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【ヤンデレβ×性悪α】 高慢αは手折られる
第十六話
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馬車から降りると、商店街は活気で賑わっていた。いつもは、店舗になっている店にしか行かないので、路面に出ている出店などは初めて見る。往来する人々は皆、忙しなく動き時折店主と値段交渉している様子が目に入る。
「ここは?」
「ん?見ての通り城下町の商店街」
私の問いかけにフェナーラが見たままを答えるが、欲しい答えはそれではない。私との賭けの勝ちを使う方法を思いついたと、ここに連れてこられたのだが、理由が皆目検討もつかなかった。
「それは見れば分かります。私が聞いているのは、なぜここに連れてこられたかということです」
「それはデートをするからに決まってるだろ」
「は?デート?私とあなたが?なぜ?」
「意中の相手をデートに誘うのに理由がいるか?まあ、強いて言えばもっとセラフのことを知りたいからかなー」
フェナーラは聞いているこっちが恥ずかしくなるような歯の浮く台詞をサラリと言うと、私の手を握り歩き始める。
「ちょっと、勝手に何してるんですか⁈」
「あーはいはい。じゃあ、今までの勝ちを2回分使う。だからこれからデートして。それから、デート中は手を繋がせて」
フェナーラは私の制止をあしらうと、そう提案する。きっと、こう言えば私が拒否できないとこの男は分かっているのだ。そして私もそれに甘えて、自分は仕方なく従っているという素振りをする。デートなんて初めてで、誰かと手を繋いで歩くことに慣れてない自分を隠して。
「…それなら、仕方ありませんね」
胸が高鳴るのは、こういったことに慣れていないから。繋いだ手から熱が体に広がり体温が上がった気がするのも、単に暑いから。そう自分に苦しい言い訳をする。
「露店で昼飯買って食おうと思うんだけど、セラフは、苦手な食べ物とかある?」
フェナーラは人で溢れる商店街の中、はぐれないように私の手を優しくひいて、私にそう問いかけた。
* * *
「…これは、どのように食べるのですか?」
露店の前に出されていた、やや薄汚れていたテーブルと椅子に座るように促されたので座面にハンカチを敷いて腰掛けた。それから少ししてフェナーラが露店から得体の知れない食べ物を買って来て、私に差し出しす。
一つは、多分肉と思われるものが串に刺され、紙の包みに入っていた。もう一つは、三角形に焼かれたパンのようなもの。といっても私の知っているパンのようにふんわりはしておらず、真ん中が膨らんで端は口を結ぶように平たくなっている。それが、串に刺さった肉と同じように紙に包まれている。
「やっぱり、屋台飯は知らないよな。これは、そのままかじりついて食べるんだ」
フェナーラは自分の分の串刺しの肉を横にして肉にかじりついて、串から抜く。私はその様子を呆然とみる。そして少し間をおいてから
「……ナイフとフォークをください」
「屋台にそんなものはないぞ。こういう食い方は抵抗あるか?」
「抵抗も何も、そんな食べ方恥ずかしくて、できません」
幼い頃からテーブルマナーを躾けられてきた。食器を使わずに肉を直接口で食べるなんてあり得ない。私が生まれ育った環境では、そんなことをする人など誰一人いなかったのだから。
「美味いんだけどな。じゃあ、そっちのカルツォーネなら食べられるだろ?パンと同じように指で千切って食べればいいから。中に具が入っているから、こぼさないようにな」
フェナーラはパンのようなものを指さしそう言う。カルツォーネと呼ばれたものを、パンと同じように手で千切ると中にはトマトソースみたいなものが入っている。
こんな誰が作ったのか分からない、しかも外で調理されているものを食べるなんて気が進まない。でも、フェナーラが私のために買ったものだと思うだと、それを無下にするのも悪い気がした。だからほんの小さな一欠片だけを口にした。
「……美味しい」
「だろ!ここの屋台の飯、美味いんだ!セラフの口にあって良かった」
意外にもそれは美味しくて、素直に感想を口に出すとフェナーラが嬉しそうに笑う。
-こんな風に笑うんだ。
フェナーラが話している内容よりも初めて見た屈託のない笑顔に心が揺れる。
初めて会った時から見せていた隙のない笑顔じゃなくて、本当に心から喜んで笑っている顔。
揺れた気持ちを悟られないように食べる速度を早める。
「そんな急いで食べるほど美味かった?」
珍しいなと少し揶揄うようにフェナーラに言われるけど、今はそんなこと気にならない。それより、フェナーラに気持ちが傾いてきていることを隠すので精一杯だった。
* * *
「さて、次は…」
先に食べ終わったフェナーラは、私が食べ終わるのを待ってから席を立つ。そして、さりげなく私の手をまた握ると商店街をブラブラと一緒に歩く。
「どこに向かっているのですか?」
「どこに向かっているとかなく、歩いてるかな。せっかくのセラフとのデートだから、予定調和じゃなくて、セラフが心惹かれたものを見ていこ」
「……私はあまり体力がないので。そんなに長距離は歩けませんよ」
「それは知ってる」
可愛くない返しをする私にフェナーラは、抱いた後いつも意識飛ばしてたから。と余計な一言を付け加える。折角、ときめきかけていた私の気持ちを返して欲しい。
商店街の店は、やはり普段行き慣れていたブティックやパティスリーとは違う雰囲気だった。私が人波に押されないようにフェナーラが人混みを掻き分けて先導する。もちろん握った手は離さないで。
八百屋や、城下町向けのアクセサリーショップや服飾店、果てには武器屋なんて物騒なものがあった。どれも貴族の頃には見たことがないものばかり。もしフェナーラと出会って居なければ、私はこんなにも色んな世界があることを知らずに自分の価値観は正しいと今も信じていたのだろう。フェナーラのおかげで長年かけて凝り固まった価値観がゆっくり変化しているのが分かった。けれど、自分の中で巣食う劣等感が、変化を恐れる。自分のプライドを守るためにアルファ以外は価値がないと切り捨てていた。
-それを今更変えられるのか?
「セラフ?」
そんな感傷に浸りかけたとき、フェナーラに顔を覗き込まれ、ドキリと心臓が跳ねる。
「あなたは」
-あなたは、私が出来損ないと知っても愛してくれますか?
そう無意識に口走りそうになったとき、背後から聞き慣れた声に呼び止められた。
「フェナとセラフ、こんなとこで何してるのよ?」
「ここは?」
「ん?見ての通り城下町の商店街」
私の問いかけにフェナーラが見たままを答えるが、欲しい答えはそれではない。私との賭けの勝ちを使う方法を思いついたと、ここに連れてこられたのだが、理由が皆目検討もつかなかった。
「それは見れば分かります。私が聞いているのは、なぜここに連れてこられたかということです」
「それはデートをするからに決まってるだろ」
「は?デート?私とあなたが?なぜ?」
「意中の相手をデートに誘うのに理由がいるか?まあ、強いて言えばもっとセラフのことを知りたいからかなー」
フェナーラは聞いているこっちが恥ずかしくなるような歯の浮く台詞をサラリと言うと、私の手を握り歩き始める。
「ちょっと、勝手に何してるんですか⁈」
「あーはいはい。じゃあ、今までの勝ちを2回分使う。だからこれからデートして。それから、デート中は手を繋がせて」
フェナーラは私の制止をあしらうと、そう提案する。きっと、こう言えば私が拒否できないとこの男は分かっているのだ。そして私もそれに甘えて、自分は仕方なく従っているという素振りをする。デートなんて初めてで、誰かと手を繋いで歩くことに慣れてない自分を隠して。
「…それなら、仕方ありませんね」
胸が高鳴るのは、こういったことに慣れていないから。繋いだ手から熱が体に広がり体温が上がった気がするのも、単に暑いから。そう自分に苦しい言い訳をする。
「露店で昼飯買って食おうと思うんだけど、セラフは、苦手な食べ物とかある?」
フェナーラは人で溢れる商店街の中、はぐれないように私の手を優しくひいて、私にそう問いかけた。
* * *
「…これは、どのように食べるのですか?」
露店の前に出されていた、やや薄汚れていたテーブルと椅子に座るように促されたので座面にハンカチを敷いて腰掛けた。それから少ししてフェナーラが露店から得体の知れない食べ物を買って来て、私に差し出しす。
一つは、多分肉と思われるものが串に刺され、紙の包みに入っていた。もう一つは、三角形に焼かれたパンのようなもの。といっても私の知っているパンのようにふんわりはしておらず、真ん中が膨らんで端は口を結ぶように平たくなっている。それが、串に刺さった肉と同じように紙に包まれている。
「やっぱり、屋台飯は知らないよな。これは、そのままかじりついて食べるんだ」
フェナーラは自分の分の串刺しの肉を横にして肉にかじりついて、串から抜く。私はその様子を呆然とみる。そして少し間をおいてから
「……ナイフとフォークをください」
「屋台にそんなものはないぞ。こういう食い方は抵抗あるか?」
「抵抗も何も、そんな食べ方恥ずかしくて、できません」
幼い頃からテーブルマナーを躾けられてきた。食器を使わずに肉を直接口で食べるなんてあり得ない。私が生まれ育った環境では、そんなことをする人など誰一人いなかったのだから。
「美味いんだけどな。じゃあ、そっちのカルツォーネなら食べられるだろ?パンと同じように指で千切って食べればいいから。中に具が入っているから、こぼさないようにな」
フェナーラはパンのようなものを指さしそう言う。カルツォーネと呼ばれたものを、パンと同じように手で千切ると中にはトマトソースみたいなものが入っている。
こんな誰が作ったのか分からない、しかも外で調理されているものを食べるなんて気が進まない。でも、フェナーラが私のために買ったものだと思うだと、それを無下にするのも悪い気がした。だからほんの小さな一欠片だけを口にした。
「……美味しい」
「だろ!ここの屋台の飯、美味いんだ!セラフの口にあって良かった」
意外にもそれは美味しくて、素直に感想を口に出すとフェナーラが嬉しそうに笑う。
-こんな風に笑うんだ。
フェナーラが話している内容よりも初めて見た屈託のない笑顔に心が揺れる。
初めて会った時から見せていた隙のない笑顔じゃなくて、本当に心から喜んで笑っている顔。
揺れた気持ちを悟られないように食べる速度を早める。
「そんな急いで食べるほど美味かった?」
珍しいなと少し揶揄うようにフェナーラに言われるけど、今はそんなこと気にならない。それより、フェナーラに気持ちが傾いてきていることを隠すので精一杯だった。
* * *
「さて、次は…」
先に食べ終わったフェナーラは、私が食べ終わるのを待ってから席を立つ。そして、さりげなく私の手をまた握ると商店街をブラブラと一緒に歩く。
「どこに向かっているのですか?」
「どこに向かっているとかなく、歩いてるかな。せっかくのセラフとのデートだから、予定調和じゃなくて、セラフが心惹かれたものを見ていこ」
「……私はあまり体力がないので。そんなに長距離は歩けませんよ」
「それは知ってる」
可愛くない返しをする私にフェナーラは、抱いた後いつも意識飛ばしてたから。と余計な一言を付け加える。折角、ときめきかけていた私の気持ちを返して欲しい。
商店街の店は、やはり普段行き慣れていたブティックやパティスリーとは違う雰囲気だった。私が人波に押されないようにフェナーラが人混みを掻き分けて先導する。もちろん握った手は離さないで。
八百屋や、城下町向けのアクセサリーショップや服飾店、果てには武器屋なんて物騒なものがあった。どれも貴族の頃には見たことがないものばかり。もしフェナーラと出会って居なければ、私はこんなにも色んな世界があることを知らずに自分の価値観は正しいと今も信じていたのだろう。フェナーラのおかげで長年かけて凝り固まった価値観がゆっくり変化しているのが分かった。けれど、自分の中で巣食う劣等感が、変化を恐れる。自分のプライドを守るためにアルファ以外は価値がないと切り捨てていた。
-それを今更変えられるのか?
「セラフ?」
そんな感傷に浸りかけたとき、フェナーラに顔を覗き込まれ、ドキリと心臓が跳ねる。
「あなたは」
-あなたは、私が出来損ないと知っても愛してくれますか?
そう無意識に口走りそうになったとき、背後から聞き慣れた声に呼び止められた。
「フェナとセラフ、こんなとこで何してるのよ?」
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