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【ヤンデレβ×性悪α】 高慢αは手折られる
第三話
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私を見下ろすバナトの顔は真面目そのもので、冗談を言っているようには見えなかった。
「私を抱きたいのですか?私はアルファの男ですよ」
「知ってます。俺はセラフ様が好きです。あなただから抱きたいのです」
厳密に言えば私の顔が好きなはずだ。バナトは見た目が好みであれば性別は気にならないタイプなのかもしれない。それに伴侶になった以上は、こういった行為も受け入れなければいけないだろう。
まぁ、かくいう私も男に抱かれることには抵抗はない。しかもバナトは筋肉で引き締まった立派な体躯をしている。その体つきは騎士顔負けだ。くわえて年頃の女性の目を惹くだろう精悍で男らしい顔立ち。出会い方が違えば、私もバナトを誘ったであろうと思うくらいには、見た目は好みだ。ただ、一つ確認しなければいけないことがある。
「私は男性に抱かれることに抵抗はないですが、相手にするのはアルファだけと決めています。あなたはアルファだとウワサされてますが、それは間違いありませんか?」
バナト商会の前会長、つまりこの男の父親はベータのはず。バナト商会の商圏を拡大させた二代目のこの男は、その能力から巷ではアルファだと言われている。母親がアルファだったのか養子か分からないが、ベータの父親よりも優秀なのは確かだ。
「ウワサされているのは事実です」
バナトの黒い瞳が私を真っ直ぐ見つめる。嘘を言っているようには見えない。
「俺からも質問してもいいですか?」
バナトは穏やかな口調で切り出す。口元に笑が浮かんでいるが、瞳は剣呑に光っているのは気のせいだろうか。それに馬車の中で、家族構成や、これまで携わっていた仕事、趣味や交友関係を根掘り葉掘り聞いてきた癖にこれ以上何を聞きたいのだろうか。
「なんですか?」
「セラフ様は今まで関係を持った男で忘れられない男はいますか?」
一体何を聞いてくるのかと思えば、そんなくだらないことを気にしているのか。
「そんなことを聞いて何になるのですか?これから先はあなた以外と関係を持つことなんて無いのに」
今まで関係を持った男のことなど誰一人として覚えていない。皆、平民出身のアルファで、一夜限りの関係。強いて言えば、その多くは騎士団に所属していた。それくらいの認識だ。
「…。そうですよね!」
バナトは少し驚いた様子を見せた後、満面の笑みになる。今日が初対面のはずなのにこの顔を見慣れたと思うのだから何とも不思議だ。
「セラフ様、好きです。あなたが居てくれれば他に何もいりません」
バナトは目を眇めて私を愛おしそうに見つめる。そして私の手を持ち上げ、甲にキスを落とす。この男が好きなのは私の顔であって私自身ではない。勘違いしそうになる自分にそう言い聞かせる。
「今は気持ちの大きさが違っていても、いつかセラフ様にも同じだけ思ってもらえるように、あなたを振り向かせてみせます」
「バナト…」
もしかして私の勘違いではなく、この男は本当に私が好きなのかもしれない。そう思うと、この男に無性に触れたくなった。バナトの唇を指でそっとなぞる。するとバナトはうすく唇を開き、なぞっていた私の指を口に含む。そしてその指を思い切り噛んだ。
「いたっ…痛い!何をするんだ!」
予想していなかった痛みに手を振り払い、体を起こす。バナトの蛮行のせいで甘い雰囲気はどこかに吹き飛び、代わりに不穏な空気が漂う。バナトに噛まれた親指は出血こそしなかったものの、しっかり歯形がついている。
「何って…マーキングですよ?」
「は?何を言っているんだ?」
「セラフ様がご自分で、今後俺以外とはしないって言ったでしょう?だから、セラフ様は俺のものっていうマーキングをしますね」
バナトは身の危険を感じ逃げようとした私の肩を押しベッドに縫い付ける。そのままコートの合わせを力任せに引っ張ったのでコートのボタンが弾け飛んでいく。そしてブラウスにも手をかけ同じように開く。あまりにも粗暴な脱がし方に不安しか感じず、せめてもの訴えをする。
「ちょっとまって。乱暴はしないで」
「はは。セラフ様の体を傷つけるようなことはしませんよ。安心してください。ただ…」
いや既に人差し指を負傷していますよ。と言いたいのを何とか飲み込む。そしてバナトが何か言い淀んだ言葉の続きを促す。
「ただ?」
「セラフ様を抱いた過去の男達に嫉妬してんだ。セラフ様が、そいつらの事を忘れてしまう位、刺激的なセックスをするだけです」
くだけた口調で言われた内容に私は自分の身に差し迫る危険をヒシヒシと感じた。
「私を抱きたいのですか?私はアルファの男ですよ」
「知ってます。俺はセラフ様が好きです。あなただから抱きたいのです」
厳密に言えば私の顔が好きなはずだ。バナトは見た目が好みであれば性別は気にならないタイプなのかもしれない。それに伴侶になった以上は、こういった行為も受け入れなければいけないだろう。
まぁ、かくいう私も男に抱かれることには抵抗はない。しかもバナトは筋肉で引き締まった立派な体躯をしている。その体つきは騎士顔負けだ。くわえて年頃の女性の目を惹くだろう精悍で男らしい顔立ち。出会い方が違えば、私もバナトを誘ったであろうと思うくらいには、見た目は好みだ。ただ、一つ確認しなければいけないことがある。
「私は男性に抱かれることに抵抗はないですが、相手にするのはアルファだけと決めています。あなたはアルファだとウワサされてますが、それは間違いありませんか?」
バナト商会の前会長、つまりこの男の父親はベータのはず。バナト商会の商圏を拡大させた二代目のこの男は、その能力から巷ではアルファだと言われている。母親がアルファだったのか養子か分からないが、ベータの父親よりも優秀なのは確かだ。
「ウワサされているのは事実です」
バナトの黒い瞳が私を真っ直ぐ見つめる。嘘を言っているようには見えない。
「俺からも質問してもいいですか?」
バナトは穏やかな口調で切り出す。口元に笑が浮かんでいるが、瞳は剣呑に光っているのは気のせいだろうか。それに馬車の中で、家族構成や、これまで携わっていた仕事、趣味や交友関係を根掘り葉掘り聞いてきた癖にこれ以上何を聞きたいのだろうか。
「なんですか?」
「セラフ様は今まで関係を持った男で忘れられない男はいますか?」
一体何を聞いてくるのかと思えば、そんなくだらないことを気にしているのか。
「そんなことを聞いて何になるのですか?これから先はあなた以外と関係を持つことなんて無いのに」
今まで関係を持った男のことなど誰一人として覚えていない。皆、平民出身のアルファで、一夜限りの関係。強いて言えば、その多くは騎士団に所属していた。それくらいの認識だ。
「…。そうですよね!」
バナトは少し驚いた様子を見せた後、満面の笑みになる。今日が初対面のはずなのにこの顔を見慣れたと思うのだから何とも不思議だ。
「セラフ様、好きです。あなたが居てくれれば他に何もいりません」
バナトは目を眇めて私を愛おしそうに見つめる。そして私の手を持ち上げ、甲にキスを落とす。この男が好きなのは私の顔であって私自身ではない。勘違いしそうになる自分にそう言い聞かせる。
「今は気持ちの大きさが違っていても、いつかセラフ様にも同じだけ思ってもらえるように、あなたを振り向かせてみせます」
「バナト…」
もしかして私の勘違いではなく、この男は本当に私が好きなのかもしれない。そう思うと、この男に無性に触れたくなった。バナトの唇を指でそっとなぞる。するとバナトはうすく唇を開き、なぞっていた私の指を口に含む。そしてその指を思い切り噛んだ。
「いたっ…痛い!何をするんだ!」
予想していなかった痛みに手を振り払い、体を起こす。バナトの蛮行のせいで甘い雰囲気はどこかに吹き飛び、代わりに不穏な空気が漂う。バナトに噛まれた親指は出血こそしなかったものの、しっかり歯形がついている。
「何って…マーキングですよ?」
「は?何を言っているんだ?」
「セラフ様がご自分で、今後俺以外とはしないって言ったでしょう?だから、セラフ様は俺のものっていうマーキングをしますね」
バナトは身の危険を感じ逃げようとした私の肩を押しベッドに縫い付ける。そのままコートの合わせを力任せに引っ張ったのでコートのボタンが弾け飛んでいく。そしてブラウスにも手をかけ同じように開く。あまりにも粗暴な脱がし方に不安しか感じず、せめてもの訴えをする。
「ちょっとまって。乱暴はしないで」
「はは。セラフ様の体を傷つけるようなことはしませんよ。安心してください。ただ…」
いや既に人差し指を負傷していますよ。と言いたいのを何とか飲み込む。そしてバナトが何か言い淀んだ言葉の続きを促す。
「ただ?」
「セラフ様を抱いた過去の男達に嫉妬してんだ。セラフ様が、そいつらの事を忘れてしまう位、刺激的なセックスをするだけです」
くだけた口調で言われた内容に私は自分の身に差し迫る危険をヒシヒシと感じた。
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