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終章 そして
ハヤブサくん
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前にさ、本八幡の駅前のお茶屋さんで旨い煎茶を買ったよね。
玉が我が家に来たばかりの頃のこと。
確か玉の下着を買うんだか、洗濯洗剤を買うんだか、とにかく2人で出掛けたことがあった。
あの時に、店先で焙煎しているお茶の匂いに玉がふらふら引き寄せられて、結構高いお茶っ葉を買わされた覚えがある。
グラム3,000円って、普段の僕なら絶対買わない掛川産の最高級茶葉だった。
因みに僕はそれまで時々お茶を淹れることはあったけれども、お茶っ葉から湯呑みから急須から全部100円ショップで調達したもの。
でも、淹れ終わった茶殻を捨てる手間や、急須の中を洗う手間が面倒くさくて、大体飲み切る前にお茶っ葉にカビを生やしていた。
コーヒーメーカーや手挽きミルを買って、豆からコーヒーを淹れることも時々あったけど、同じ理由で一人暮らしの時は押入の肥やしにしてた。
ついでに言うと、カビの生えたお茶っ葉や、湯呑みや急須はいつの間にかなくなっていた。
あれは不思議。
郷(熊本)にいた頃は妹が捨ててくれていたんだろうけど、板橋の独身寮でも同じことが起こってた。
お付き合いしていた彼女さんはいたけど、各独身寮は異性侵入禁止だったし、僕も規則を破って呼び込む様なこと、してないしなぁ。
お茶やコーヒーをきちんと淹れて飲む様になったのは、玉さんがきちんと捨てて洗ってくれるからだ。
とにかく、あのお茶っ葉を浅葱の力で引き出そう。
あのお茶は美味しかった。
我が家で食休みにほえほえする様になったきっかけのお茶だったりする。
今は、浅葱屋敷の仏壇から何故か無尽蔵に八女茶が出て来るから、「ただ」と言う言葉が大好きな玉が、我が家でしずさん家で消費しているから、別のお茶を飲むこともなくなったんだけどね。
さて、ティファ◯ルにお湯は?
おお、半分くらい残っているな。
手探りで沸かし直すの面倒だし、これで淹れようっと。
先ずは湯呑みに白湯を注いで少し器を温めて。
次に急須に75度のお湯を注ぐ。
煎茶ならこのくらいの温度が1番。
お茶っ葉が開くまで1~2分待機。
この時間が何故か楽しい。
玉に、玉露(文字面だけ見たら微妙に交通事故駄洒落)や玄米茶を飲ませた時に、美味しい温度を調べたら、浅葱の力で「僕が飲むお茶に関しては」温度が自由に調整出来るようになってた。
ただし、これ。
例えばカップ麺やインスタント食品には何故か適用されない。
他の料理で試したことはないけど、どうやら僕が、僕と僕が認めた家族(青木さんとしずさんが含まれる)が食べるご飯を作る時、それも手抜き料理ではなくお高い美味しい料理を作る時だけ適用されるみたいだ。
食欲が僕のトリガーになっているから正しい法則だとは言え、誰だ?こんな管理をしてる奴。
「ピューイ」
ハヤブサくんが僕の側で首を傾げている。
「ハヤブサくん。君にはお茶を飲むことは無理だなぁ。」
昔、セキセイインコを飼ってことあったっけ。
妹が欲しがったのと、当時はセキセイインコも十姉妹も安かったから、僕にも買えた。
1羽1,000円もしなかったもんなぁ。
今は数千円しやがるし、そもそも十姉妹って売ってないし。
それに今と違って小さなペットショップはたくさんあって、それこそスーパーの敷地内にあったりしたもんなぁ。
ウチで飼っていたインコは、人馴れしたし、とにかくよく喋る仔だった。
僕の名前も妹の名前も自分の名前も、使い分けていた。
あの仔はどうやって水を飲んでたっけ?
「ええと。フクロウくんにあげてる無塩ジャーキーなら大丈夫かな。」
フクロウくんは荼枳尼天の眷属になってからは何を食べても大丈夫になっているから、野生の隼にあげても平気かどうか、少し考えないと。
ウチのフクロウくんは、完全肉食な属性を無視して柿の実を齧っているし。
「て、あれ?」
手からハツカネズミが出てきた。
あ、そっか。
ネズミ退治にフクロウくんが来てくれたんだっけ。
あと玉も、時々お社や茶店で器用に捕まえてはフクロウくんにあげてるな。
「食べるかい?」
半殺し状態(一応生きてる)のハツカネズミを、尻尾を持ってぶらぶらしてみると、美味しそうに食べてくれた。
エリ◯ールの消毒ウェットティッシュで指先をグリグリ拭いている間に、急須からいい匂いがしてきたぞ。
こぽこぽこぽこぽ。
ごっくん。
「フヒィ。ほえほえ。」
「ピューイ。ぴよぴよ。」
「ほえほえじゃありません!」
ハヤブサくんと一緒に、玉に叱られました。
★ ★ ★
「どうするんですか?健磐龍命さんを!」
「ほえほえ。」
「とぉのぉ?」
わぁ、玉の目が座ってきた。
「くにゃ」
あ、玉の癇癪に御狐様が怯えて両目を前脚で隠してる。
可愛い。
「いや、確かに此奴は可愛いが、そろそろ現実逃避を止めた方が良さそうじゃぞ。」
「あなたはなんで僕が淹れたお茶を勝手に飲んでんですか?」
「巫女っ子の茶は確かに旨いが、浅葱にゃ負けるからの。これからも時々飲ませい。」
「それは構いませんけどね…。」
「だぁきぃにぃてぇんんさぁまぁ?」
「くにゃにゃにゃぁ。」
やれやれ。
荼枳尼天の言う通り、そろそろ向き合うか。
玉が憤怒の顔をしても荼枳尼天は平気の平左だけど
「暴悪大笑面じゃな。まさしく。」
「玉を十一面観音にしないでください。」
この状況で空気を読まないツッコミを入れさせないでください。
あ、健磐龍命さんとやらがまた土下座してる。
「因みに玉さんや。」
「プンプン。なんですか?プンプン。」
玉の時代にも怒っているオノマトペはプンプンだったのだろうか?
「なんで玉が怒ってるのかね。」
「だって健磐龍命さんが可哀想です。」
「…噴火云々はどうでもいいんだ。」
「噴火ってなんですか?」
玉はそもそも噴火を知らないみたいだ。
こんな時にググる先生が使えると楽だね。
ええと、噴火・11~12世紀で調べると。
1108年浅間山噴火ってあるな。
それくらいか。
玉が生きていた平安末期から鎌倉初期に市川から見えた噴火は無さそうだな。
富士山と浅間山のどっちかが大噴火すれば、しずさん家にも影響あるかと思ったけど。
「玉、噴火と言うのはこれだ。」
あぁ、スマホって便利だなぁ。
調べ物も直ぐに出来るし、映像も見れるからいちいち説明の仕方に頭を悩ませる必要もない。
噴火の映像を見せれば良いんだもの。
「…山から煙や火が立ち上ってます。」
「こっちはインドネシアって国だな。あとこれは桜島。直ぐ隣の山だよ。」
「あの、山が壊れたりしないんですか?」
「壊れるよ。」
次に僕が検査したのは磐梯山。
まだほんの130年ちょい前に100尋以上の山が吹き飛んだ、科学的研究が始まって以降滅多にない爆発型噴火として「磐梯型」と名のついた名山だ。
「ほら、山が半分無くなっちゃった。」
「…あの、今いるお山もこうなるんですか?」
「こうなった跡だよ、ここ。大昔は世界で1番高い山だったけど、大噴火して壊れちゃった跡だよ。」
「…また噴火したらどうなっちゃうんですか?」
「筑紫洲が全部吹き飛ぶってさ。」
「………。」
あ、玉が固まった。(交通事故駄洒落)
「ピューイ?」
「大丈夫だよ。…君も手伝ってくれるのかい?」
「ピュ♪」
「そうですか。」
さて、どうしよう。
玉が我が家に来たばかりの頃のこと。
確か玉の下着を買うんだか、洗濯洗剤を買うんだか、とにかく2人で出掛けたことがあった。
あの時に、店先で焙煎しているお茶の匂いに玉がふらふら引き寄せられて、結構高いお茶っ葉を買わされた覚えがある。
グラム3,000円って、普段の僕なら絶対買わない掛川産の最高級茶葉だった。
因みに僕はそれまで時々お茶を淹れることはあったけれども、お茶っ葉から湯呑みから急須から全部100円ショップで調達したもの。
でも、淹れ終わった茶殻を捨てる手間や、急須の中を洗う手間が面倒くさくて、大体飲み切る前にお茶っ葉にカビを生やしていた。
コーヒーメーカーや手挽きミルを買って、豆からコーヒーを淹れることも時々あったけど、同じ理由で一人暮らしの時は押入の肥やしにしてた。
ついでに言うと、カビの生えたお茶っ葉や、湯呑みや急須はいつの間にかなくなっていた。
あれは不思議。
郷(熊本)にいた頃は妹が捨ててくれていたんだろうけど、板橋の独身寮でも同じことが起こってた。
お付き合いしていた彼女さんはいたけど、各独身寮は異性侵入禁止だったし、僕も規則を破って呼び込む様なこと、してないしなぁ。
お茶やコーヒーをきちんと淹れて飲む様になったのは、玉さんがきちんと捨てて洗ってくれるからだ。
とにかく、あのお茶っ葉を浅葱の力で引き出そう。
あのお茶は美味しかった。
我が家で食休みにほえほえする様になったきっかけのお茶だったりする。
今は、浅葱屋敷の仏壇から何故か無尽蔵に八女茶が出て来るから、「ただ」と言う言葉が大好きな玉が、我が家でしずさん家で消費しているから、別のお茶を飲むこともなくなったんだけどね。
さて、ティファ◯ルにお湯は?
おお、半分くらい残っているな。
手探りで沸かし直すの面倒だし、これで淹れようっと。
先ずは湯呑みに白湯を注いで少し器を温めて。
次に急須に75度のお湯を注ぐ。
煎茶ならこのくらいの温度が1番。
お茶っ葉が開くまで1~2分待機。
この時間が何故か楽しい。
玉に、玉露(文字面だけ見たら微妙に交通事故駄洒落)や玄米茶を飲ませた時に、美味しい温度を調べたら、浅葱の力で「僕が飲むお茶に関しては」温度が自由に調整出来るようになってた。
ただし、これ。
例えばカップ麺やインスタント食品には何故か適用されない。
他の料理で試したことはないけど、どうやら僕が、僕と僕が認めた家族(青木さんとしずさんが含まれる)が食べるご飯を作る時、それも手抜き料理ではなくお高い美味しい料理を作る時だけ適用されるみたいだ。
食欲が僕のトリガーになっているから正しい法則だとは言え、誰だ?こんな管理をしてる奴。
「ピューイ」
ハヤブサくんが僕の側で首を傾げている。
「ハヤブサくん。君にはお茶を飲むことは無理だなぁ。」
昔、セキセイインコを飼ってことあったっけ。
妹が欲しがったのと、当時はセキセイインコも十姉妹も安かったから、僕にも買えた。
1羽1,000円もしなかったもんなぁ。
今は数千円しやがるし、そもそも十姉妹って売ってないし。
それに今と違って小さなペットショップはたくさんあって、それこそスーパーの敷地内にあったりしたもんなぁ。
ウチで飼っていたインコは、人馴れしたし、とにかくよく喋る仔だった。
僕の名前も妹の名前も自分の名前も、使い分けていた。
あの仔はどうやって水を飲んでたっけ?
「ええと。フクロウくんにあげてる無塩ジャーキーなら大丈夫かな。」
フクロウくんは荼枳尼天の眷属になってからは何を食べても大丈夫になっているから、野生の隼にあげても平気かどうか、少し考えないと。
ウチのフクロウくんは、完全肉食な属性を無視して柿の実を齧っているし。
「て、あれ?」
手からハツカネズミが出てきた。
あ、そっか。
ネズミ退治にフクロウくんが来てくれたんだっけ。
あと玉も、時々お社や茶店で器用に捕まえてはフクロウくんにあげてるな。
「食べるかい?」
半殺し状態(一応生きてる)のハツカネズミを、尻尾を持ってぶらぶらしてみると、美味しそうに食べてくれた。
エリ◯ールの消毒ウェットティッシュで指先をグリグリ拭いている間に、急須からいい匂いがしてきたぞ。
こぽこぽこぽこぽ。
ごっくん。
「フヒィ。ほえほえ。」
「ピューイ。ぴよぴよ。」
「ほえほえじゃありません!」
ハヤブサくんと一緒に、玉に叱られました。
★ ★ ★
「どうするんですか?健磐龍命さんを!」
「ほえほえ。」
「とぉのぉ?」
わぁ、玉の目が座ってきた。
「くにゃ」
あ、玉の癇癪に御狐様が怯えて両目を前脚で隠してる。
可愛い。
「いや、確かに此奴は可愛いが、そろそろ現実逃避を止めた方が良さそうじゃぞ。」
「あなたはなんで僕が淹れたお茶を勝手に飲んでんですか?」
「巫女っ子の茶は確かに旨いが、浅葱にゃ負けるからの。これからも時々飲ませい。」
「それは構いませんけどね…。」
「だぁきぃにぃてぇんんさぁまぁ?」
「くにゃにゃにゃぁ。」
やれやれ。
荼枳尼天の言う通り、そろそろ向き合うか。
玉が憤怒の顔をしても荼枳尼天は平気の平左だけど
「暴悪大笑面じゃな。まさしく。」
「玉を十一面観音にしないでください。」
この状況で空気を読まないツッコミを入れさせないでください。
あ、健磐龍命さんとやらがまた土下座してる。
「因みに玉さんや。」
「プンプン。なんですか?プンプン。」
玉の時代にも怒っているオノマトペはプンプンだったのだろうか?
「なんで玉が怒ってるのかね。」
「だって健磐龍命さんが可哀想です。」
「…噴火云々はどうでもいいんだ。」
「噴火ってなんですか?」
玉はそもそも噴火を知らないみたいだ。
こんな時にググる先生が使えると楽だね。
ええと、噴火・11~12世紀で調べると。
1108年浅間山噴火ってあるな。
それくらいか。
玉が生きていた平安末期から鎌倉初期に市川から見えた噴火は無さそうだな。
富士山と浅間山のどっちかが大噴火すれば、しずさん家にも影響あるかと思ったけど。
「玉、噴火と言うのはこれだ。」
あぁ、スマホって便利だなぁ。
調べ物も直ぐに出来るし、映像も見れるからいちいち説明の仕方に頭を悩ませる必要もない。
噴火の映像を見せれば良いんだもの。
「…山から煙や火が立ち上ってます。」
「こっちはインドネシアって国だな。あとこれは桜島。直ぐ隣の山だよ。」
「あの、山が壊れたりしないんですか?」
「壊れるよ。」
次に僕が検査したのは磐梯山。
まだほんの130年ちょい前に100尋以上の山が吹き飛んだ、科学的研究が始まって以降滅多にない爆発型噴火として「磐梯型」と名のついた名山だ。
「ほら、山が半分無くなっちゃった。」
「…あの、今いるお山もこうなるんですか?」
「こうなった跡だよ、ここ。大昔は世界で1番高い山だったけど、大噴火して壊れちゃった跡だよ。」
「…また噴火したらどうなっちゃうんですか?」
「筑紫洲が全部吹き飛ぶってさ。」
「………。」
あ、玉が固まった。(交通事故駄洒落)
「ピューイ?」
「大丈夫だよ。…君も手伝ってくれるのかい?」
「ピュ♪」
「そうですか。」
さて、どうしよう。
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