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はじまりは、あの日

6.モヤモヤと下剋上

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「は?セクハラで訴えますよ?」

公職についている人が何をふざけたことを言っているんだと受け流す

「つれないなぁ。昨日だって、お昼一緒に食べようって言ったのに、さっさと断って帰っちゃうし。」

「うちは、そういうのはNGなんで。」

「あーあ、初対面の時に真っ赤になってた可愛い田浦君はどこいっちゃったのかなー」

チラリとこちらを見ながら言うので、ずっと、あの件で揶揄われるは勘弁と思い

「あれは、ああいう状況だったから仕方ないじゃないですか!生理的な反応です!川奈さんこそ、あの件でクレーム入れないで、逆に専属指名してくるって、あり得ないじゃないですか!」と苦し紛れの反論をした。

「いやいや、『一人でシているとこを見られたんですけど!』ってクレーム入れたら、結局俺が恥かくだけじゃん。それなら、専属指名しちゃった方が、守秘義務があるから口外なんて出来ないでしょ?」

と最もらしい理由を言うとソファから立ち上がり、俺の肩に手を置き耳元で

「俺のオナニー見て、興奮して顔赤くしてたんだね。いい事聞いちゃった。」と囁く。

「…っ!」耳元で囁かれたことよりも、言われた内容にドキリとして、耳をふさぎ、咄嗟に川奈さんの体を押し返す。

「田浦くんは、やっぱり可愛いね」唇に指をのせクスクス笑いながら言ってくる。

その仕草が色っぽいっと思ってしまう俺は、あの時から思考がバグってしまっているのだろう。

「Yシャツ!…洗うんですよね?早く洗濯機にいれちゃってください!」

「はいはーい。」と返事をし、脱衣所に向かう背中を見て、ホッと一息をつく。

離れられてよかった。また体が誤作動を起こしてしまうかと思った。
そんなことになれば、聡い彼は気づいて、また何をされるか分かったもんじゃない。
と考えた自分の頭を疑った。

何かされるって予測してるって、どういうことだよ。期待してるみたいじゃん。

「勘弁してくれよ。」きっと揶揄われているだけで、それ以上の意図はないはずだ。

俺だけがペースを乱され空回りしている状況に少し胸の苦しさを感じた気がしたが、まだ気づかないふりをすることにした。

* * *


専属指名になってから早2週間が経った。
川奈さんが在宅の時は、あの調子で揶揄われ、俺ばかり動揺させられ、もどかしい思いを募らせていた。

曇天で月が隠れた暗い夜道を運転しマンションの駐車場に社用車を停め、荷物を取り出し、部屋に向かう。
大学が近いため住人も学生が多い様で、宅飲みの買い出しの袋を下げたグループをよく見る。
部屋の鍵を開け中に入ると、こぢんまりした1LDKの部屋が迎えてくれる。

30代の独身男性、ましてや市長を務めている人物が住むには、すこし不釣あいな気がすると、川奈さんの正体をしってからは思っていた。

まぁ、掃除をするこちらとしては楽で助かるから良いけど。

掃除に取り掛かっていると、ポツポツと雨が降り始めた音がした。

「田浦くーん!」玄関から川奈さんの呼ぶ声がして、そちらに向かうと、

「え?なんでそんなに濡れてるんですか?」
頭の先からつま先まで全身びしょ濡れになった川奈さんが立っていた。

「役所でてすぐに雨が強くなってさ。おかげでびしょびしょ。流石に、これで家に入りたくないから、寝室からバスローブ持ってきて。」と理由を淡々と話しながら、腕をさすっている様子を見るに体が冷えたのだろう。

返事をして急いでバスローブを持っていくと、Yシャツのボタンを外し終え、
「濡れて脱ぎずらい。」と顰めっ面をしている。

「脱ぐの手伝いますか?」

悪戦苦闘している様子を見兼ね、そういうと一瞬驚いた顔をしたが、

「お願い。」と言い格闘していたYシャツの裾から手を離した。

背中を向けてもらい、首の襟首部分を下ろしていき肩、腕と抜いていく。

「体、冷えてますね。」 

イタズラのつもりで、Yシャツを脱がせ、露わになった背中を指でなぞると、

「ひゃっ」

意外な声を上げ、こちらに体を向き直り睨みつけてくる。
川奈さんの弱点を見つけ、少し楽しくなってきた。
 
いつも俺ばかりやられているから、今日くらいはと、抱き抱える様に背中に手を回す。

「田浦くん!」

川奈さんが静止の声をあげ、胸を押し返してくるが気にせず指先が触れるか触れないか位の強さで、背中を撫でる。

「あっ…やっ…、っダメ」

声を上げながら刺激から逃れようと体を捩り俺の腕から逃れようとするが、それは許さない。

「んっ…あっ…もう、やっ、」

指を這わせていくうちに、呼吸が絶え絶えになり、聞こえる声には熱が帯び始める。

俺も、川奈さんの声にあてられ体の中心に血液が集まり、その硬さを増していく。
下半身を押し当てると、川奈さんのそれも頭をもたげ、存在を主張し始めていた。

「これ、苦しくないですか?」

抱きしめる力は緩めず、硬くなったものを手の甲で撫でた。











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