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プロローグ
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人々の怒号や馬の蹄の音、鎧や剣が交わる金属音の喧騒のなか、愛しい人の声だけははっきりと聞こえた。
「イルダ、目を閉じるな!今すぐ治療してやるから、気をしっかり持て!」
彼は普段からは考えられないような焦った声音で私を呼び、苦しそうな表情を私に向ける。彼が何故、そんな顔をしているのかすら分からなかった。そして体中に広がる痛みの訳も分からないまま、私の体はどんどん冷え、耳鳴りはどんどん大きくなり、視界も狭まっていく。
-あぁ、これはもうダメだ
状況が何も分からない中で、それだけははっきりと理解できた。
「イルダ!もう少しだ!目を閉じるな、頑張れ」
「…へ…か」
私を抱き止める、愛しい人に最期の言葉を伝えたいのに、声は掠れ言葉にならない。
私が身じろぐと、彼のシャツを私の血が汚していく。
「体に障るから、無理して話すな」
「あ、あ…い」
彼の瞳にうっすら涙が溜まる。それを拭ってあげたいのに、体は鉛のように重く、自分の意思で動くことができない。それなら、せめて彼の目を見て伝えたいと思った。
-陛下、愛してます。あなたの腕の中で死ねるなら、私は本望です。だから、私のために泣かないで。私にあなたの涙は勿体無いです。
伝えたかった言葉は声に出ることはなかった。
私が貴方に心を奪われるなんて許されないことだった。だって貴方を葬り去ることが、私の使命だったから。
「イルダ、目を閉じるな!今すぐ治療してやるから、気をしっかり持て!」
彼は普段からは考えられないような焦った声音で私を呼び、苦しそうな表情を私に向ける。彼が何故、そんな顔をしているのかすら分からなかった。そして体中に広がる痛みの訳も分からないまま、私の体はどんどん冷え、耳鳴りはどんどん大きくなり、視界も狭まっていく。
-あぁ、これはもうダメだ
状況が何も分からない中で、それだけははっきりと理解できた。
「イルダ!もう少しだ!目を閉じるな、頑張れ」
「…へ…か」
私を抱き止める、愛しい人に最期の言葉を伝えたいのに、声は掠れ言葉にならない。
私が身じろぐと、彼のシャツを私の血が汚していく。
「体に障るから、無理して話すな」
「あ、あ…い」
彼の瞳にうっすら涙が溜まる。それを拭ってあげたいのに、体は鉛のように重く、自分の意思で動くことができない。それなら、せめて彼の目を見て伝えたいと思った。
-陛下、愛してます。あなたの腕の中で死ねるなら、私は本望です。だから、私のために泣かないで。私にあなたの涙は勿体無いです。
伝えたかった言葉は声に出ることはなかった。
私が貴方に心を奪われるなんて許されないことだった。だって貴方を葬り去ることが、私の使命だったから。
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