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第三章
17 感謝を込めて
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賊を捕まえたことで、まさかのティリアの王宮に招待をされることとなってしまったレティシア達。ドレスもないとのことで断ろうとしたが、「ドレスは貸すから、是非とも礼を言わせて欲しい」と言われ、パーティーへの参加となってしまった。
ホテルに戻らず、真っすぐティアドルチェたちと共に王宮に馬車で向かうことになった。
「全く……とんだ新婚旅行になったもんだな」
エドワースの一言に、セシリアスタは溜息を吐いた。セシリアスタは嫌なのだろうか?
「セシル様、大丈夫ですか?」
「ん、ああ……大丈夫だ」
「大丈夫ですよ。コイツ、パーティーとかが苦手なだけなんで」
意外な言葉に、レティシアは目を丸くする。セシリアスタくらいの実力者ならパーティー慣れしていると思っていたが、どうやら考えを改める必要があるらしい。そんな事より、向かいに座るカイラとアティカが心配だ。
「二人とも、大丈夫?」
「ふぇっ!? だ、だだだ大丈夫じゃないです……」
「私達も参加しろとのことですが、良いのでしょうか? ただの侍女が参加なんてしてしまって……」
不安げな二人に、セシリアスタは小さく溜息を吐きながら答える。
「先方の要望だ。二人も参加しなさい」
「ひゃいい……」
あわあわと慌てるカイラと不安げな表情のアティカ。五人全員をパーティーに誘う国王とは、どんな人なのだろうか――。
ティリスの王宮に着き、キャリッジから降りる。城の裏手には切り立った断崖がそびえ、周辺には蔦植物が幾重にも覆っている。まるで城を崖崩れから守るような植物の生え方に驚きつつ、レティシアはフランカたちについて行った。
「ここでお着換えください」
レティシア達が通されたのは、大量のドレスが置かれた試着室だった。中には使用人が配備され、決まったら即座にお召し変えしますと言わんばかりの人達だった。
「あ、あの……」
「どうかしましたか?」
使用人に、カイラが話しかける。カイラとアティカは困惑していた。
「私達、使用人なんでこういったものは……」
「国王陛下からの命令ですので、どうぞお好きなものを選んでください」
「ぅええ……」
カイラにかけられた言葉に、アティカは諦めたのかドレスを選び出す。だが、どれが自分に合うのかわからない。そんなアティカとカイラには使用人が張りつき、ドレスの選別から手伝って貰っていた。かくいうレティシアも、部屋一面にあるドレスの中から選ぶのは難しい。悩んでいると、一人の使用人が近付いてきた。
「こちらは如何ですか?」
淡い紫のローブ・デコルテを差し出される。ネックラインが大きくカットされ、首筋から胸、背中が大きく露出されたドレスだ。床に着きそうな丈の部分にはふんだんにフリルがあしらわれ、シンプルながらも綺麗なドレスだった。
「では、これにいたします」
「かしこまりました。ではあちらの試着場に」
「はい」
カイラとアティカが未だ選んでいる中、先にレティシアはドレスに袖を通しだす。アームロングの手袋を付け、髪を結い上げて貰う。髪飾りはダグラス製の布で出来た同色の薔薇の飾りを付けられ、首にはネックレスを下げて貰う。化粧を施され、レティシアは準備完了だ。
化粧を施して貰っている間に、カイラもアティカもドレスが決まったようだ。カイラは紺の大きな襟ぐりとパフ・スリーブが際立ったエンパイア・ドレス。アティカは胸と腰を強調した、水色のアワーグラス・ドレスだ。髪を整えて貰い、化粧を施されると、見違えるほど綺麗になった。
「二人とも凄く綺麗よ」
「うう……恥ずかしいですよ」
「確かに、慣れないことはしないに限るわ」
そう言う二人だが、どこか楽しそうで、レティシアは小さく微笑んだ。
ホテルに戻らず、真っすぐティアドルチェたちと共に王宮に馬車で向かうことになった。
「全く……とんだ新婚旅行になったもんだな」
エドワースの一言に、セシリアスタは溜息を吐いた。セシリアスタは嫌なのだろうか?
「セシル様、大丈夫ですか?」
「ん、ああ……大丈夫だ」
「大丈夫ですよ。コイツ、パーティーとかが苦手なだけなんで」
意外な言葉に、レティシアは目を丸くする。セシリアスタくらいの実力者ならパーティー慣れしていると思っていたが、どうやら考えを改める必要があるらしい。そんな事より、向かいに座るカイラとアティカが心配だ。
「二人とも、大丈夫?」
「ふぇっ!? だ、だだだ大丈夫じゃないです……」
「私達も参加しろとのことですが、良いのでしょうか? ただの侍女が参加なんてしてしまって……」
不安げな二人に、セシリアスタは小さく溜息を吐きながら答える。
「先方の要望だ。二人も参加しなさい」
「ひゃいい……」
あわあわと慌てるカイラと不安げな表情のアティカ。五人全員をパーティーに誘う国王とは、どんな人なのだろうか――。
ティリスの王宮に着き、キャリッジから降りる。城の裏手には切り立った断崖がそびえ、周辺には蔦植物が幾重にも覆っている。まるで城を崖崩れから守るような植物の生え方に驚きつつ、レティシアはフランカたちについて行った。
「ここでお着換えください」
レティシア達が通されたのは、大量のドレスが置かれた試着室だった。中には使用人が配備され、決まったら即座にお召し変えしますと言わんばかりの人達だった。
「あ、あの……」
「どうかしましたか?」
使用人に、カイラが話しかける。カイラとアティカは困惑していた。
「私達、使用人なんでこういったものは……」
「国王陛下からの命令ですので、どうぞお好きなものを選んでください」
「ぅええ……」
カイラにかけられた言葉に、アティカは諦めたのかドレスを選び出す。だが、どれが自分に合うのかわからない。そんなアティカとカイラには使用人が張りつき、ドレスの選別から手伝って貰っていた。かくいうレティシアも、部屋一面にあるドレスの中から選ぶのは難しい。悩んでいると、一人の使用人が近付いてきた。
「こちらは如何ですか?」
淡い紫のローブ・デコルテを差し出される。ネックラインが大きくカットされ、首筋から胸、背中が大きく露出されたドレスだ。床に着きそうな丈の部分にはふんだんにフリルがあしらわれ、シンプルながらも綺麗なドレスだった。
「では、これにいたします」
「かしこまりました。ではあちらの試着場に」
「はい」
カイラとアティカが未だ選んでいる中、先にレティシアはドレスに袖を通しだす。アームロングの手袋を付け、髪を結い上げて貰う。髪飾りはダグラス製の布で出来た同色の薔薇の飾りを付けられ、首にはネックレスを下げて貰う。化粧を施され、レティシアは準備完了だ。
化粧を施して貰っている間に、カイラもアティカもドレスが決まったようだ。カイラは紺の大きな襟ぐりとパフ・スリーブが際立ったエンパイア・ドレス。アティカは胸と腰を強調した、水色のアワーグラス・ドレスだ。髪を整えて貰い、化粧を施されると、見違えるほど綺麗になった。
「二人とも凄く綺麗よ」
「うう……恥ずかしいですよ」
「確かに、慣れないことはしないに限るわ」
そう言う二人だが、どこか楽しそうで、レティシアは小さく微笑んだ。
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