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第四章
1 教会での再会
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新婚旅行から帰って来た翌日、教会に向かおうと身支度をするレティシア。シンプルな黄色のワンピースを着て、ダグラスで購入した布で作られた花のコサージュのお土産を袋に詰めて教会に向かう。
目的はメルヴィーに会うことだ。彼女は今も教会に瞑想に通っている。そこで今回の旅行のお土産を渡そうと思っている。レティシアは色違いの花のコサージュを大事そうに抱え、カールとカイラ、アティカと共に教会までの道のりを歩いた。
「なんだか、この道を歩くのも久しぶりな感じがするわ」
レティシアの言葉に、カールは「キュウ!」と鳴いた。
「そっか。カールは教会に行くのは初めてなのよね」
「ンキャウ」
肩に乗りながら、レティシアの頬に顔を摺り寄せるカール。瞑想の際は静かにして貰えれrバ大丈夫だろうと連れてきてしまったが、大丈夫だっただろうか――。
「レティシアお嬢、もしもの際はカールは私が預かり外で待機しております」
「ありがとう、アティカ」
レティシアの心配をすぐに察して、アティカが言葉を返してくれる。レティシアは微笑み、アティカに礼を述べた。
教会に着くと、中から犬を連れた老人が出てきた。咄嗟にレティシアは話しかける。
「あの、すみません」
「なんですかな?」
優しそうな老人に、レティシアは言葉をかける。
「教会の中は動物も入っても大丈夫なのですか?」
「大丈夫ですよ。大人しくしていれば咎められることもありません」
その言葉に、ホッとする。これでカールも教会に入ることが出来る。レティシアは老人に御礼を言うと、老人は微笑みながら「マナの祝福を」と返してくれた。
ゆっくりと、教会の中に入る。ステンドグラスが眩く輝き、その真下には女神像が祀られている。マナは四大属性の精霊によって成り立っているが、精霊を生み出したとされる創造神の像が必ず教会には祀られてあるのだ。
何時もの席に座り、祈りを捧げる。少しずつ精神が研ぎ澄まされ、太陽の光からマナが体内に流れ込んでくるのを感じていく。カールも大人しく肩に乗ったまま、差し込む太陽の陽ざしをその身に受けていた。
数十分後、聞き慣れた足音が近付いてくる。目を開け振り返ると、そこに居たのはメルヴィーだった。
「メルヴィー様」
「お久しぶりですわね。レティシア様」
メルヴィーは隣に腰掛け、レティシアの肩に乗るカールの頭を撫でた。嬉しそうに目を細めるカールに、メルヴィーはご満悦のようだった。
「新婚旅行、どうでしたの?」
「とても楽しかったです。これ、メルヴィー様に差し上げます」
そう言いつつ、紙袋を手渡す。メルヴィーは袋を開けると、レティシアの方に向き直った。
「これ、貴女様とお揃いでは?」
「色違いですが、友人というのはお揃いを付けるものと窺ったので」
そう、今レティシアが胸に着けているのはメルヴィーに渡した青の花のコサージュとお揃いの、緑のコサージュだ。友人へのお土産と店員に話したら、貴族の中では友人にお揃いのものをプレゼントするのが流行っていると聞いて買ったのだ。
「嬉しいですわ。早速付けさせていただきます」
いそいそと胸に装着するメルヴィー。お揃いのコサージュに、レティシアは嬉しくなった。
「それと、メルヴィー様……」
「なんでしょうか?」
もじもじと照れくさそうにするレティシアに、メルヴィーは首を傾げて言葉を待つ。レティシアは深呼吸をし、言葉を発した。
「その、さん付けで呼んでもいいでしょうか!?」
顔を真っ赤にしながら、レティシアは告げる。メルヴィーはキョトンとした表情を向けたが、すぐににこやかに微笑んだ。
「……なら、私もそう呼ばせていただきますわ。レティシアさん」
「!」
まさかの了承に、レティシアは目を見開いた。嬉しさに、顔が綻ぶ。
「ありがとうございます……! メルヴィーさん」
「でも、少し照れくさいですわね」
「確かに」
そう言いあい、二人は小さく笑い合う。こんなにも嬉しいことが合っていいのだろうか。
「……ねえ」
突然、横から声がかけられた。
メルヴィーと二人、声の方向に視線を向けると、小さな少年がすぐ側に座っていた。
目的はメルヴィーに会うことだ。彼女は今も教会に瞑想に通っている。そこで今回の旅行のお土産を渡そうと思っている。レティシアは色違いの花のコサージュを大事そうに抱え、カールとカイラ、アティカと共に教会までの道のりを歩いた。
「なんだか、この道を歩くのも久しぶりな感じがするわ」
レティシアの言葉に、カールは「キュウ!」と鳴いた。
「そっか。カールは教会に行くのは初めてなのよね」
「ンキャウ」
肩に乗りながら、レティシアの頬に顔を摺り寄せるカール。瞑想の際は静かにして貰えれrバ大丈夫だろうと連れてきてしまったが、大丈夫だっただろうか――。
「レティシアお嬢、もしもの際はカールは私が預かり外で待機しております」
「ありがとう、アティカ」
レティシアの心配をすぐに察して、アティカが言葉を返してくれる。レティシアは微笑み、アティカに礼を述べた。
教会に着くと、中から犬を連れた老人が出てきた。咄嗟にレティシアは話しかける。
「あの、すみません」
「なんですかな?」
優しそうな老人に、レティシアは言葉をかける。
「教会の中は動物も入っても大丈夫なのですか?」
「大丈夫ですよ。大人しくしていれば咎められることもありません」
その言葉に、ホッとする。これでカールも教会に入ることが出来る。レティシアは老人に御礼を言うと、老人は微笑みながら「マナの祝福を」と返してくれた。
ゆっくりと、教会の中に入る。ステンドグラスが眩く輝き、その真下には女神像が祀られている。マナは四大属性の精霊によって成り立っているが、精霊を生み出したとされる創造神の像が必ず教会には祀られてあるのだ。
何時もの席に座り、祈りを捧げる。少しずつ精神が研ぎ澄まされ、太陽の光からマナが体内に流れ込んでくるのを感じていく。カールも大人しく肩に乗ったまま、差し込む太陽の陽ざしをその身に受けていた。
数十分後、聞き慣れた足音が近付いてくる。目を開け振り返ると、そこに居たのはメルヴィーだった。
「メルヴィー様」
「お久しぶりですわね。レティシア様」
メルヴィーは隣に腰掛け、レティシアの肩に乗るカールの頭を撫でた。嬉しそうに目を細めるカールに、メルヴィーはご満悦のようだった。
「新婚旅行、どうでしたの?」
「とても楽しかったです。これ、メルヴィー様に差し上げます」
そう言いつつ、紙袋を手渡す。メルヴィーは袋を開けると、レティシアの方に向き直った。
「これ、貴女様とお揃いでは?」
「色違いですが、友人というのはお揃いを付けるものと窺ったので」
そう、今レティシアが胸に着けているのはメルヴィーに渡した青の花のコサージュとお揃いの、緑のコサージュだ。友人へのお土産と店員に話したら、貴族の中では友人にお揃いのものをプレゼントするのが流行っていると聞いて買ったのだ。
「嬉しいですわ。早速付けさせていただきます」
いそいそと胸に装着するメルヴィー。お揃いのコサージュに、レティシアは嬉しくなった。
「それと、メルヴィー様……」
「なんでしょうか?」
もじもじと照れくさそうにするレティシアに、メルヴィーは首を傾げて言葉を待つ。レティシアは深呼吸をし、言葉を発した。
「その、さん付けで呼んでもいいでしょうか!?」
顔を真っ赤にしながら、レティシアは告げる。メルヴィーはキョトンとした表情を向けたが、すぐににこやかに微笑んだ。
「……なら、私もそう呼ばせていただきますわ。レティシアさん」
「!」
まさかの了承に、レティシアは目を見開いた。嬉しさに、顔が綻ぶ。
「ありがとうございます……! メルヴィーさん」
「でも、少し照れくさいですわね」
「確かに」
そう言いあい、二人は小さく笑い合う。こんなにも嬉しいことが合っていいのだろうか。
「……ねえ」
突然、横から声がかけられた。
メルヴィーと二人、声の方向に視線を向けると、小さな少年がすぐ側に座っていた。
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