手乗り姫

ねこいかいち

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手乗り姫と蛙とミツバチ

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 じりじりと照り付ける太陽の熱さから逃れるため、ニアとコニックは水辺に移動しました。公園の池の周りは涼しく、ホッと一息吐けました。池の端っこの草の山から、一匹の小さなカエルが出てきました。可愛らしい鳴き声は辺りに響き渡っていました。辺りを見渡し、人が居ないのを確認すると、ニアはカエルに話しかけました。
「カエルさん、何をしているの?」
「やあ、お嬢さん。僕は夜の歌合戦の間まで歌の練習をしているのさ」
「歌合戦?」
 聞いたこともない言葉に、ニアは首を傾げます。カエルは「ああ」と答え、話を続けます。
「夜、涼しくなった頃合いに皆で歌を披露するんだ。誰が一番上手に歌えるか競うのさ」
「面白そう! ねえ、私もその歌、聞いてもいいかしら?」
「勿論! 僕はユタ。君を歓迎するよ」
 そうにこやかに答えて貰い、ニアは嬉しそうに顔を綻ばせました。
「私はニアよ! 楽しみにしているわ!」
「うん。僕も君に聞かせる為に練習を頑張るよ」
 そう言って、ユタは草の茂みの中に入っていきました。



 少し歩くと、大きな花畑がありました。
「綺麗! 後でここで休憩しない?」
「うん、いいね。ここは日陰もあるし、丁度いいかも」
 そう言いながら再び歩いていると、上空を迷いながら飛ぶ、ミツバチに出会いました。
「ミツバチさん、どうしたの?」
 コニックがそう呼びかけると、ミツバチはコニックの鼻先あたりまで降りてきて、不安そうに言葉を発します。
「猫さん、困っているの。お花の場所がわからないの……」
「お花の場所?」
 人形のふりをしていたニアも顔を上げ、言葉を返します。一体、どういうことなのでしょう。
「私はコミツ。私達ミツバチは、互いにダンスを踊って花のある場所を教え合うの。でも最近、私も皆も調子が悪くて……ダンスを上手く読み取れなくて、花畑の場所がわからなくなってしまったの……」
 そう言い嘆くコミツに、ニアとコニックは先程の花畑を思い出しました。
「ねえ、探している花畑とは違うかも知れないけど、花畑の場所へ案内するわ!」
「本当!? ありがとう」
 喜ぶミツバチに、ニアとコニックは笑顔を向け案内します。先程見つけた花畑に連れて行くと、コミツは大喜びしました。
「ここ! 私が探してた場所よ! 二人ともありがとう。これでシロツメクサの蜜が採れるわ」
 大喜びのコミツにつられて、笑顔になるニア。また一つ、良いことをしてしまいました。


「ニア、少しここで僕たちも休憩しようよ」
「そうね。あそこの少し離れた木の下がいいかも」
 そう良い、二人は日陰になっている木の下に行き、コニックは腰を下ろしました。
「ニア。人が来たら大変だから、僕の背中で休んでね」
「うん」
 そう話しながら、コミツの蜜集めを眺めます。懸命に頑張っているその姿を見つめながら、ニアは目をゆっくりと閉じて行きました。
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