手乗り姫

ねこいかいち

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手乗り姫とカラス

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 茂みを向けると、大きな家がたくさん在りました。それよりも大きな建物も点在し、圧巻の景色でした。
「わあ……っ」
 コニックの背に乗りながらこっそり見上げれば、行き交う人がたくさんいます。人を見たことのなかったニアには、新鮮な光景です。
「ニア、静かに。人形のふりをしてて」
 慌てて、コニックの背に顔を埋め、人形のふりをします。でも、こっそり見上げてしまいます。人の視線が、コニックとニアに向けられます。何か長方形のものをかざし、こちらを見ている人もいます。
「可愛い~」
「お人形抱えてるよこの子」
 そうした声が聞こえてきます。コニックは威嚇しながら、急いでその場を離れて行きました。
「びっくりした……」
「人間は興味を持ったらあの四角い奴で何かしてくるんだ。気を付けてね」
「うん」
 警告してくるコニックに小さく頷きながら、ニアとコニックは進みます。
 先程出会った蝶のアドバイスに従い、日陰を歩くコニック。太陽の光はハートフットよりも強く、真っすぐニアに降り注いできます。
「意外と、熱いね……」
「茂みに隠れて水分補給しよう」
 言いながら、コニックは公園の茂みの中に隠れ、ニアを降ろしました。ふう、と一息吐くと、ニアは持ってきておいた水を取り出し、コニックと半分にして飲みます。
「ニア、僕は自分で持ってきているから大丈夫だよ?」
「コニックのはいざという時の備蓄にしましょ。こんなに熱いだなんて、蝶々さんが具合を悪くしてたのも頷けるわ」
 コクコクと水を飲むニアとコニック。そこへ、一羽のカラスがやってきました。
「済まないが、わたしにも水を分けてくれないかい?」
 突然やってきた来訪者に驚きましたが、ニアは「どうぞ」と水を差しだしました。
「ニア!」
「だって、困っている子を放っておくのは無理よ。さ、飲んでちょうだいな」
「ありがとう」
 感謝を述べ、カラスが飲みやすいようにニアは器を傾けながら飲ませます。カラスは生き返ったかのように元気になりました。
「助かったよ。人間の給水機を使いたいんだが、人間がたむろしていて使えなくてね……雨も碌に降らないから、喉がカラカラだったんだ」
「お役に立てたなら良かったわ。あなたはここに住んでいるの?」
「ああ、そうだよ。君は何度か巣の上から見たことがあるよ」
「よく来てるから」
 コニックが何度も人の世界に来ているのは知りませんでした。ニアは少しだけ、頬を膨らませました。
「お嬢さん、本当にありがとう。私はジェニ。なにか困ったことがあったら次は私が助けてあげるよ」
「ありがとう! 私はニア。宜しくね!」
 挨拶をすると、カラスのジェニは空へと飛び立っていきました。
「ニア、良かったね。お友達が増えて」
「うん! 蝶々さんの名前も聞いておけばよかったな……」
 再びコニックの背に乗り、ニアとコニックは人間の世界を散策します。

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