31 / 85
第三十一話
しおりを挟む
アーシュは僕に顔を近づけると耳元で囁く。
「ヴィル、自分からフェロモンのいい匂いが出てる自覚ある?」
「自分のフェロモンの匂いなんて分かる訳ないだろ」
「エステートを出発するときはこんなに匂いしなかったのに。馬車の中でレトア卿に何かされた?」
僕の返事を聞いたアーシュが顔を上げ僕を問い詰める。レトア卿からはアーシュに捨てられたのだと嫌味を言われただけ。フェロモンの原因で思いあたる節は欲求不満になってることくらいだ。だから、僕がこうなっているのは全てアーシュのせいなのに。
「レトア卿は嫌味は言うが手は出さないタイプだろ。僕がこうなった事を人のせいにしているみたいだが、むしろアーシュのせいだって分かっているか?」
「俺のせい…?」
少し嫌味っぽく言ったのに、アーシュはキョトンとしている。まさかそんな反応になるなんて予想外だ。
「…分からないならいい。あまり部屋を空けているとカリーノに質問責めにされるぞ」
「カリーノ殿下は長旅で疲れてもう寝てるはず。それより今はヴィルのフェロモンを何とかしなきゃ。このままだと明日のパーティーでリドールの王子だけじゃなくて他のアルファにまで目をつけられかねない」
「はいはい。1~2発抜けば匂いも収まるだろうから、自分で処理しておくからアーシュはもう部屋に戻れ」
アーシュは他のアルファを危惧している様な事をいっている。だが、ここ2ヶ月の間、僕を抱かなかったのは他でもないアーシュだ。だから今日も期待するだけ無駄だと思い、あしらう様にアーシュに言う。するとアーシュは何故か納得した表情になった。
「あぁ、そういうことか。…俺が原因だから、きちんと責任とるね」
「あっ!ちょっと、アーシュ!降ろせ!」
いつぞやと同じ様に、僕はアーシュの肩に担がれる。アーシュは僕の制止など聞こえていない様子で主賓室から寝室までズカズカ進む。そしてベッドの上に僕を下ろし、その上に覆い被さる様にのしかかられる。
「ヴィル、欲求不満だったんだ。気付かなくてごめんね」
「うるさ、っん…」
アーシュの親指が僕の唇を撫でた後、口の端から指を差し込まれ、うるさいと言えずじまいになる。アーシュの指は僕の舌を弄び口腔内をかき乱す。
「んっ、ふあっ…んっ」
「可愛い…感じてる顔もっと見せて」
アーシュは僕のローブの前合わせから手を差し込むと胸の突起を摘む。声が高く上がりそうになったが、アーシュが指で舌を抑えつけたので喉の奥が小さくなっただけだった。
「んっ…ん"、ふっ」
「胸いじられるの好きだよね」
アーシュに胸をいじられると、くぐもった声が漏れ出る。しかし上手く喘ぐことができないために息を大きく吸うタイミングがなく呼吸がどんどん苦しくなってくる。目には涙が溜まり、閉じることのできない口からはだらしなく唾液が垂れる。我慢できなくて、アーシュの手首を掴み口から手を離す。
「はあっ…はぁっ、くるしいっ…」
「ごめんね。でもヴィルは声を我慢できないでしょ?レトア卿に聞かせたくないからさ」
「やだっ…むぐっ…ん"ん」
アーシュはそう言うと僕の口を掌で覆う。アーシュの手をはがそうと手首を掴むがびくともしない。胸を弄っていたアーシュの手が僕の体のラインをなぞりながら下に降りていく。そのまま下着をずらされれば、ゆるく立ち上がっていたものがアーシュの眼前にあらわにされる。
「もうビチョビチョになってる」
「んっ…んぅっ…うっ」
熱くいきりたったものを掌で包み込む様に握り上下に摩られ久々の刺激に腰が跳ねる。
「ビクビクしてる。ヴィルもうイキそう?俺ももう限界だから、二人で気持ちよくなろうね」
アーシュがカチャリとベルトを外す音が聞こえた後、曲げていた僕の膝を割開いた。そして、いきり立つ僕の屹立にドクリと脈打つアーシュのそれが触れる。アーシュはそのまま互いのものをこすり合わせる様に腰を密着させ動かす。
「ん"…うぅっ…んうっ…んっ」
「ヴィル、気持ちいい?俺もすごく気持ちいい」
先走りで濡れているものが合わさりグチュグチュと卑猥な音をたてる。お互いに快感を得れば得るほど、先走りが溢れより滑らかに擦れ合う。アーシュのものが熱く脈打つ感覚を前で感じながらも、後孔が物欲し気にひくつくのが自分でも分かる。
「んっ…ぅんっ…んぐ」
互いの屹立が膨張し体積が増していく。でもまだイキたくない。体の奥までアーシュの熱で満たして欲しくて、腹の内側が切なく疼く。声を出せないかわりに、せめてもの意思表示で僕の口を塞ぐアーシュの腕に爪をたてひっかく。
「ん?ヴィル、もうイキたい?いいよ」
「んっ…うぅっ…うぐ」
それではアーシュには上手く伝わらなかった。アーシュがピストン運動の速度を早めると、体の熱が屹立に集まり爆ぜる瞬間を今か今かと待ち望む。でも熱に浮かされた頭の片隅にはアーシュに抱かれたいという思いがあり、体が昂っていくほどに、その思いも切なく膨れ上がる。
ねぇ、アーシュ。抱いて!抱いてよ!
僕の体の一番深いところまでアーシュの熱を刻みつけて、僕はアーシュのものなんだって思わせてよ。ねぇ、お願い。
「んっ…んくっ…んっ」
「くっ…」
僕の体はアーシュの与える刺激で高みに達し熱を爆ぜる。それと同時にアーシュも僕の腹の上に熱を吐き出す。
「ヴィル…」
「んっ…ふあっ…んっ」
アーシュからの深いキスを受け入れれば体の奥にまた熱が灯る。
熱くなっていく体とは対照的に僕の心は軋み冷たくなっていくのを感じていた。
「ヴィル、自分からフェロモンのいい匂いが出てる自覚ある?」
「自分のフェロモンの匂いなんて分かる訳ないだろ」
「エステートを出発するときはこんなに匂いしなかったのに。馬車の中でレトア卿に何かされた?」
僕の返事を聞いたアーシュが顔を上げ僕を問い詰める。レトア卿からはアーシュに捨てられたのだと嫌味を言われただけ。フェロモンの原因で思いあたる節は欲求不満になってることくらいだ。だから、僕がこうなっているのは全てアーシュのせいなのに。
「レトア卿は嫌味は言うが手は出さないタイプだろ。僕がこうなった事を人のせいにしているみたいだが、むしろアーシュのせいだって分かっているか?」
「俺のせい…?」
少し嫌味っぽく言ったのに、アーシュはキョトンとしている。まさかそんな反応になるなんて予想外だ。
「…分からないならいい。あまり部屋を空けているとカリーノに質問責めにされるぞ」
「カリーノ殿下は長旅で疲れてもう寝てるはず。それより今はヴィルのフェロモンを何とかしなきゃ。このままだと明日のパーティーでリドールの王子だけじゃなくて他のアルファにまで目をつけられかねない」
「はいはい。1~2発抜けば匂いも収まるだろうから、自分で処理しておくからアーシュはもう部屋に戻れ」
アーシュは他のアルファを危惧している様な事をいっている。だが、ここ2ヶ月の間、僕を抱かなかったのは他でもないアーシュだ。だから今日も期待するだけ無駄だと思い、あしらう様にアーシュに言う。するとアーシュは何故か納得した表情になった。
「あぁ、そういうことか。…俺が原因だから、きちんと責任とるね」
「あっ!ちょっと、アーシュ!降ろせ!」
いつぞやと同じ様に、僕はアーシュの肩に担がれる。アーシュは僕の制止など聞こえていない様子で主賓室から寝室までズカズカ進む。そしてベッドの上に僕を下ろし、その上に覆い被さる様にのしかかられる。
「ヴィル、欲求不満だったんだ。気付かなくてごめんね」
「うるさ、っん…」
アーシュの親指が僕の唇を撫でた後、口の端から指を差し込まれ、うるさいと言えずじまいになる。アーシュの指は僕の舌を弄び口腔内をかき乱す。
「んっ、ふあっ…んっ」
「可愛い…感じてる顔もっと見せて」
アーシュは僕のローブの前合わせから手を差し込むと胸の突起を摘む。声が高く上がりそうになったが、アーシュが指で舌を抑えつけたので喉の奥が小さくなっただけだった。
「んっ…ん"、ふっ」
「胸いじられるの好きだよね」
アーシュに胸をいじられると、くぐもった声が漏れ出る。しかし上手く喘ぐことができないために息を大きく吸うタイミングがなく呼吸がどんどん苦しくなってくる。目には涙が溜まり、閉じることのできない口からはだらしなく唾液が垂れる。我慢できなくて、アーシュの手首を掴み口から手を離す。
「はあっ…はぁっ、くるしいっ…」
「ごめんね。でもヴィルは声を我慢できないでしょ?レトア卿に聞かせたくないからさ」
「やだっ…むぐっ…ん"ん」
アーシュはそう言うと僕の口を掌で覆う。アーシュの手をはがそうと手首を掴むがびくともしない。胸を弄っていたアーシュの手が僕の体のラインをなぞりながら下に降りていく。そのまま下着をずらされれば、ゆるく立ち上がっていたものがアーシュの眼前にあらわにされる。
「もうビチョビチョになってる」
「んっ…んぅっ…うっ」
熱くいきりたったものを掌で包み込む様に握り上下に摩られ久々の刺激に腰が跳ねる。
「ビクビクしてる。ヴィルもうイキそう?俺ももう限界だから、二人で気持ちよくなろうね」
アーシュがカチャリとベルトを外す音が聞こえた後、曲げていた僕の膝を割開いた。そして、いきり立つ僕の屹立にドクリと脈打つアーシュのそれが触れる。アーシュはそのまま互いのものをこすり合わせる様に腰を密着させ動かす。
「ん"…うぅっ…んうっ…んっ」
「ヴィル、気持ちいい?俺もすごく気持ちいい」
先走りで濡れているものが合わさりグチュグチュと卑猥な音をたてる。お互いに快感を得れば得るほど、先走りが溢れより滑らかに擦れ合う。アーシュのものが熱く脈打つ感覚を前で感じながらも、後孔が物欲し気にひくつくのが自分でも分かる。
「んっ…ぅんっ…んぐ」
互いの屹立が膨張し体積が増していく。でもまだイキたくない。体の奥までアーシュの熱で満たして欲しくて、腹の内側が切なく疼く。声を出せないかわりに、せめてもの意思表示で僕の口を塞ぐアーシュの腕に爪をたてひっかく。
「ん?ヴィル、もうイキたい?いいよ」
「んっ…うぅっ…うぐ」
それではアーシュには上手く伝わらなかった。アーシュがピストン運動の速度を早めると、体の熱が屹立に集まり爆ぜる瞬間を今か今かと待ち望む。でも熱に浮かされた頭の片隅にはアーシュに抱かれたいという思いがあり、体が昂っていくほどに、その思いも切なく膨れ上がる。
ねぇ、アーシュ。抱いて!抱いてよ!
僕の体の一番深いところまでアーシュの熱を刻みつけて、僕はアーシュのものなんだって思わせてよ。ねぇ、お願い。
「んっ…んくっ…んっ」
「くっ…」
僕の体はアーシュの与える刺激で高みに達し熱を爆ぜる。それと同時にアーシュも僕の腹の上に熱を吐き出す。
「ヴィル…」
「んっ…ふあっ…んっ」
アーシュからの深いキスを受け入れれば体の奥にまた熱が灯る。
熱くなっていく体とは対照的に僕の心は軋み冷たくなっていくのを感じていた。
15
あなたにおすすめの小説
夫には好きな相手がいるようです。愛されない僕は針と糸で未来を縫い直します。
伊織
BL
裕福な呉服屋の三男・桐生千尋(きりゅう ちひろ)は、行商人の家の次男・相馬誠一(そうま せいいち)と結婚した。
子どもの頃に憧れていた相手との結婚だったけれど、誠一はほとんど笑わず、冷たい態度ばかり。
ある日、千尋は誠一宛てに届いた女性からの恋文を見つけてしまう。
――自分はただ、家からの援助目当てで選ばれただけなのか?
失望と涙の中で、千尋は気づく。
「誠一に頼らず、自分の力で生きてみたい」
針と糸を手に、幼い頃から得意だった裁縫を活かして、少しずつ自分の居場所を築き始める。
やがて町の人々に必要とされ、笑顔を取り戻していく千尋。
そんな千尋を見て、誠一の心もまた揺れ始めて――。
涙から始まる、すれ違い夫婦の再生と恋の物語。
※本作は明治時代初期~中期をイメージしていますが、BL作品としての物語性を重視し、史実とは異なる設定や表現があります。
※誤字脱字などお気づきの点があるかもしれませんが、温かい目で読んでいただければ嬉しいです。
婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後
結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。
※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。
全5話完結。予約更新します。
愛に変わるのに劇的なキッカケは必要ない
かんだ
BL
オメガバ/α×Ω/見知らぬαの勘違いにより、不安定だった性が完全なΩになってしまった受け。αの攻めから責任を取ると言われたので金銭や仕事、生活等、面倒を見てもらうことになるが、それでもΩになりたくなかった受けは絶望しかない。
攻めを恨むことしか出来ない受けと、段々と受けが気になってしまい振り回される攻めの話。
ハピエン。
縁結びオメガと不遇のアルファ
くま
BL
お見合い相手に必ず運命の相手が現れ破談になる柊弥生、いつしか縁結びオメガと揶揄されるようになり、山のようなお見合いを押しつけられる弥生、そんな折、中学の同級生で今は有名会社のエリート、藤宮暁アルファが泣きついてきた。何でも、この度結婚することになったオメガ女性の元婚約者の女になって欲しいと。無神経な事を言ってきた暁を一昨日来やがれと追い返すも、なんと、次のお見合い相手はそのアルファ男性だった。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学で逃げ出して後悔したのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
死に戻りオメガはもう旦那様の言うことを聞きたくありません!
進木えい
BL
オリジナル小説を書いているのですが長くてモチベーションの維持が難しく、作成途中のものを公開して更新しようと考えています。もしご興味がありましたらう応援してくださると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる