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15 突然の来訪

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 それは、領地管理を任されるようになり、だいぶ慣れだした頃のことだった。

 一通の手紙が、ユナ宛てに届いた。

 差出人は両親。嫌な予感がしつつも、机の引き出しからペーパーナイフを取り出し、丁寧に封を開けた。

 一枚だけの手紙には、たった一言『帰ってこい』とだけ書かれていた。

 戻るのは簡単だろう。だが、自分はもうグラヴィス家の人間。ロイド様の許可なくして勝手な行動は許されない。仕方なく、夜に彼が戻って来た時に聞いてみよう。




 夜、帰って来たロイドに、手紙のことを話してみた。食事の手を止め、彼は険しい表情を浮かべた。
「……ユナ、お前は戻るのか?」

 何かを押し殺したような声で訊ねる彼に、私は首を横に振る。

「私はこの屋敷に来る際、二度とリリーベル家に関わるなと言われています。屋敷に戻ってくるなと言ったのは両親です。ですので、私に戻る気はありません」
 
 勘当同然で追い出された以上、今更、戻るはない。
 
 はっきりと意思表示をすると、「そうか」と言い彼は食事を再開しだした。

「仮に再び届いたとしても、無視しておけ」
「わかりました」

 彼の言葉に、内心ホッとする。戻れと言われたらどうしようと、若干の不安はあったのだ。

 安堵したことに気付かれてしまったのか、ロイドは小さく口角を上げ微笑む。

「安心しろ。君の家は既にここだ」

 その言葉に、表情がゆるんだ。




 同様の手紙が届く。ユナは言われた通り、無視を決め込んだ。仮に断りの返事を書いても、執拗に戻って来いと手紙が届くと思えたからだ。

 そんなことが三度続いたある日、屋敷へと招待無き客人がやって来た。
 父とシーカ、ヴァリスの三人だった。事前の連絡もなくやって来たことに、驚きと呆れを覚え深く溜め息をつく。門番をしているフットマンからの連絡では、どうやら私に用があってきたとのことだ。

「非常識な輩など放っておきましょう」

 憤慨する侍従長意見に賛同したいが、窓から見る限りフットマン達を押し退けてまででも屋敷へ来そうな雰囲気がする。

「……一応、応対します」
「奥様っ」
「その上で、お引き取り願います。侍従長さん、一応ロイド様にご連絡をお願いします」

 覚悟を決めた目で見つめると、彼は「……承知しました」と重々承諾してくれた。





 三人を屋敷の応接間に通させる。数分後、その扉の前でユナは深呼吸をし、呼吸を整えておく。

 もう会うことはないと思っていたのに、急になんだというのだろうか?

 意を決し、扉を開けた。


「お待たせしました」

 そう言うや否や、ずかずかと父が近付いてきて、腕を掴む。痛みに顔を歪めている間に、部屋から連れ出されかけた。

「止めてください!」

 拒絶の声に反応し、部屋の外で待機していた使用人達が入ってきて父の手を引き剥がしてくれる。そして、私を守るように庇ってくれた。

「……何故、ここに来たのですか」

 先程の無礼もあるが、一番に聞かねばならないことはある。するとヴァリスが椅子から立ち上がり、父の横に来た。

「それに関しては、僕から話すよ」

 不機嫌を露わにこちらを睨む父でも、我関せずな態度を取るシーカでもなく、ヴァリスが事の経緯を話し出した。
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