った瞬間…
彼の横には俺にそっくりなアンドロイドが立っていて俺はゾッとした。
言葉を失った俺はそのアンドロイドを見つめるとアンドロイドは俺を見て怯えたように俺を拒絶する言葉を放つ。
そして、俺と瓜二つの顔をしたアンドロイドの首元にはpurple社製品と分かるバーコードがあり、あの会社の製品であるアンドロイドだと言う事すぐに分かった。
アンドロイドだというのに話し方まで生身の人間のようで不気味だ…それが自分と同じ顔なら尚更。
そんな事を思っているとアンドロイドはイルに似た男に腕を引かれて俺の前から消えていった。
国が決めた法律では確か実在する人間がいるアンドロイドは即廃棄処分となるのだから、アンドロイドが俺を見て怯え拒絶するのは当然だろう。
だがしかし、あのアンドロイドには自身と同じ顔をした人間が存在するということを認識する能力や感情、恐怖や人間知識までプログラミングされているようだった。
まさか…それも全てアイツの仕業?
俺はそんな嫌な予感がよぎり、あのアンドロイドと出会ってから考えれば考えるほど闇のような大きな不安が俺を襲い、俺は眠れぬ夜を何日も過ごした。
スーパーで自分と同じ顔をしたアンドロイドを見つけてしまったあの日から俺は何日も悩み考え抜いた結果……
覚悟を決めてあの場所へと向かおうと決めた。
何年ぶりだろうか…この場所を訪れるのは…
子供の頃は大好きで憧れでもあり、いつか大人になったら俺もここで働きたい…そう思っていた場所。
なのに今では近寄ることさえ苦痛となりその社名を耳にするだけで嫌気がさしていた。
それもこれも全て奴のせい…
そう、そんな俺が訪れたのは全世界にアンドロイドを発売している世界的大企業のpurple社。
俺が中に入れば社員たちが俺の顔を見るだけで顔色を変えて慌てて次々と俺に頭を下げていく。
俺はそんな社員たちに頭を下げることなく一目散に会社の受付へと向かった。
俺の顔を見た受付嬢たちは初めて生身の俺を見たからか微かに震えていた。
T「社長…いる?」
そう確認すれば受付嬢は緊張から掠れた声で返事をし、俺が合図をすると受付嬢はセキュリティーを解除して、俺はそこから中へと入りエレベーターで最上階へと上がる。
久しぶりに訪れたそのフロアは相当アンドロイド業務で儲けているのか、会社の至る所に高そうな絵画や花が飾らせてあった。
T「ほんと…相変わらずクズだな…あのおっさん……」
そう呟き俺は社長室の扉を開けた。
俺の顔を見るなり驚いた顔をし言葉を失ったかのように呆然とするその人。
じっと俺がその人を見ているとやっとその人は口を開いた。
「テオン…」
T「久しぶりだね…義父さん。」
そう言って嘘の笑みを浮かべれば、それを真に受けて俺を抱きしめようとするその手を俺は振り払った。
T「俺そっくりなアンドロイドで荒稼ぎしてすごい儲けてるみたいだね……今でも俺と同じ顔したアンドロイド抱いてるの?あの頃の俺の代わりに?」
俺がそう言うと義父さんの顔色は変わり俺の頬を殴った。
図星かよ……
そう心の中で俺はつぶやいた。
つづく
寂しくてつまらない人生でも人間とは不思議なものでお腹はすくし喉も乾く。
俺はたまたま通りかかったスーパーに入り、空腹を満たすためおにぎりとゆで卵、そしておやつとしてどっちのチョコを買おうか悩んでいると…
ある男性に「オン」そう呼びかけられ心臓が止まるほど驚いた。
何故ならそのあだ名は幼かったイルが俺の名前であるテオンという名前をうまく発音することが出来ず、イルだけが俺を「オン」と呼んでいた特別なあだ名だったから。
おまけにその男性にはイルの面影があり、イルが大人になったらこんな感じなのかも…いや、待て…もしかして…?
そう思った瞬間…
彼の横には俺にそっくりなアンドロイドが立っていて俺はゾッとした。
言葉を失った俺はそのアンドロイドを見つめるとアンドロイドは俺を見て怯えたように俺を拒絶する言葉を放つ。
そして、俺と瓜二つの顔をしたアンドロイドの首元にはpurple社製品と分かるバーコードがあり、あの会社の製品であるアンドロイドだと言う事すぐに分かった。
アンドロイドだというのに話し方まで生身の人間のようで不気味だ…それが自分と同じ顔なら尚更。
そんな事を思っているとアンドロイドはイルに似た男に腕を引かれて俺の前から消えていった。
国が決めた法律では確か実在する人間がいるアンドロイドは即廃棄処分となるのだから、アンドロイドが俺を見て怯え拒絶するのは当然だろう。
だがしかし、あのアンドロイドには自身と同じ顔をした人間が存在するということを認識する能力や感情、恐怖や人間知識までプログラミングされているようだった。
まさか…それも全てアイツの仕業?
俺はそんな嫌な予感がよぎり、あのアンドロイドと出会ってから考えれば考えるほど闇のような大きな不安が俺を襲い、俺は眠れぬ夜を何日も過ごした。
スーパーで自分と同じ顔をしたアンドロイドを見つけてしまったあの日から俺は何日も悩み考え抜いた結果……
覚悟を決めてあの場所へと向かおうと決めた。
何年ぶりだろうか…この場所を訪れるのは…
子供の頃は大好きで憧れでもあり、いつか大人になったら俺もここで働きたい…そう思っていた場所。
なのに今では近寄ることさえ苦痛となりその社名を耳にするだけで嫌気がさしていた。
それもこれも全て奴のせい…
そう、そんな俺が訪れたのは全世界にアンドロイドを発売している世界的大企業のpurple社。
俺が中に入れば社員たちが俺の顔を見るだけで顔色を変えて慌てて次々と俺に頭を下げていく。
俺はそんな社員たちに頭を下げることなく一目散に会社の受付へと向かった。
俺の顔を見た受付嬢たちは初めて生身の俺を見たからか微かに震えていた。
T「社長…いる?」
そう確認すれば受付嬢は緊張から掠れた声で返事をし、俺が合図をすると受付嬢はセキュリティーを解除して、俺はそこから中へと入りエレベーターで最上階へと上がる。
久しぶりに訪れたそのフロアは相当アンドロイド業務で儲けているのか、会社の至る所に高そうな絵画や花が飾らせてあった。
T「ほんと…相変わらずクズだな…あのおっさん……」
そう呟き俺は社長室の扉を開けた。
俺の顔を見るなり驚いた顔をし言葉を失ったかのように呆然とするその人。
じっと俺がその人を見ているとやっとその人は口を開いた。
「テオン…」
T「久しぶりだね…義父さん。」
そう言って嘘の笑みを浮かべれば、それを真に受けて俺を抱きしめようとするその手を俺は振り払った。
T「俺そっくりなアンドロイドで荒稼ぎしてすごい儲けてるみたいだね……今でも俺と同じ顔したアンドロイド抱いてるの?あの頃の俺の代わりに?」
俺がそう言うと義父さんの顔色は変わり俺の頬を殴った。
図星かよ……
そう心の中で俺はつぶやいた。
つづく
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