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はじまりは、あの日
51.あなたとの未来
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ニュース番組は、今日何度目かの特集を流す。
テレビ画面の向こうの真斗さんは支援者と一緒に万歳をして、笑顔を振りまいている。
仕事モードの真斗さんは、男から見てもかっこいい。でも、だからこそ、真斗さんと俺では、やっぱり住む世界が違うのでは?と感じてしまう。
今日に向けて真斗さんには内緒で準備をしていたが、やっぱり辞めた方がいいかもしれないと後ろ向きな考えが頭をよぎる。
そんな暗い気持ちになりかけていた俺の頬を誰かがつつく。
いや、誰かなんて、一人しかいないけど…
「ねぇ。テレビ楽しい?」
「楽しくはないけど、嬉しい?』
「ふふっ。何で疑問系なの?」
「んー。真斗さんの再当選はおめでたいし、嬉しいんだ。」
真斗さんは、不祥事発覚から1年間、その後始末をしっかりし、今回市長に再当選したのだ。どの局も、若い市長の再選を大々的に報じ、コメンテーターは皆、真斗さんに期待するコメントをしていた。
「でも、真斗さんはやっぱ遠い世界の人なのかもって思って、少し不安になってた」
選挙が終わってから1週間、そんな情報に触れ続けていたせいか、俺は少し弱気になっていた。
隠した所で見抜かれるのだからと、心のうちを曝け出すと、真斗さんは
「2年も付き合っているんだよ?俺は一臣君以外考えられないから」
ソファに並んで座っていた真斗さんが俺の右肩に頭を乗せ、俺の手に真斗さんの左手が重ねられる。真斗さんのぬくもりに、少しホッとする。
俺達が交際して2年が経った。お互いの仕事の都合で、中距離恋愛なのは変わらずだ。
-そうだ。真斗さんがおれで良いって言ってくれてるんだから、弱気になるな。
今からやろうとしている事に、弱腰になりそうな自分に喝を入れる。
緊張のせいか口はカラカラに乾燥してるし、手の平はしっとり汗ばむ。
俺はパンツのポケットから準備していたものをとる。そして、俺の手に重ねられた真斗さん左手を両手で包みこむ。
「真斗さん」
「え?どうしたの?」
真面目な声に真斗さんは少し戸惑った声をあげる。俺は準備したある物を真斗さんの薬指に通す。
「えっ…一臣くん、これって」
真斗さんは左手の薬指を見て、たちまち目を潤ませる。小さなダイヤがあしらわれたらシンプルなシルバーリングは、思った通り真斗さんに似合っている。
俺は真斗さんの目をしっかり見て
「幸せなときは笑い合って、辛いときは支えあっていきたい。真斗さんがいない人生は、もう考えられない。だから俺と家族になってくれませんか?」
一世一代の愛の告白をした。
「…っ!なるっ!一臣君の家族になる」
真斗さんは涙を流して俺に抱きつく。
声を震わせ、俺のプロポーズを受け入れる返事をくれた。
「緊張した…見て、手汗すごいの」
「ふふっ、本当だ」
真斗さんを抱きしめたら、体から力が抜ける。緊張で思ったより、強張っていたみたいだ。真斗さんのおでこに、俺のおでこをくっつけて、真斗さんの手のひらに自分のものを重ねる。
真斗さんは、しっとり濡れた俺の手のひらを撫でて、はにかむ。
「届け出いつ出す?」
「明日、各所に報告するから、それが終わったらすぐ出したい」
俺の質問に、真斗さんが答える。
そして、視線が交わるとどちらともなく唇を重ねた。
死が二人を分つまで
ずっと、ずっと一緒だよ。
もう離してやらないから。
fin
テレビ画面の向こうの真斗さんは支援者と一緒に万歳をして、笑顔を振りまいている。
仕事モードの真斗さんは、男から見てもかっこいい。でも、だからこそ、真斗さんと俺では、やっぱり住む世界が違うのでは?と感じてしまう。
今日に向けて真斗さんには内緒で準備をしていたが、やっぱり辞めた方がいいかもしれないと後ろ向きな考えが頭をよぎる。
そんな暗い気持ちになりかけていた俺の頬を誰かがつつく。
いや、誰かなんて、一人しかいないけど…
「ねぇ。テレビ楽しい?」
「楽しくはないけど、嬉しい?』
「ふふっ。何で疑問系なの?」
「んー。真斗さんの再当選はおめでたいし、嬉しいんだ。」
真斗さんは、不祥事発覚から1年間、その後始末をしっかりし、今回市長に再当選したのだ。どの局も、若い市長の再選を大々的に報じ、コメンテーターは皆、真斗さんに期待するコメントをしていた。
「でも、真斗さんはやっぱ遠い世界の人なのかもって思って、少し不安になってた」
選挙が終わってから1週間、そんな情報に触れ続けていたせいか、俺は少し弱気になっていた。
隠した所で見抜かれるのだからと、心のうちを曝け出すと、真斗さんは
「2年も付き合っているんだよ?俺は一臣君以外考えられないから」
ソファに並んで座っていた真斗さんが俺の右肩に頭を乗せ、俺の手に真斗さんの左手が重ねられる。真斗さんのぬくもりに、少しホッとする。
俺達が交際して2年が経った。お互いの仕事の都合で、中距離恋愛なのは変わらずだ。
-そうだ。真斗さんがおれで良いって言ってくれてるんだから、弱気になるな。
今からやろうとしている事に、弱腰になりそうな自分に喝を入れる。
緊張のせいか口はカラカラに乾燥してるし、手の平はしっとり汗ばむ。
俺はパンツのポケットから準備していたものをとる。そして、俺の手に重ねられた真斗さん左手を両手で包みこむ。
「真斗さん」
「え?どうしたの?」
真面目な声に真斗さんは少し戸惑った声をあげる。俺は準備したある物を真斗さんの薬指に通す。
「えっ…一臣くん、これって」
真斗さんは左手の薬指を見て、たちまち目を潤ませる。小さなダイヤがあしらわれたらシンプルなシルバーリングは、思った通り真斗さんに似合っている。
俺は真斗さんの目をしっかり見て
「幸せなときは笑い合って、辛いときは支えあっていきたい。真斗さんがいない人生は、もう考えられない。だから俺と家族になってくれませんか?」
一世一代の愛の告白をした。
「…っ!なるっ!一臣君の家族になる」
真斗さんは涙を流して俺に抱きつく。
声を震わせ、俺のプロポーズを受け入れる返事をくれた。
「緊張した…見て、手汗すごいの」
「ふふっ、本当だ」
真斗さんを抱きしめたら、体から力が抜ける。緊張で思ったより、強張っていたみたいだ。真斗さんのおでこに、俺のおでこをくっつけて、真斗さんの手のひらに自分のものを重ねる。
真斗さんは、しっとり濡れた俺の手のひらを撫でて、はにかむ。
「届け出いつ出す?」
「明日、各所に報告するから、それが終わったらすぐ出したい」
俺の質問に、真斗さんが答える。
そして、視線が交わるとどちらともなく唇を重ねた。
死が二人を分つまで
ずっと、ずっと一緒だよ。
もう離してやらないから。
fin
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