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9.婚約者の思惑
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「ご足労ありがとうございます。ミズリー侯爵は後からお越しになられますか?」
挨拶をし念の為、ツルピカハゲも来るのかを確認する。
「お祖父様は、来ませんよ。あの晩餐会では、わたくしは蚊帳の外だったので抜けてきました。どうしても、貴方に言わなければいけないことがあったので。」と冷たい口調で言われ、私は少し身構える。
彼女の眉間には深い皺が刻まれ、扇で隠している口元は不愉快そうに歪められているのが容易に想像できた。
彼女は頭の先からつま先まで、睨め付けた後、
「なんです?その格好は?」とはっきり言う。
「へ?…えーと、やっぱり変でしょうか?」
予想外の内容にとぼけた反応になった。
私も今の自分の格好はおかしいと思っていたが、他の人から見ても変なのかと確認すると、扇をバチンッと閉じ、こちらにビシリッと向けると大きく息を吸い込み
「っっっ!言葉では表せられないくらい、おかしいですよ!あなた一体いくつなんです?まるで幼子が着る様なフリルだらけのドレスに流行とかけ離れたアクセサリー!よく、そんな格好でよく殿下のおそばにいられましたね!」と早口で捲し立てる。
一息で言い切っていたからか、肩が上下していた。
「ご指摘ありがとうございます。王都の流行りに疎いので、もしかしてこちらではこういう格好が流行っているものだと思っていました。あの、ミズリー侯爵令嬢様、もしよろしければ、こちらではどの様な格好が好まれているのか教えていただけませんか?」
晩餐会で睨まれていたし、多分、断られるだろうなと思いつつも他に頼れる女性もいないので図々しいお願いをしてみると、ミズリー侯爵令嬢は扇子で口元を覆うとフンッと鼻で笑い
「仕方ないので、教えて差し上げます!あなたが野暮ったいままだと、殿下に恥をかかせてしまいますから。」と言う
「…え?」これまた予想外の回答に、驚いた。
「『え?』とはなんですか⁈まさか、わたくしが、意地悪で教えないと思っていたんですか?」
心外そうな顔をして、ジロリとこちらを見る。
「いや、なんといいますか、こういう場合、そんなことも知らないの、この泥棒猫!とかそんな事も分からない貴方は殿下にふさわしくない!とか言われるのかと思っていたので。」
ミズリー侯爵令嬢の視線が痛く、気まずさを紛らわすのに手を弄りながら言う。
「確かに、殿下にふさわしいとは言えません。ですが、殿下が貴方を迎え入れると、決められた以上、わたくしはそれに従うまででですので。」
この方は、殿下を慕っていて、あの場にいた誰とも違い、きちんと殿下をお支えしようとしているのが分かった。殿下の周りに、一人でも味方がいてくれたことにホッとした。
「ミズリー侯爵令嬢様は婚約者の鏡ですね。至らないことばかりだとは思いますが、これからよろしくお願いいたします。」と頭を下げる。
「わたくしは、将来的に殿下の正妃になりますもの。不出来な側妃を教育するのも、わたくしの勤めです。」
言葉とはうらはらに、照れた様に顔を赤くしながら言う。
---
レースやフリルが装飾過多なほど使われているものや、大胆すぎるくらいに背中が開いているもの、謎の位置にスリットが入っているドレスを見て、ミズリー侯爵令嬢は深いため息をつく。
「なんです?この悪趣味なドレスは。どうしたら、こんなものばかり集められるのかしら。」
「そんなに、酷いんですね。」あまりの酷評に苦笑いがでた。
「この中で、貴方がもってきたものはあります?」
「こんな上質な素材のドレスは持っていなかったので、側室入りする時に着てきたもの、…これなんですが、それ以外全て王宮側が用意してくれていたので。」そう言い、シンプルなデザインのドレスを指差す。
「一番まともなもの以外は、全てですか。全く誰が用意したのかしら。一着だけじゃ、パーティーやお茶会に出るのに、足りませんね。」と考える様にブツブツ言った後、こちらに視線を向け
「一緒にドレスを選びますよ。明日、予定を空けておきなさい。」と宣言する。
* * *
「それにしても、あなた変わっているわね。わざわざお店に見に行きたいだなんて。」
と言いミズリー侯爵令嬢が、優雅に紅茶を飲みながら店員が持ってきたドレスを眺める。
「外商を受けたことがないので、緊張しちゃいそうだったので。」
ただ、店側はお得意様のミズリー侯爵令嬢が来る事を知っていた様で、入店と同時に
「お待ちしておりました。リズリア様」
と店員が一同に頭を下げてのお出迎えをされvipルームに通された。
その光景は圧巻で、また一つ新しい世界を垣間見た気がする。
「そうなのね。でも、側妃になったのだから、それくらいこなせる様になりなさい。」
ミズリー侯爵令嬢が、ドレスから目を離さず言う。
確かに、侯爵令嬢が言う通りだと思う。
今回、お店に出向いたのは、ミズリー侯爵家と、王宮専用馬車が同じ店に停めてあったら、王都で話題になるはず。
事情を知らない人からしたら、貴族の買い物程度で済まされるかもしれないが、貴族達には殿下の婚約者と側妃が一緒に出かけたことをアピールできる。
それに侯爵令嬢は、側妃の存在を許した心広い婚約者という印象を抱かれるはず。
可愛い孫娘の評価が上がっているとなればツルピカハゲもといミズリー侯爵も、私に利用価値を見出して殿下への当たりを弱めるかもしれない。
「自信はないですが、がんばります。」
思惑は胸のうちに閉まって返事をする。
「自信がない。ではなく、わたくしが、指導しますから、精一杯やりなさい。」
と侯爵令嬢が、今度はこちらを向き直りピシリと言う。そして
「あなたは、どのドレスが好み?」と聞く。
「どれも素敵で迷っちゃいますね。…あの、黄色のドレスが素敵だと思います。」
ミズリー侯爵令嬢が着ているものとデザインが一緒で色違いのドレスを指差す。偶然、デザインが好みのものだったが、
ミズリー侯爵令嬢は「趣味は悪くないみたいね。」と言った。
折角だしと試着すると、私達の姿を見た店員が
「まあ!まるで姉妹みたいですね!」とおべっかする。
「背格好も、髪の色も同じだから、なおさら
そう見えるのかもしれないですね。」と私が返すとミズリー侯爵令嬢が
「もしそうだとしたら、こんなに手がかかるのだから、あなたが妹ね!」艶めく栗色のストレートヘアをかきあげ、弾んだ声でいう。
どうやら、彼女は感情が分かりやすいタイプの様だ。
初対面の頃から比べると、好意的な反応に変わってきた事に嬉しくなった。
「この後のご予定は?」ドレスを数着購入し、馬車に乗ろうとした時にそう聞かれた。
「ご令嬢に人気のパティスリーがあると聞いたので、そちらに寄ろうかと思っています。」
「ルミエールね。私もあそこのケーキは好きなの。ご一緒してよろしいかしら?」切れ長の目が優しく弧を描く。
「もちろんです!ぜひお願いします!」嬉しい申し出に声が弾む。
全体が生クリームでコーティングされ、上には季節のフルーツがふんだんにのっているケーキは見た目にも鮮やかだ。
どうやら私達は見た目だけでなく、食べものの好みも似ているらしいと、私達の前に並んだ同じケーキを見て思う。
「わたくし達は、どうやら気があうのかもしれないわね。」私と同じ感想をミズリー侯爵令嬢が言う。
それが嬉しく
「こんなに好みが合う人にあったのは、ミズリー侯爵令嬢が初めてです。」と返す。
「わたくしも。ねぇ、侯爵令嬢なんて堅苦しい呼び方ではなくて、リリィで大丈夫よ。わたくしもツィーリィと呼ぶから。」
「わかったわ!リリィ。」
話してみると同い年ということが分かった。また、リリィにはお兄さんが一人いて殿下の側近ということ、ミズリー侯爵は殿下が幼い頃からの教育係だということ。
それもあって、リリィとリリィのお兄さんは殿下の幼馴染ということを教えてくれた。リリィとのティータイムは楽しくて時間はあっという間に過ぎた。
「そういえば、ツィーリィに言わなければと思っていたことがあるの。」と少し言いにくそうに切り出す。
「うん。」あまりいい話題ではないことを想像し、身構える。
「もしかしたら、もう耳には入っているかもしれないけれど、殿下には魔女が取り憑いているの。」
魔女?と思ったが、リリィの顔はふざけている様には見えなかった。
挨拶をし念の為、ツルピカハゲも来るのかを確認する。
「お祖父様は、来ませんよ。あの晩餐会では、わたくしは蚊帳の外だったので抜けてきました。どうしても、貴方に言わなければいけないことがあったので。」と冷たい口調で言われ、私は少し身構える。
彼女の眉間には深い皺が刻まれ、扇で隠している口元は不愉快そうに歪められているのが容易に想像できた。
彼女は頭の先からつま先まで、睨め付けた後、
「なんです?その格好は?」とはっきり言う。
「へ?…えーと、やっぱり変でしょうか?」
予想外の内容にとぼけた反応になった。
私も今の自分の格好はおかしいと思っていたが、他の人から見ても変なのかと確認すると、扇をバチンッと閉じ、こちらにビシリッと向けると大きく息を吸い込み
「っっっ!言葉では表せられないくらい、おかしいですよ!あなた一体いくつなんです?まるで幼子が着る様なフリルだらけのドレスに流行とかけ離れたアクセサリー!よく、そんな格好でよく殿下のおそばにいられましたね!」と早口で捲し立てる。
一息で言い切っていたからか、肩が上下していた。
「ご指摘ありがとうございます。王都の流行りに疎いので、もしかしてこちらではこういう格好が流行っているものだと思っていました。あの、ミズリー侯爵令嬢様、もしよろしければ、こちらではどの様な格好が好まれているのか教えていただけませんか?」
晩餐会で睨まれていたし、多分、断られるだろうなと思いつつも他に頼れる女性もいないので図々しいお願いをしてみると、ミズリー侯爵令嬢は扇子で口元を覆うとフンッと鼻で笑い
「仕方ないので、教えて差し上げます!あなたが野暮ったいままだと、殿下に恥をかかせてしまいますから。」と言う
「…え?」これまた予想外の回答に、驚いた。
「『え?』とはなんですか⁈まさか、わたくしが、意地悪で教えないと思っていたんですか?」
心外そうな顔をして、ジロリとこちらを見る。
「いや、なんといいますか、こういう場合、そんなことも知らないの、この泥棒猫!とかそんな事も分からない貴方は殿下にふさわしくない!とか言われるのかと思っていたので。」
ミズリー侯爵令嬢の視線が痛く、気まずさを紛らわすのに手を弄りながら言う。
「確かに、殿下にふさわしいとは言えません。ですが、殿下が貴方を迎え入れると、決められた以上、わたくしはそれに従うまででですので。」
この方は、殿下を慕っていて、あの場にいた誰とも違い、きちんと殿下をお支えしようとしているのが分かった。殿下の周りに、一人でも味方がいてくれたことにホッとした。
「ミズリー侯爵令嬢様は婚約者の鏡ですね。至らないことばかりだとは思いますが、これからよろしくお願いいたします。」と頭を下げる。
「わたくしは、将来的に殿下の正妃になりますもの。不出来な側妃を教育するのも、わたくしの勤めです。」
言葉とはうらはらに、照れた様に顔を赤くしながら言う。
---
レースやフリルが装飾過多なほど使われているものや、大胆すぎるくらいに背中が開いているもの、謎の位置にスリットが入っているドレスを見て、ミズリー侯爵令嬢は深いため息をつく。
「なんです?この悪趣味なドレスは。どうしたら、こんなものばかり集められるのかしら。」
「そんなに、酷いんですね。」あまりの酷評に苦笑いがでた。
「この中で、貴方がもってきたものはあります?」
「こんな上質な素材のドレスは持っていなかったので、側室入りする時に着てきたもの、…これなんですが、それ以外全て王宮側が用意してくれていたので。」そう言い、シンプルなデザインのドレスを指差す。
「一番まともなもの以外は、全てですか。全く誰が用意したのかしら。一着だけじゃ、パーティーやお茶会に出るのに、足りませんね。」と考える様にブツブツ言った後、こちらに視線を向け
「一緒にドレスを選びますよ。明日、予定を空けておきなさい。」と宣言する。
* * *
「それにしても、あなた変わっているわね。わざわざお店に見に行きたいだなんて。」
と言いミズリー侯爵令嬢が、優雅に紅茶を飲みながら店員が持ってきたドレスを眺める。
「外商を受けたことがないので、緊張しちゃいそうだったので。」
ただ、店側はお得意様のミズリー侯爵令嬢が来る事を知っていた様で、入店と同時に
「お待ちしておりました。リズリア様」
と店員が一同に頭を下げてのお出迎えをされvipルームに通された。
その光景は圧巻で、また一つ新しい世界を垣間見た気がする。
「そうなのね。でも、側妃になったのだから、それくらいこなせる様になりなさい。」
ミズリー侯爵令嬢が、ドレスから目を離さず言う。
確かに、侯爵令嬢が言う通りだと思う。
今回、お店に出向いたのは、ミズリー侯爵家と、王宮専用馬車が同じ店に停めてあったら、王都で話題になるはず。
事情を知らない人からしたら、貴族の買い物程度で済まされるかもしれないが、貴族達には殿下の婚約者と側妃が一緒に出かけたことをアピールできる。
それに侯爵令嬢は、側妃の存在を許した心広い婚約者という印象を抱かれるはず。
可愛い孫娘の評価が上がっているとなればツルピカハゲもといミズリー侯爵も、私に利用価値を見出して殿下への当たりを弱めるかもしれない。
「自信はないですが、がんばります。」
思惑は胸のうちに閉まって返事をする。
「自信がない。ではなく、わたくしが、指導しますから、精一杯やりなさい。」
と侯爵令嬢が、今度はこちらを向き直りピシリと言う。そして
「あなたは、どのドレスが好み?」と聞く。
「どれも素敵で迷っちゃいますね。…あの、黄色のドレスが素敵だと思います。」
ミズリー侯爵令嬢が着ているものとデザインが一緒で色違いのドレスを指差す。偶然、デザインが好みのものだったが、
ミズリー侯爵令嬢は「趣味は悪くないみたいね。」と言った。
折角だしと試着すると、私達の姿を見た店員が
「まあ!まるで姉妹みたいですね!」とおべっかする。
「背格好も、髪の色も同じだから、なおさら
そう見えるのかもしれないですね。」と私が返すとミズリー侯爵令嬢が
「もしそうだとしたら、こんなに手がかかるのだから、あなたが妹ね!」艶めく栗色のストレートヘアをかきあげ、弾んだ声でいう。
どうやら、彼女は感情が分かりやすいタイプの様だ。
初対面の頃から比べると、好意的な反応に変わってきた事に嬉しくなった。
「この後のご予定は?」ドレスを数着購入し、馬車に乗ろうとした時にそう聞かれた。
「ご令嬢に人気のパティスリーがあると聞いたので、そちらに寄ろうかと思っています。」
「ルミエールね。私もあそこのケーキは好きなの。ご一緒してよろしいかしら?」切れ長の目が優しく弧を描く。
「もちろんです!ぜひお願いします!」嬉しい申し出に声が弾む。
全体が生クリームでコーティングされ、上には季節のフルーツがふんだんにのっているケーキは見た目にも鮮やかだ。
どうやら私達は見た目だけでなく、食べものの好みも似ているらしいと、私達の前に並んだ同じケーキを見て思う。
「わたくし達は、どうやら気があうのかもしれないわね。」私と同じ感想をミズリー侯爵令嬢が言う。
それが嬉しく
「こんなに好みが合う人にあったのは、ミズリー侯爵令嬢が初めてです。」と返す。
「わたくしも。ねぇ、侯爵令嬢なんて堅苦しい呼び方ではなくて、リリィで大丈夫よ。わたくしもツィーリィと呼ぶから。」
「わかったわ!リリィ。」
話してみると同い年ということが分かった。また、リリィにはお兄さんが一人いて殿下の側近ということ、ミズリー侯爵は殿下が幼い頃からの教育係だということ。
それもあって、リリィとリリィのお兄さんは殿下の幼馴染ということを教えてくれた。リリィとのティータイムは楽しくて時間はあっという間に過ぎた。
「そういえば、ツィーリィに言わなければと思っていたことがあるの。」と少し言いにくそうに切り出す。
「うん。」あまりいい話題ではないことを想像し、身構える。
「もしかしたら、もう耳には入っているかもしれないけれど、殿下には魔女が取り憑いているの。」
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