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はじまりは、あの日
35.きっと side.K
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心地いい温もりの中、微睡から覚めると連日の寝不足で重かった体が、深く眠れたからか軽く感じる。
そして寝息をたてて眠っていても抱きしめてくれてる田浦くんが愛しくて胸がいっぱいになる。
「俺が君をどれだけ好きか知らないでしょ?」
眠っているのをいい事に、普段は素直に言えないことを口に出す。
田浦君の好意は感じるし、それを疑っている訳ではない。でも想いを受け入れた後に、また昔みたいに捨てられたら。そう考えるとあと一歩が踏み出せない。何も考えずに、この腕に飛び込めたら幸せなのに。
第一恋愛に振り回されたくないと意地を張ってるなんて、いい年して何してるんだと自分でも思う。告白を断った後も、追ってくる田浦くんが俺だけを見てくれる様に、体で繋ぎとめようとして、でも躱されて。
わざと振ったビールだけを用意して溢して服を脱いだら手を出してくるかな?とか、濡れ場がある話題の映画を一緒に見たらその気になるかな?と狡いやり方でアプローチしたものは、全部上手く行かなかった。
結局、素直に好きとは言えてはいないけど、想いを伝えるのが一番の近道だった。優しい彼は、こんな面倒な俺を受け入れて待つと言ってくれた。それで彼にとてつもなく愛されてることを実感して、嬉しくて。彼と居ると幸せで満たされて、過去の失恋が少しずつ癒されていった。
だから、彼が女の子、もとい上司の息子さんと一緒にいる所を目撃したときに裏切られた気持ちになった。俺が立ち直るまで待つって言ったのに、やっぱり女の子の方がいいの?と心の中で彼を詰った。恋人ではないから、俺には彼を縛る権利なんてないのに。そんな嫉妬を彼にぶつけたら、俺の勘違いだと分かって安心したと同時にこのままじゃダメだ誰かに取られてしまうと危機感を抱いた。でも疲労困憊で弱ってる心は想いを伝えるよりも甘えることを優先してしまい、今に至ると。
いざ告白しようと思っても、及び腰になっている自分もいる。それにすぐに告白して両思いになっても、暫くは会えないと思うと寂しい気もする。それなら、落ち着いてからシチュエーションを整えてにしようと逃げの結論に達する。そして、今はまだ言葉では伝えられない愛しさを彼に察してもらいたくて、眠る彼の唇を啄んだ。
田浦くんが好き。愛してる。
今にも溢れ出しそうな彼への想いが胸のうちに広がる。きっと、これを幸せと呼ぶのだろうと思った。
* * *
出発の準備をし玄関で二人とも靴を履き顔を見合わせる。
「川奈さん、いってらっしゃい。無理しないでね。」
「行ってきます。落ち着いたらすぐ連絡するね。だから、余所見しないでいい子で待ってて。」
「川奈さん以外目に入らないから、大丈夫だよ。だから次会った時には、たくさん甘やかしてね。」
甘く囁かれチュッと触れるだけのキスが落とされる。しばらく会えないかもしれないと思うと、物寂しくて田浦くんの首に腕を回す。
「もう一回して」
「もう。そんな可愛いこといわれると、仕事行かせたくなくなっちゃう。」
「ふっ…んっ」
田浦くんは困った顔をしてそう言うと、さっきよりも深いキスをされる。彼の舌に自分の舌を絡め、貪る様に彼を味わう。チュパッチュッとリップ音をたて夢中で互いを感じ合って、唇を離すと名残惜しそうに銀の糸が二人を繋ぎプツリと切れる。
「今日はこれ以上すると我慢できなくなりそうだから。代わりに次のデートでは、覚悟してて」
「うん。」
「じゃあ、行こっか。」
きつく抱きしめられ、囁かれた内容に期待で胸が膨らむ。離れがたい気持ちを抱えつつも、田浦くんに促され二人一緒に家を出発する。
* * *
役所の駐車場に車を停め、降りようとした時に携帯からメッセージが入った通知音がなる。
「えっ…なんで」
確認すると意外すぎる人物の名前が表示されていて、思わず声がでる。俺ばかりが想い続けてもう二度と連絡なんてないと思っていたのに。なぜ、今更になって。
"良平"
画面には、結婚すると言って俺を振った元彼の名前が表示されていた。
そして寝息をたてて眠っていても抱きしめてくれてる田浦くんが愛しくて胸がいっぱいになる。
「俺が君をどれだけ好きか知らないでしょ?」
眠っているのをいい事に、普段は素直に言えないことを口に出す。
田浦君の好意は感じるし、それを疑っている訳ではない。でも想いを受け入れた後に、また昔みたいに捨てられたら。そう考えるとあと一歩が踏み出せない。何も考えずに、この腕に飛び込めたら幸せなのに。
第一恋愛に振り回されたくないと意地を張ってるなんて、いい年して何してるんだと自分でも思う。告白を断った後も、追ってくる田浦くんが俺だけを見てくれる様に、体で繋ぎとめようとして、でも躱されて。
わざと振ったビールだけを用意して溢して服を脱いだら手を出してくるかな?とか、濡れ場がある話題の映画を一緒に見たらその気になるかな?と狡いやり方でアプローチしたものは、全部上手く行かなかった。
結局、素直に好きとは言えてはいないけど、想いを伝えるのが一番の近道だった。優しい彼は、こんな面倒な俺を受け入れて待つと言ってくれた。それで彼にとてつもなく愛されてることを実感して、嬉しくて。彼と居ると幸せで満たされて、過去の失恋が少しずつ癒されていった。
だから、彼が女の子、もとい上司の息子さんと一緒にいる所を目撃したときに裏切られた気持ちになった。俺が立ち直るまで待つって言ったのに、やっぱり女の子の方がいいの?と心の中で彼を詰った。恋人ではないから、俺には彼を縛る権利なんてないのに。そんな嫉妬を彼にぶつけたら、俺の勘違いだと分かって安心したと同時にこのままじゃダメだ誰かに取られてしまうと危機感を抱いた。でも疲労困憊で弱ってる心は想いを伝えるよりも甘えることを優先してしまい、今に至ると。
いざ告白しようと思っても、及び腰になっている自分もいる。それにすぐに告白して両思いになっても、暫くは会えないと思うと寂しい気もする。それなら、落ち着いてからシチュエーションを整えてにしようと逃げの結論に達する。そして、今はまだ言葉では伝えられない愛しさを彼に察してもらいたくて、眠る彼の唇を啄んだ。
田浦くんが好き。愛してる。
今にも溢れ出しそうな彼への想いが胸のうちに広がる。きっと、これを幸せと呼ぶのだろうと思った。
* * *
出発の準備をし玄関で二人とも靴を履き顔を見合わせる。
「川奈さん、いってらっしゃい。無理しないでね。」
「行ってきます。落ち着いたらすぐ連絡するね。だから、余所見しないでいい子で待ってて。」
「川奈さん以外目に入らないから、大丈夫だよ。だから次会った時には、たくさん甘やかしてね。」
甘く囁かれチュッと触れるだけのキスが落とされる。しばらく会えないかもしれないと思うと、物寂しくて田浦くんの首に腕を回す。
「もう一回して」
「もう。そんな可愛いこといわれると、仕事行かせたくなくなっちゃう。」
「ふっ…んっ」
田浦くんは困った顔をしてそう言うと、さっきよりも深いキスをされる。彼の舌に自分の舌を絡め、貪る様に彼を味わう。チュパッチュッとリップ音をたて夢中で互いを感じ合って、唇を離すと名残惜しそうに銀の糸が二人を繋ぎプツリと切れる。
「今日はこれ以上すると我慢できなくなりそうだから。代わりに次のデートでは、覚悟してて」
「うん。」
「じゃあ、行こっか。」
きつく抱きしめられ、囁かれた内容に期待で胸が膨らむ。離れがたい気持ちを抱えつつも、田浦くんに促され二人一緒に家を出発する。
* * *
役所の駐車場に車を停め、降りようとした時に携帯からメッセージが入った通知音がなる。
「えっ…なんで」
確認すると意外すぎる人物の名前が表示されていて、思わず声がでる。俺ばかりが想い続けてもう二度と連絡なんてないと思っていたのに。なぜ、今更になって。
"良平"
画面には、結婚すると言って俺を振った元彼の名前が表示されていた。
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