選んでください、聖女様!

ねこいかいち

文字の大きさ
上 下
10 / 13

10

しおりを挟む
 今日は遂に、最後の一人であるアンディとのお茶会だ。セラは未だリディスの恋が終わった時のことを考えてはドキドキしてしまっていたが、それでも今日は絶対参加のお茶会。抜け出す訳にはいかないと登城した。
「よ、先に着いちまったから座ってたぜ」
 お茶会の席には、既にアンディが座っていた。立ちあがり、私の座る席の椅子を引いてくれる。紳士的な対応も出来たことに、昔のアンディなら考えられなかったなあと思ってしまった。
「ありがと」
「どういたしまして、ってな」
 にっと笑顔を向けるアンディに、やはり幼馴染と言うのもあり他の二人とは違って安心感というか、気楽にいられるなと思った。だがアンディも夫候補だ。自身に好意を持っていることには変わりない。
「なあ」
「なに?」
 何を話そうかと思っていた矢先に訊ねられ、セラは首を傾げる。何か私に聞きたいことでもあるのだろうか?
「前の二人とはさ、どんな話したんだ?」
「ユーゴスさんと殿下? そうね……どうして立候補したのかは聞いたわ」
「そっか」
 それを聞いたっきり、アンディはだんまりだ。セラは何か話さなければと頭をフル回転させた。
「そ、そういえばね。ティールに彼氏が出来たの!」
「ティールに?」
「ええ。リディスっていう王宮仕えの魔導士よ」
 私の、好きだった人……。それはアンディに言えなかったが、表情から察してしまったらしく、険しい表情になった。
「セラ……お前はそれでいいのか?」
「うん。もう吹っ切れたから」
 そう。確かにあの時は悲しかったし、今も思いだせば少し悲しい。でも、アンディが側で受け止めてくれたからか、もう後悔はない。そういう意味では、アンディのお陰だ。
「ありがとうね」
「ん? おう」
 何のことを言われているのかわかっていないようで、アンディは取り敢えずと言った風に頷いた。変な所で気遣って、変な所でわかってないのは昔から変わっていないようだった。
「セラはさ、他の二人とはどうだったよ? 夫にしたいとかもう決まったのか?」
「全然。まだお茶会だって一回目だよ? 決まるもんですか」
「そうだよな……」
 紅茶に手を伸ばしながら、アンディは頷く。数口飲み、セラに視線を向けた。
「仮の話だけどよ、俺以外を選んでも祝福はするからな。勿論、選んで欲しいって欲はあるけど、セラの幸せが一番だしな」
「アンディ……」
 そうだ。選ぶということは、今の関係を壊すことにも繋がりかねないんだ。仮にアンディを夫に選んでも、幼馴染から夫に関係が変わり、選ばなかったら、今のように楽しくやり取りも出来るかどうかなんだ。それはユーゴス達にも言えることだが、久方ぶりに再会した幼馴染と関係が悪化するのは嫌だな……。
「あ。お前、今この関係が壊れたらどうしようとか考えただろ」
「う……」
 図星を突かれて、言葉に詰まる。どうして昔から、こうも勘は良いのだろうか。
「心配すんなよ。仮に選ばれなくても、俺とお前は幼馴染だし変らずこうして会話も出来るさ。勿論、さっきも言ったが選んで欲しい欲は捨ててないぜ?」
「……ありがと」
 アンディの優しさに甘えている気がするが、そう言って貰えてよかった。そう思いながら礼を述べると、アンディはにかッと笑顔を向けた。
 今の所、一番の候補は誰か、なんて聞かれたら、誰が出るだろう。他人事のように思いながら、セラはアンディとのお茶会を楽しんだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

[完結]裏切りの学園 〜親友・恋人・教師に葬られた学園マドンナの復讐

青空一夏
恋愛
 高校時代、完璧な優等生であった七瀬凛(ななせ りん)は、親友・恋人・教師による壮絶な裏切りにより、人生を徹底的に破壊された。  彼女の家族は死に追いやられ、彼女自身も冤罪を着せられた挙げ句、刑務所に送られる。 「何もかも失った……」そう思った彼女だったが、獄中である人物の助けを受け、地獄から這い上がる。  数年後、凛は名前も身分も変え、復讐のために社会に舞い戻るのだが…… ※全6話ぐらい。字数は一話あたり4000文字から5000文字です。

敗戦して嫁ぎましたが、存在を忘れ去られてしまったので自給自足で頑張ります!

桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。 ※※※※※※※※※※※※※ 魔族 vs 人間。 冷戦を経ながらくすぶり続けた長い戦いは、人間側の敗戦に近い状況で、ついに終止符が打たれた。 名ばかりの王族リュシェラは、和平の証として、魔王イヴァシグスに第7王妃として嫁ぐ事になる。だけど、嫁いだ夫には魔人の妻との間に、すでに皇子も皇女も何人も居るのだ。 人間のリュシェラが、ここで王妃として求められる事は何もない。和平とは名ばかりの、敗戦国の隷妃として、リュシェラはただ静かに命が潰えていくのを待つばかり……なんて、殊勝な性格でもなく、与えられた宮でのんびり自給自足の生活を楽しんでいく。 そんなリュシェラには、実は誰にも言えない秘密があった。 ※※※※※※※※※※※※※ 短編は難しいな…と痛感したので、慣れた文字数、文体で書いてみました。 お付き合い頂けたら嬉しいです!

邪魔しないので、ほっておいてください。

りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。 お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。 義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。 実の娘よりもかわいがっているぐらいです。 幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。 でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。 階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。 悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。 それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

私は逃げます

恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。 そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。 貴族のあれやこれやなんて、構っていられません! 今度こそ好きなように生きます!

皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~

saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。 前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。 国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。 自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。 幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。 自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。 前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。 ※小説家になろう様でも公開しています

処理中です...