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手乗り姫と雀
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空を眺めながら、コニックと二人、おじいさんからの言葉の答えを考えるニアは、何度目かわからない溜息を吐きます。
「『何の為に』か……」
「ニア、僕も思ったけど、どうして人間のいる外の世界がいいの?」
コニックの言葉に、ニアは体を起こして視線を向けました。
「ずっと興味があったから! でも、『何の為に』って聞かれたら答えられなかった……」
蹲り、膝に額を擦り付けて再び考えだすニア。そんなニアの元に、一羽の雀がやってきました。
「やあニア。困りごとかい?」
「チュジャン……」
近くの木の枝に留まったのは、雀のチュジャンでした。ニアは溜息を吐きながら、事の経緯を話します。
「フムフム……ニアは『何の為に』行きたいのか。それがわからないんだね」
「うん。ずっと興味はあったの。でもそれは『何の為に』っていう答えにはならないわ」
コニックは二人の会話を聞きながら、大きな欠伸をします。ニアについて行くと決めた以上、共に旅に出るのは構わないとコニックは思っています。ですが、危険と隣合わせの人の世界にだけは、ニアを連れて行きたくないのもコニックの思いでした。そんなコニックの思いに気付かないニアは、チュジャンと言葉を交わします。
「簡単だよ、ニア。興味があるんだろう? それが『何の為に』に繋がるさ」
チュジャンの言う言葉の意味がわかりません。ニアは首を傾げるばかりです。
「どういう意味なの?」
「興味を持ったから、行きたいのだろう。行った時、君は『何が』したいんだい?」
諭すような言葉に、ニアは考えます。行ったら、私がしたいこと……。
「沢山の生き物と接したいわ。向こうで生きている動物、昆虫、出来ることならば人とも触れ合いたいわ」
ニアの答えに、チュジャンは「ほら。答えがでただろう?」と。微笑みながら言いました。
笑顔でチュジャンに礼を述べると、ニアはおじいさんの元に走っていきました。
残されたコニックは、チュジャンをじっと睨みます。
「ニアに応え教えちゃって、良かったのかよ」
「私は誰の味方でもある。村長だって、若い頃は旅をしていたんだ。ただニアの冒険の舞台が人の世界なだけさ」
チュジャンの反応に、コニックはやれやれと肩を落としました。
「おじいちゃん!」
言えに飛び込み、ニアはおじいさんの元に駆け寄ります。
「……答えが出たのかい?」
「うん。私、人の世界で住む多くの動物たちと言葉を交わしてきたい。可能ならば、人とも触れ合いたい。興味しかなかったけど、今は違うよ。住む世界が違うからこそ、どんな生活をしているのか、それも知りたいの」
ニアの言葉に、おじいさんは微笑みました。ぎゅっと抱き締められ、背中を擦られました。
「……コニックの言うことは絶対に守りなさい。それが条件じゃ」
「うん」
「出発はちゃんと準備をしてからじゃ。いいね?」
「うん!」
ニアはおじいさんに、満面の笑顔を向けました。夢の第一歩、始まりです。
「『何の為に』か……」
「ニア、僕も思ったけど、どうして人間のいる外の世界がいいの?」
コニックの言葉に、ニアは体を起こして視線を向けました。
「ずっと興味があったから! でも、『何の為に』って聞かれたら答えられなかった……」
蹲り、膝に額を擦り付けて再び考えだすニア。そんなニアの元に、一羽の雀がやってきました。
「やあニア。困りごとかい?」
「チュジャン……」
近くの木の枝に留まったのは、雀のチュジャンでした。ニアは溜息を吐きながら、事の経緯を話します。
「フムフム……ニアは『何の為に』行きたいのか。それがわからないんだね」
「うん。ずっと興味はあったの。でもそれは『何の為に』っていう答えにはならないわ」
コニックは二人の会話を聞きながら、大きな欠伸をします。ニアについて行くと決めた以上、共に旅に出るのは構わないとコニックは思っています。ですが、危険と隣合わせの人の世界にだけは、ニアを連れて行きたくないのもコニックの思いでした。そんなコニックの思いに気付かないニアは、チュジャンと言葉を交わします。
「簡単だよ、ニア。興味があるんだろう? それが『何の為に』に繋がるさ」
チュジャンの言う言葉の意味がわかりません。ニアは首を傾げるばかりです。
「どういう意味なの?」
「興味を持ったから、行きたいのだろう。行った時、君は『何が』したいんだい?」
諭すような言葉に、ニアは考えます。行ったら、私がしたいこと……。
「沢山の生き物と接したいわ。向こうで生きている動物、昆虫、出来ることならば人とも触れ合いたいわ」
ニアの答えに、チュジャンは「ほら。答えがでただろう?」と。微笑みながら言いました。
笑顔でチュジャンに礼を述べると、ニアはおじいさんの元に走っていきました。
残されたコニックは、チュジャンをじっと睨みます。
「ニアに応え教えちゃって、良かったのかよ」
「私は誰の味方でもある。村長だって、若い頃は旅をしていたんだ。ただニアの冒険の舞台が人の世界なだけさ」
チュジャンの反応に、コニックはやれやれと肩を落としました。
「おじいちゃん!」
言えに飛び込み、ニアはおじいさんの元に駆け寄ります。
「……答えが出たのかい?」
「うん。私、人の世界で住む多くの動物たちと言葉を交わしてきたい。可能ならば、人とも触れ合いたい。興味しかなかったけど、今は違うよ。住む世界が違うからこそ、どんな生活をしているのか、それも知りたいの」
ニアの言葉に、おじいさんは微笑みました。ぎゅっと抱き締められ、背中を擦られました。
「……コニックの言うことは絶対に守りなさい。それが条件じゃ」
「うん」
「出発はちゃんと準備をしてからじゃ。いいね?」
「うん!」
ニアはおじいさんに、満面の笑顔を向けました。夢の第一歩、始まりです。
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