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31.あなたじゃなきゃ
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「ツィーリィは僕の妃だから、男爵家に戻るには離縁しなきゃいけないでしょ?でも僕は離縁する気はないよ」
「それは…」
殿下の言葉を都合よく受け取ってしまいそうになり、改めて聞き直す。
「僕の側にずっと居て欲しい。シアー卿から解放されても、僕はツィーリィを手放す気はない」
直接的な言葉は一切ないけど、離さないと言われ胸が高鳴る。
「私はあなたを手にかけようとしたのに、側にいて居てもいいのですか?」
「あれはツィーリィの意思じゃないでしょ。でも、確かにあの時、泣きそうな顔で僕を慰めてくれた君だから側に居て欲しいと思ったんだ」
暗殺を失敗した直後、私は殿下から折檻を受けた。その時、私を責めている殿下の方が辛く泣きそうな顔をしていたから、思わず慰めたんだ。そしたらその後すぐに、殿下の態度が急変して戸惑ったのを思い出した。
あの時は二人揃って泣きそうな顔をしていたらしい。
「他の誰かじゃダメなんだ。ツィーリィ、君がいい。ツィーリィは僕じゃイヤ?」
殿下は私の手をギュッと握り、真っ直ぐ見つめる。その顔は真剣そのもので、殿下の言葉に嘘がないのが分かった。
「私も…殿下がいいです。殿下じゃなきゃ、嫌」
全てを言い終わる前に殿下に体を引き寄せられ、殿下の腕に包み込まれた。
「ツィーリィ……。愛してる」
殿下はそう言うと、私の頬に手を添える。
殿下に真っ直ぐ見つめられ、くすぐったい照れた気持ちになり、目をつぶる。
すると、唇に何か柔らかなものが触れた。殿下は私の頬を指で撫で、唇を重ね合わせる。
「ツィーリィ……」
殿下に名前を呼ばれ、目を開くと殿下の整った顔が間近に見え心臓が、忙しなく脈打つ。初めてのキスのドキドキも相まって、殿下の顔を見ることができず、ギュッと目を瞑った。
「顔が真っ赤になってる。可愛い」
殿下は私の頬を撫でてから、前髪を掻き分ける。そしてあらわになった額に軽くキスをしてから、再び唇を重ねた。でも、さっきまでの軽いキスではなく、食べられてしまいそうな程、深いキスだった。
「ん……」
唇の柔らかさを確かめるように喰むようにキスをされる。しばらくその状態が続き息苦しさから少し唇を開いた。するとその隙を見逃さず、殿下は舌を割り込ませてきた。
「んん……!」
思わず殿下の胸にしがみついた。そして深い口づけに溺れる。でも全然嫌じゃなくて、むしろ気持ちいいくらいで……私はいつしか夢中になっていた。
どれぐらい口づけを交わしていたのか分からないけど、気づくとソファに押し倒されていた。
「ツィーリィ……」
熱っぽく私を見つめる殿下の瞳にドキッと心臓が跳ねる。
「殿下…」
「殿下じゃなくて名前で呼んで」
殿下が私の額に自分の額を合わせ、甘えた声音で言う。
「ラヴェル…様」
「ふふっ。様もいらない。もう一回呼んで」
殿下の温もり、声、香りに、心は反応し鼓動は高鳴る。
「ラヴェル…」
「あぁっ、可愛いなぁっ!もうっ」
照れくさくて、か細い声になったが、しっかり殿下には聞こえたみたいで、彼は私をギュッと抱きしめた。そして
「ツィーリィ、君に触れてもいい?」
耳元で囁くように問いかけた。
「それは…」
殿下の言葉を都合よく受け取ってしまいそうになり、改めて聞き直す。
「僕の側にずっと居て欲しい。シアー卿から解放されても、僕はツィーリィを手放す気はない」
直接的な言葉は一切ないけど、離さないと言われ胸が高鳴る。
「私はあなたを手にかけようとしたのに、側にいて居てもいいのですか?」
「あれはツィーリィの意思じゃないでしょ。でも、確かにあの時、泣きそうな顔で僕を慰めてくれた君だから側に居て欲しいと思ったんだ」
暗殺を失敗した直後、私は殿下から折檻を受けた。その時、私を責めている殿下の方が辛く泣きそうな顔をしていたから、思わず慰めたんだ。そしたらその後すぐに、殿下の態度が急変して戸惑ったのを思い出した。
あの時は二人揃って泣きそうな顔をしていたらしい。
「他の誰かじゃダメなんだ。ツィーリィ、君がいい。ツィーリィは僕じゃイヤ?」
殿下は私の手をギュッと握り、真っ直ぐ見つめる。その顔は真剣そのもので、殿下の言葉に嘘がないのが分かった。
「私も…殿下がいいです。殿下じゃなきゃ、嫌」
全てを言い終わる前に殿下に体を引き寄せられ、殿下の腕に包み込まれた。
「ツィーリィ……。愛してる」
殿下はそう言うと、私の頬に手を添える。
殿下に真っ直ぐ見つめられ、くすぐったい照れた気持ちになり、目をつぶる。
すると、唇に何か柔らかなものが触れた。殿下は私の頬を指で撫で、唇を重ね合わせる。
「ツィーリィ……」
殿下に名前を呼ばれ、目を開くと殿下の整った顔が間近に見え心臓が、忙しなく脈打つ。初めてのキスのドキドキも相まって、殿下の顔を見ることができず、ギュッと目を瞑った。
「顔が真っ赤になってる。可愛い」
殿下は私の頬を撫でてから、前髪を掻き分ける。そしてあらわになった額に軽くキスをしてから、再び唇を重ねた。でも、さっきまでの軽いキスではなく、食べられてしまいそうな程、深いキスだった。
「ん……」
唇の柔らかさを確かめるように喰むようにキスをされる。しばらくその状態が続き息苦しさから少し唇を開いた。するとその隙を見逃さず、殿下は舌を割り込ませてきた。
「んん……!」
思わず殿下の胸にしがみついた。そして深い口づけに溺れる。でも全然嫌じゃなくて、むしろ気持ちいいくらいで……私はいつしか夢中になっていた。
どれぐらい口づけを交わしていたのか分からないけど、気づくとソファに押し倒されていた。
「ツィーリィ……」
熱っぽく私を見つめる殿下の瞳にドキッと心臓が跳ねる。
「殿下…」
「殿下じゃなくて名前で呼んで」
殿下が私の額に自分の額を合わせ、甘えた声音で言う。
「ラヴェル…様」
「ふふっ。様もいらない。もう一回呼んで」
殿下の温もり、声、香りに、心は反応し鼓動は高鳴る。
「ラヴェル…」
「あぁっ、可愛いなぁっ!もうっ」
照れくさくて、か細い声になったが、しっかり殿下には聞こえたみたいで、彼は私をギュッと抱きしめた。そして
「ツィーリィ、君に触れてもいい?」
耳元で囁くように問いかけた。
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