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12.幕引き?と噛み跡
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仰向けの私に殿下が馬乗りになり、両手首は強い力でベッドに縫い付けられている。
「……」
やっと、自分が最悪な状況に陥っていることに理解し、何か言わなければと思うも、言葉が出てこない。
「自分が何した分かってる?」
そんな私の様子に痺れを切らした殿下が今まで聞いたことのない低く冷たい声で言う。
その声をきいて背中がすぅっと冷たくなる。
「…っ!ケホッケホッ」
自分が何をしたかは嫌でも分かっている。
ただ、それを言葉に出そうとすると、あの人の盟約がそれを阻み喉を焼き切ろうとする。言葉を出せずに咳き込む私を見下ろす表情を不愉快そうに歪めると手首を掴む力が強くなる。
「いっ」痛みに思わず声が出る。
「僕の気が変わらないうちに早く何か言い訳してごらんよ。」と
次は、夜着の隙間から手を差し込み、お腹に無遠慮に爪をたてる。
「い"っ」
何か言いたいけど、冷静さを欠いた思考は上手く纏まらず、相応しい言葉が見つからない。
「何にも言う気がないなら、嫌でも言いたくなる様にしてあげるよ。」
その台詞に嫌な予感がして、殿下の動きを目で追ってしまう。
殿下は、私の喉元に顔を近づけ上目遣いでこちらを見た後、そこに思い切り噛みついた。
「いたいっ!」
痛みに思わず、声がでてしまう。
殿下は私の様子を気にすることなく、
「少し、血がでちゃったけど、君がやろうとしたことに比べたら、可愛いもんだよね?」と冷めた顔で言う。
普段の優しい殿下からは想像がつかない言動だった。
なんとかして逃げられないかと、体を捩ろうとしても男の人の力には到底敵わない。
そんな抵抗が殿下の怒りを増幅させてしまった。
「はぁ。今更、逃げられるわけないじゃん。」
と吐き捨てると、私の夜着の合わせ襟に手をかけて、乱暴に開く。
「やめてっ」
叫んでも無視され、そのまま、曝け出された首元、鎖骨、肩と次々に歯を立て噛みついていった。
「いたっ」
痛みに視界がぼやけ、涙がぼろぼろ溢れる。
「本当は、レディにこんなことしたくないんだよね。早く、シアー卿に指示されましたって、白状したら?」と相変わらずの声音で言う。
言いたくても盟約が、それを許してくれない。
噛まれた所から、体中に痛みがどんどん広がっている気がした。
「っふ、殿下…」
泣いているせいで、嗚咽が混じる。
「何?」
「っ、傷つけて、ごめんなさい。」
ただただ貴方を傷つけ、真実を話すことすらできない。
許してもらえるとは思わないけど、ただ一言謝りたかった。
それを聞いた殿下が眉を顰め苦しそうな表情をする。
その表情は泣くのを我慢している子供の様に見えて
「…泣かないで。」
無意識に、頬に手を伸ばしそう言っていた。
頬に触れる私の手を振り払わらうのではなく、そっとその手に手を重ね握りしめる。
「君って人は…」
ボソリと呟くと、痛みに耐える様に瞳を閉じる。
どれくらいそうしてたか、そっと目を開いた殿下が、私の夜着を整え始める。
「えっ?」
先程までと様子が変わったことに困惑している私をよそに、私の身なりを整えると馬乗りから仰向けの私の顔の横に手をつき覆い被さる体制になる。
そして、私の顔を覗き込むと、
「痛かった?」と聞き、喉元の噛み跡を指で撫でる。
「あ、…はい。」
殿下の変化についていけず、間の抜けた返事になってしまう。
驚きで目をパチクリ瞬きしたら、目尻から溜まった涙が流れた。
それを見た殿下が、私涙を掬い取る様に、目元にキスをする。
これは、一体どういう状況なの。
こういった経験値が少ないせいか、状況理解ができない私を見て殿下は、面白そうに笑い
「あら、赤くならないんだね。」と揶揄う様に言う。
それから、体を起こすと
「おやすみ。僕の妃。」
と言い私の頭をポンポンと撫でると部屋から出ていった。
え?どういうこと?よく分からないけど最悪な事態は免れたの?急展開に思考は纏まらなかったが、噛まれた喉の痛みが、これは紛れもなく現実だと教えてくれた。
「……」
やっと、自分が最悪な状況に陥っていることに理解し、何か言わなければと思うも、言葉が出てこない。
「自分が何した分かってる?」
そんな私の様子に痺れを切らした殿下が今まで聞いたことのない低く冷たい声で言う。
その声をきいて背中がすぅっと冷たくなる。
「…っ!ケホッケホッ」
自分が何をしたかは嫌でも分かっている。
ただ、それを言葉に出そうとすると、あの人の盟約がそれを阻み喉を焼き切ろうとする。言葉を出せずに咳き込む私を見下ろす表情を不愉快そうに歪めると手首を掴む力が強くなる。
「いっ」痛みに思わず声が出る。
「僕の気が変わらないうちに早く何か言い訳してごらんよ。」と
次は、夜着の隙間から手を差し込み、お腹に無遠慮に爪をたてる。
「い"っ」
何か言いたいけど、冷静さを欠いた思考は上手く纏まらず、相応しい言葉が見つからない。
「何にも言う気がないなら、嫌でも言いたくなる様にしてあげるよ。」
その台詞に嫌な予感がして、殿下の動きを目で追ってしまう。
殿下は、私の喉元に顔を近づけ上目遣いでこちらを見た後、そこに思い切り噛みついた。
「いたいっ!」
痛みに思わず、声がでてしまう。
殿下は私の様子を気にすることなく、
「少し、血がでちゃったけど、君がやろうとしたことに比べたら、可愛いもんだよね?」と冷めた顔で言う。
普段の優しい殿下からは想像がつかない言動だった。
なんとかして逃げられないかと、体を捩ろうとしても男の人の力には到底敵わない。
そんな抵抗が殿下の怒りを増幅させてしまった。
「はぁ。今更、逃げられるわけないじゃん。」
と吐き捨てると、私の夜着の合わせ襟に手をかけて、乱暴に開く。
「やめてっ」
叫んでも無視され、そのまま、曝け出された首元、鎖骨、肩と次々に歯を立て噛みついていった。
「いたっ」
痛みに視界がぼやけ、涙がぼろぼろ溢れる。
「本当は、レディにこんなことしたくないんだよね。早く、シアー卿に指示されましたって、白状したら?」と相変わらずの声音で言う。
言いたくても盟約が、それを許してくれない。
噛まれた所から、体中に痛みがどんどん広がっている気がした。
「っふ、殿下…」
泣いているせいで、嗚咽が混じる。
「何?」
「っ、傷つけて、ごめんなさい。」
ただただ貴方を傷つけ、真実を話すことすらできない。
許してもらえるとは思わないけど、ただ一言謝りたかった。
それを聞いた殿下が眉を顰め苦しそうな表情をする。
その表情は泣くのを我慢している子供の様に見えて
「…泣かないで。」
無意識に、頬に手を伸ばしそう言っていた。
頬に触れる私の手を振り払わらうのではなく、そっとその手に手を重ね握りしめる。
「君って人は…」
ボソリと呟くと、痛みに耐える様に瞳を閉じる。
どれくらいそうしてたか、そっと目を開いた殿下が、私の夜着を整え始める。
「えっ?」
先程までと様子が変わったことに困惑している私をよそに、私の身なりを整えると馬乗りから仰向けの私の顔の横に手をつき覆い被さる体制になる。
そして、私の顔を覗き込むと、
「痛かった?」と聞き、喉元の噛み跡を指で撫でる。
「あ、…はい。」
殿下の変化についていけず、間の抜けた返事になってしまう。
驚きで目をパチクリ瞬きしたら、目尻から溜まった涙が流れた。
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これは、一体どういう状況なの。
こういった経験値が少ないせいか、状況理解ができない私を見て殿下は、面白そうに笑い
「あら、赤くならないんだね。」と揶揄う様に言う。
それから、体を起こすと
「おやすみ。僕の妃。」
と言い私の頭をポンポンと撫でると部屋から出ていった。
え?どういうこと?よく分からないけど最悪な事態は免れたの?急展開に思考は纏まらなかったが、噛まれた喉の痛みが、これは紛れもなく現実だと教えてくれた。
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